経営者としてどのように生命保険を活用すべきか悩む人は多い。今回は、加入目的別に経営者が入るべき生命保険を紹介する。生命保険の種類や節税対策になる理由、ライフステージごとの保険の選び方・見直し方も解説していく。この記事を読み終わる頃には、生命保険の知識がひととおり身についているだろう。

木崎 涼
木崎 涼(きざき・りょう)
FP・簿記・M&Aシニアエキスパート。大手税理士法人で多数の資産家の財務コンサルティングを経験。多数の資格を持ちながら、執筆業を中心に幅広く活動している。

目次

  1. 経営者は生命保険に入る時、個人加入・法人加入を使い分けるべき
  2. 生命保険の種類と特徴
    1. 死亡保険の特徴
    2. 医療保険の解説
    3. がん保険の特徴
  3. 加入目的別に紹介!経営者の生命保険活用法
    1. 死亡時の保障が目的の経営者に適した生命保険
    2. 働けなくなった時の保障が目的の経営者に適した生命保険
    3. 従業員の福利厚生が目的の経営者に適した生命保険
    4. 資産運用が目的の経営者に適した生命保険
  4. 生命保険が節税になる理由
    1. 生命保険料控除で所得税を節税
    2. 保険料の損金算入で法人税を節税
  5. 経営者のライフステージに応じた生命保険の選び方
    1. 起業したばかりの20代独身の経営者Aさんのケース
    2. 事業が軌道に乗り始めた30代妻子持ちの経営者Bさんのケース
    3. 事業が順調な40代妻子持ちの経営者Cさんのケース
  6. 生命保険に加入したら定期的な見直しが大切

経営者は生命保険に入る時、個人加入・法人加入を使い分けるべき

経営者が入っておくべき生命保険とは?加入目的別に最適な保険を徹底解説
(画像=ktktmik/stock.adobe.com)

一般の人は、個人加入のことしか考えなくていい。しかし、法人を経営する立場なら、目的に応じて個人加入と法人加入を使い分ける必要がある。

個人加入とは、契約者が個人で、生命保険料も個人のポケットマネーから支払うパターンだ。保険金は、個人の通帳に入金される。生命保険料控除を適用すれば、所得税を節税できる。しかし、生命保険料控除には上限があり、保険料が増えても控除額は変わらない場合が多い。

法人加入とは、契約者が法人で、生命保険料も法人が支払うパターンだ。保険金は、法人の通帳に入金される。保険の種類によって、保険料のうちどのぐらいを損金に算入できるかが定められている。保険料を損金にして法人税を節税できる一方で、損金算入には細かなルールが決められている。

節税効果については後の章で詳しく解説するが、個人加入・法人加入の2つがあり、使い分ける必要があることを押さえておこう。

※損金とは、税金の計算上の「経費」を指す言葉だ。経費が会計用語であるのに対し、損金は税務用語にあたる。しかし、ここでは同じ意味として読み進めてもらって問題ない。

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生命保険の種類と特徴

続いては、生命保険の種類と特徴を簡単に解説する。

死亡保険の特徴

死亡保険とは、死亡時に保険金を受け取れるタイプの保険だ。しかし、満期になった場合に満期金を受け取れるもの、長期間に渡って保険契約を続ければ割のいい解約金を受け取れるものなど、さまざまな種類がある。そのため、万一の場合に備えるだけでなく、貯蓄目的で加入する人も少なくない。

死亡保険には、定期保険・終身保険・養老保険の主に3つがある。定期保険は保障期間が決まっている保険、終身保険は一生涯保障が続く保険、養老保険は保険金と満期金が組み合わさった保険だ。選び方については、次の章で解説する。

医療保険の解説

医療保険とは、病気になった時に保険金を受け取れるタイプの保険だ。入院した際に「日額2万円」といった形で保障がおりるケースが一般的だ。

がんなど治療期間が長くなる疾病だと診断された際に、「診断一時金」を受け取れるケースもある。また、先進医療にかかる治療費を保障してくれる先進医療特約をつけるのも人気だ。

がん保険の特徴

がん保険とは、医療保険とは違い、がんに特化した保険のことだ。医療保険と同様に、入院給付金が受け取れるほか、診断一時金や先進医療もカバーしている保険が多い。

がんは他の疾病と比べて、治療期間が長期に渡り、治療費が高額になるケースが多々ある。そのため、医療保険とがん保険を組み合わせて加入しておくと安心だ。また、医療保険に加入する資金的余裕がない人も、がん保険にだけは加入しておくようにしたい。

加入目的別に紹介!経営者の生命保険活用法

ここまでで紹介した死亡保険・医療保険・がん保険は、すべて個人でも法人でも加入できる。続いて、加入目的に応じた最適な生命保険と、個人加入・法人加入のどちらがいいかを解説していく。

死亡時の保障が目的の経営者に適した生命保険

死亡時の保障としては、主に定期保険が活用されている。

定期保険は、保険料が安いことから、保険料の負担を抑えて保障を充実させたい場合に適している。開業当初など、資金繰りに余裕がない時は、掛け捨ての定期保険を検討しよう。

法人で加入すれば、掛け捨ての定期保険なら、全額を損金にできる。長期平準定期保険や逓増定期保険など、貯蓄機能がある保険については、解約返戻金の返戻率に応じて損金算入することになる。定期保険に加入するなら、法人で加入することを第一に考えたい。

働けなくなった時の保障が目的の経営者に適した生命保険

死亡時だけでなく、自分が働けなくなった場合についても考えておかなければならない。

働けなくなった場合については、休業補償などの損害保険で備える方法もある。保険料を安く抑えて保障を充実させたいなら、損害保険を優先的に検討しよう。

一方、保障を重視するなら、生命保険で働けなくなった場合に備えることもできる。代表的なのは、医療保険とがん保険だ。医療保険もがん保険も、個人加入だけでなく法人加入ができる。

保険料が年間30万円以下であれば、全額損金算入が認められており、節税効果も大きい。ただし、保険金が入金されるのはあくまで法人なので、その点には注意しておきたい。

病気になった際に個人で自由に使える保険金を受け取りたいなら、法人加入に加えて個人でも加入しておくと安心だ。

従業員の福利厚生が目的の経営者に適した生命保険

最近では、養老保険を従業員の福利厚生として活用する方法が注目されている。

養老保険とは、生死の両方に備える保険だ。万一の場合には遺族が保険金を受け取ることができ、生存したまま保険期間を満了すれば、満期金を受け取れる。

たとえば、被保険者を従業員、契約者(保険料の負担者)を法人、死亡保険金の受取人を従業員の家族、満期保険金の受取人を法人にする。すると、従業員に万一のことがあった場合は、家族が死亡保険金を受け取れる。何事もなかった時は、法人が満期保険金を受け取り、それを退職金の支払い原資にできる。

従業員の福利厚生を目的として法人が養老保険に加入する場合、保険料の半額を損金算入することが認められている。福利厚生と節税の両方を叶える手法として、積極的に検討したい。

ただし、福利厚生を目的とする以上、従業員全員を対象にしなければならないため、注意が必要だ。

資産運用が目的の経営者に適した生命保険

積立目的で生命保険を活用するなら、終身保険を選ぶといいだろう。

終身保険は、保険料が割高な分、高い貯蓄機能を持つ保険だ。保障は一生涯続くため、老後になって資金が必要になれば解約して解約返戻金を受け取ればいいし、そのまま契約を継続すれば、万一の場合には遺族が保険金を受け取れる。

終身保険は貯蓄機能が高いことから、法人で加入しても損金算入することはできず、全額資産計上しなければならない。となると、保険金を法人で受け取る分だけ、手間が発生してしまうことになる。そのため、終身保険に加入するなら、個人加入が適している。

運用成績に応じて受取額が変わる変額終身保険や、外貨建ての終身保険もあるので、目指す運用成果に応じて選択するといいだろう。

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生命保険が節税になる理由

続いては、生命保険の節税効果について解説する。

個人加入の場合は生命保険料控除で所得税を節税でき、法人加入の場合は保険料を損金算入して法人税を節税できると説明した。それぞれについて、詳しくみていこう。

生命保険料控除で所得税を節税

生命保険料控除とは、支払った保険料の一部を所得から差し引ける仕組みだ。2012年1月1日以後の契約だと、最大で12万円を控除できる。

生命保険料控除には、一般の生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3種類があり、それぞれ下記の計算式に当てはめて控除額を計算する。

年間の保険料      控除額
2万円以下      保険料の全額
2万円超4万円以下  保険料×1/2+1万円
4万円超8万円以下  保険料×1/4+2万円
8万円超       一律4万円

それぞれ最大4万円控除するとして、控除額の合計は12万円になるというわけだ。

なお、2012年1月1日前の旧契約では「保険料10万円超は一律5万円」と定められていたため、介護医療保険料控除の4万円を足すと、合計14万円になると考えるかもしれない。しかしこの場合も、上限の12万円は変わらないため、注意しよう。

保険料の損金算入で法人税を節税

続いて、法人税の節税についてだ。法人税の場合は単純で、保険料のうち損金算入できた分だけ、利益が目減りすることになり、法人税を節税できる。

たとえば、福利厚生目的で加入した養老保険の保険料100万円を支払った場合の経理処理は、下記の通りだ。

保険料(経費) 50万円     預金 100万円
保険積立金(資産) 50万円

この保険料を支払った決算期において、50万円分利益が圧縮され、節税となる。

ただし、保険金を受け取った場合も雑収入の扱いになるため、注意が必要だ。場合によっては、節税効果が吸収されてしまうこともありうる。退職金の支払いのタイミングを見計らうなど専門家と相談しながら、受取方法を検討するようにしたい。

経営者のライフステージに応じた生命保険の選び方

続いては、ライフステージごとに経営者がどのような生命保険を選ぶべきか、例をあげて解説する。

起業したばかりの20代独身の経営者Aさんのケース

  • 加入する保険 法人:がん保険、損害保険 個人:生命保険、個人年金保険、医療保険

  • 健康だががんへの不安があるため、法人でがん保険に加入。

  • 生命保険料控除を活用するため、個人でも生命保険・個人年金・医療保険に加入。保険料は控除を適用できる最低額に設定。
  • 働けない場合の保障については、生命保険ではなく損害保険の休業補償に加入。

事業が軌道に乗り始めた30代妻子持ちの経営者Bさんのケース

  • 加入する保険 法人:がん保険、生命保険、損害保険 個人:生命保険、個人年金保険、医療保険

  • まだ資金繰り上油断はできないので、法人で掛け捨ての定期保険に加入し、法人税を節税しつつ、万一の場合は家族が保険金を受け取れるようにする。

  • 法人でがん保険に加入。
  • 生命保険料控除を活用するため、個人でも生命保険・個人年金・医療保険に加入。資産運用効果を得るため、生命保険は外貨建ての終身保険を選択。
  • 働けない場合の保障について、損害保険の休業補償に加え、年間保険料30万円以下の医療保険にも加入。

事業が順調な40代妻子持ちの経営者Cさんのケース

  • 加入する保険 法人:がん保険、医療保険、養老保険 個人:生命保険、個人年金保険、医療保険

  • 従業員への退職金原資の確保、福利厚生目的で、法人で養老保険に加入。保険料の半額を損金計上して、法人税も節税。従業員はもちろん、Cさん本人や役員である家族も加入している。

  • 法人でがん保険、医療保険に加入。医療保険には家族も加入。
  • 個人でも生命保険・個人年金・医療保険に加入し、生命保険料控除を活用。外貨建て終身保険、変額終身保険など、貯蓄機能を持つ複数の生命保険を活用して資産運用している。

生命保険に加入したら定期的な見直しが大切

経営者が生命保険への加入を検討する時は、保障・節税効果・資金繰りについて検討することが大切だ。また、保険は一度加入してそれで終わりではない。ライフステージや事業状況に応じて、柔軟に見直しをかけていく必要がある。

経営者は、広い視野を持ってリスクに備えなければならない。リスクに備える方法として、保険は非常に効果的だ。上手に活用して、会社にとっても家族にとっても望ましい結果が得られるようにしておきたい。

文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー)