Peatix.comの共同創業者として知られる竹村詠美さん「ファウンダー(Founder、創設者)」に必要な素質についてインタビューをしている。ファウンダーの定義や苦労話を聞く中で、少しずつその実態が浮かび上がってきた。今回はファウンダーに必要な素質や、女性ファウンダー増加の影響を尋ねてみた。

竹村詠美さん
一般社団法人Future Edu代表理事、Peatix.com共同創設者。McKinseyを卒業後、Amazon、Disneyなどの日本経営メンバーとして、サービスの事業企画や立ち上げ、マーケティングなど幅広い業務に携わる。2011年に立ち上げた「Peatix.com」は現在27カ国、400万人以上のユーザーをもつ。現在はSTEAMや21世紀教育をテーマに執筆、講演、研修など幅広く活動中。Most Likely to Succeed日本アンバサダー、総務省情報通信審議会委員なども務める。

一人旅を楽しめるのがファウンダー

女性創業者#3
(写真=森口新太郎、ZUU online編集部)

——ファウンダー同士の交流もあると思いますが、竹村さんから見たファウンダーの特徴とはどのようなものでしょう。

身近なファウンダーだと、一人でいることが苦でない人が多いですね。一人旅が好きとか、競技人口が少ないスポーツをやっているとか。つまり、他人や他人の目を気にせずに行動を起こせる人。ファウンダーって孤独なことが多いので、それに耐えられる精神がないと続かないでしょう。

——一人旅、いいですね。竹村さんもよく行きますか?

最近は行けていないですが、時間のあるときには一人旅をしたいタイプです。目的地選びはそのときの気分というか、聞きたい音楽や触れたい文化で決めてしまいます。そこで楽しい経験ができると、また来ようとか、もっと奥深いところも見てみたいという探求心が芽生えて、次の旅に出かける。気が付いたらこれまでに、かれこれ35カ国以上を回っていました。

見たことのない景色を求める気持ちは、意外とビジネスにも通じていますよね。調子が良ければズンズン進めるし、新しい世界が見えたときの達成感は何事にも代え難い。時間を消費したり、お金を使ったりするというリスクもありますが、そうしなければ見られない景色が絶対ある。いつかは誰も到達したことのないような景色が見られるといいな、と思っています。

事業を立ち上げたいと考えているのなら、ぜひ一人旅も経験してみてください。

オリジナリティがあってこそファウンダー

——ファウンダーはスタートも大切ですが、どう完成していくかもテーマですよね。

確かに、どんなゴールを思い描いているかでその人のワークライフバランスは変わりますね。プライベートではないですけど、自分の生活とかエッセンスもそこで変化していくものだと思います。

日本には「守破離(しゅはり)」という素晴らしい言葉があります。芸術や武道でよく使われる言葉なんですが、これがまさにファウンダーとマッチするでしょう。

「守」は3段階あるうちの最初の段階で、受け継いだものや教えられたものをそのまま守ることを指します。「破」は2段階目で、打ち破ること。今あるものに工夫を加え、教えをあえて破ることで変化を期待します。そして最後の「離」で発展させて、自分だけのオリジナリティを作り上げる。

簡単にまとめると「先人からエッセンスをもらい、それを自分のスタイルにする」ということ。「守・破」までなら、実践できている人は多いです。ただ、そこから「離」に昇華するのが難しい。3段階目までいけて初めてファウンダーなんだと思います。

例えば伝統工芸産業。何百年何千年と受け継がれている芸や技がありますよね。どれにも共通することですが、ここまで受け継がれてきたなりの要素があるはずです。それを受け継ぐだけの力があることは素晴らしい。でも、この先も長く続けるためには、どこかでオリジナリティ=独自のスタイルを加えることが必要です。

それができれば、オーナー社長の二代目や三代目も安泰ですね。

――竹村さんが仲良くしているファウンダーにはどんな人がいますか?

南場智子さんは誰もが知る大企業DeNAの創始者で、大きく成功した人のうちの1人だと思います。一方で、JapanTaxiの川鍋一朗さんは創業家の三代目ですが、社内改革で成功した人です。

時代の変化とビジネスモデルについて解説した書籍『NEW POWER』(ジェレミー・ハイマンズ、ヘンリー・ティムズ著、神崎朗子訳、ダイヤモンド社)では、組織を「価値観」(ニューバリュー/オールドバリュー)と「ビジネスモデル」(ニューパワー/オールドパワー)で四象限に分けています。

その四象限で言うと、南場さんは独自の開拓で事業を大きくしていった、いわゆる「ニューパワー(新しい価値観)×ニューバリュー(新しいビジネスモデル)」の人。一方の川鍋さんは「ニューパワー(新しい価値観)×オールドバリュー(旧来のビジネスモデル)」の人と言えるのではないかと思います。どちらにしても並々ならぬ努力があってのものでしょう。

女性ファウンダーが増えれば、女性が働きやすい世の中に

女性創業者#3
(写真=森口新太郎)

――男性に比べて女性のほうが成功しやすい、しにくい、ということはありますか?

どうなんでしょう。環境によっては「やりやすい」「やりにくい」はあるかもしれませんね。例えば女性で成功している人って、良くも悪くも「女性受けが悪い」。自分自身と比べてしまうせいか、ちょっと敬遠されてしまうんですよね。「あそこまでにはなりたくない」みたいに思われているのかな?(笑)

一方で、成功している女性ファウンダーは男前な性格の人が多いです。サバサバしているというか、その辺の男性よりも仕事ができて決断力がある。だから男社会の中にもスッと入っていけるんですよ。あとは、なぜだか若い男の子が得意な傾向もあると思います。「取り巻き」みたいな感じで、仕事中、周囲にはいつも男の子がいるイメージです。

ただ、結局のところ、日本社会にはまだまだ男性中心な部分が根強いイメージがあります。どこに行っても「男性と仕事をする」という工程を省いて進むことはできません。結果論かもしれませんが、女性がサバサバしているのはそこが大きく影響している気がします。

――今後もし日本に女性ファウンダーが増えると、どんないいことがあるのでしょうか。

先ほどの「男性社会」の話もそうですが、有名なインフルエンサーやオピニオンリーダーって、やはり男性のほうが多いと思いませんか?イベントの登壇者や取材記事にある有識者も然りです。

その原因としては「ロールモデルが少ない」という部分が大きいと思います。国内に限っていえば、世の中を動かしているリーダー的存在は男性が圧倒的に多いという現実がありますから。

では今後女性ファウンダーが増えたら、どうなると思いますか?答えは簡単、「ロールモデルが増える」です。ロールモデルが増えれば、後に続く人も間違いなく増えます。そんな女性たちの姿を見て、違和感を覚えないようになれば安泰ですよね。

日本の課題は、女性への負担が大きすぎるということ。家事はもちろん、子育てにおいてもやるべきことが多すぎて、仕事に打ち込むいとまがない。

幸い、最近では日本でも労働環境が整ってきています。インターネットの普及、起業を支援する制度の充実、アウトソーシングの台頭などです。結婚や育児を経ても仕事に復帰しやすい世の中になりましたし、そもそも若いうちに起業するという手もあります。タイミング的には、今ほど起業するに適した時代はないと思いますよ。

取材、構成・くすいともこ(ZUU online編集部、DAILY ANDS編集長) 写真・森口新太郎

つづく