国内最大の金融商品取引所である東京証券取引所(以下、東証)では、日々休むことなく膨大な取引が進行している。国内を代表する巨大企業を筆頭に数多くの企業の株式が売買されているのが東証であり日本の株式市場の中心だ。東証には、一部上場以外にも複数の市場が存在する。今回は東証二部と、新興市場である「マザーズ」「ジャスダック(JASDAQ)」について解説していく。

目次

  1. 株式市場とは?
    1. 株式上場することによる会社のメリット
    2. 株式上場基準とは?
    3. 上場審査で判定される基準
  2. ジャスダックとは
  3. 東証マザーズとは?
  4. 東証二部とは?
  5. マザーズとジャスダックの違い
    1. ジャスダック市場
    2. マザーズ市場
  6. 新興株式市場投資のメリット
  7. 新興株式市場への投資リスク
  8. 新興株式市場で自社の可能性を広げるために

株式市場とは?

有価証券
(画像=moonrise/stock.adobe.com)

企業は現在の事業を維持するため、または事業拡大を目指すために株式を発行する。その株式を発行して売買する場を株式市場と呼ぶ。株式市場は、大きく分けると新規発行株により資金調達を行う発行市場と既発行株の売買が行われる流通市場の2つだ。どちらも日本国内では、その大部分が証券取引所で扱われている。

国内には2020年8月時点で「東京」「札幌」「名古屋」「福岡」の4つの取引所がある。しかし規模を比較すると2020年8月時点で実に日本国内の99.8%が東証で取引されているのだ。そのため株式市場と言えば東証と考えてもよいだろう。東証では、本則市場と新興市場の2つに大別される。本則市場は大手企業が名を連ねる「東証一部」「東証二部」の2つだ。

新興市場は「マザーズ」「ジャスダック」の2つで主に今後の発展が期待される新興企業が上場している。ただしジャスダックにはいわゆるベンチャー企業(スタートアップ)以外にある程度の実績を積んだ企業も多数上場しているのが特徴だ。

株式上場することによる会社のメリット

株式上場は「IPO(Initial Public Offering)」とも呼ばれ企業が広く一般に自社の株式を買ってもらうことで資金調達を可能にする制度である。企業が株式上場することの最大の目的は、可能な限り多くの資金を調達することだ。一方で株式上場には「企業価値を高める」というメリットもある。東証に上場するためには、さまざまな条件をクリアすることが必要だ。

条件をクリアして上場した企業は、他の企業に比べて社会的信用度が高まると言ってよいだろう。つまり企業は株式上場することによってある種のブランド価値を手に入れることになり信頼できる会社として社会的に認知されおのずと広告宣伝効果が生じることになる。他にも取引先との信頼関係が強まり金融機関に対する信用度が高まるなど企業を運営するうえでプラスになる条件が数多く導き出される。

長期的に見れば社員のモチベーションが向上し優秀な人材が集まることにより企業としての経営基盤増強にも貢献するだろう。

株式上場基準とは?

企業が株式上場を果たすためには、東証で定められた審査基準を満たさなければならない。これを株式上場基準と呼ぶが大きく分けて「形式要件」と「実質審査基準」との2つをクリアする必要がある。ここでは形式要件について詳述していく。ただしこれは当該企業が上場に値するかどうかを事前に判断するためのもので現時点での企業の運営状況を主に数値化したものである。

例えば東証一部上場企業の場合、上場時の株主数は2,200人以上で流通株式数は2万単位以上、時価総額にして250億円以上などが要件だ。東証二部の場合は、上場時の株主数が800人以上、流通株式数は4,000単位以上、時価総額にして20億円以上など要件はかなり緩和される。その他にも事業継続年数や直近2年間の利益総額など企業の運営状況についても詳細な規定がある。

これらすべての要件を満たしていないと上場審査に進むことはできない。ただし形式要件を現在満たしていなくても上場時までに達成できれば上場審査に進むことは可能である。形式要件は東証一部が最も厳しく次いで東証二部となっておりマザーズとジャスダックはそれら2つに比べればかなり緩和されていると言えるだろう。

上場審査で判定される基準

形式要件が満たされていると判断されれば実質審査基準をもとに上場審査が行われる。この審査では当該企業の「継続性及び収益性」「経営の健全性」「コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」などを客観的に検証。マザーズでは企業の将来性に重点が置かれ主に他の企業が追随できない技術やノウハウを持った企業が上場を目指す傾向だ。

そのため企業活動の流動性や迅速性、情報開示の透明性などが重視される。一方のジャスダックも新興企業が上場する傾向が強いが「経常利益についての規定がある」など一定以上の経営実績も審査の対象になる。その点で純粋な新興企業にとっては、マザーズよりも審査基準が厳しく映るかもしれない。

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ジャスダックとは

ジャスダックは2010年に東証の新たな市場として開設され大手企業から新興企業、今後成長が見込まれる企業まで幅広い層が上場しており公開されている銘柄(業種)も多種多様だ。ジャスダックの特徴はある程度の実績を持つ企業が上場する「スタンダード市場」、将来性を重視される企業が上場する「グロース市場」の2部構成にある。

2020年8月26日現在でスタンダード市場には663社、グロース市場には37社が上場している。スタンダード市場は企業の存続性が重視され、これまでの運営実績が一定の水準を満たしており、今後も安定的に経営活動を継続できると判断された企業が上場を許可される。グロース市場は企業の将来性、または成長の可能性が重視される傾向だ。

過去の実績よりも現在企業が所有している技術やノウハウを用いて今後業界でのシェアや優位性を高められる企業が上場を許可される。いずれも企業の信頼性と開示情報の透明性が求められることは当然だ。スタンダード市場では一定額以上の時価総額が必要になる場合があり、その分投資先としての安全性は高まると考えられる。

東証マザーズとは?

東証マザーズは1999年に開設された主に新興企業やベンチャー企業(スタートアップ)向けの市場である。2020年8月26日現在、329社が上場している。マザーズが果たす役割は、「株式市場を通じて新興企業に資金調達の機会を提供する」「将来性が見込まれる企業の株式をより多くの投資家に開放する」ということである。

そのため上場している企業には、特に情報・通信業やサービス業など新しいシステム作りにかかわるものが多い傾向だ。SNSサービス運営会社や次世代精密機器の製造会社なども名を連ねている。実績よりも将来性を重視するマザーズでは「設立間もない企業」「赤字企業」などが上場の対象になることは珍しくない。

その代わりに経営状況の開示が義務化されており上場企業は年に2回以上、業績や見通しについて投資家に説明することが必要だ。投資の対象としては、他の市場に比べて価格変動が大きいため、利益を生み出すチャンスは高まるが同時にリスクも高まると言える。

東証二部とは?

東証二部は東京証券取引所の本則市場として東証一部に次いだ位置づけにあり2020年8月26日現在で481社が上場。市場としての長い歴史から上場一覧にはさまざまな業種の実績ある企業が並んでいる。東証一部と比較すれば審査基準が緩いため、大手以外の中堅企業でも上場することが可能だ。しかし大手企業の場合でも直接一部上場はせずに一度二部に上場してから段階的に一部上場に進むこともある。

東証二部の審査基準は一部よりは緩いがジャスダックやマザーズと比較するとはるかにハードルが高い。新興企業向けの市場ではないため、これまでの実績と経営状況など企業としての安定性と信頼性が重視される。そのため上場時の株主数や株式数などを除けば審査基準のほとんどは東証一部に準じた内容だ。

現在企業の資金調達は、金融機関などを通じた間接融資から株式発行による直接融資に移行しているため、東証一部と同様に東証二部が果たす役割も大きくなっている。

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マザーズとジャスダックの違い

市場の役割としては非常によく似たジャスダックとマザーズだが具体的にどういった違いがあるのだろうか。

ジャスダック市場

ジャスダックは元々上場ではなく「店頭市場」として開設されている。2010年に東証の市場として開設される以前から日本初の新興企業向け市場として運営されているのだ。ジャスダックの前身は1963年2月に日本証券業協会が創設した店頭登録制度となりかなりの歴史を誇っている。そのため新興企業とすでにある程度の実績を重ねてきた企業が同居しているのがジャスダックの特徴でもある。

マザーズ市場

マザーズは新興企業であり今後の成長が投資対象になるような企業が数多く上場している。2市場を比較してみるとジャスダックのスタンダード市場には「最近1年間の利益の額が1億円以上であること」という審査基準と「上場時に2億円以上の純資産」という基準があるがマザーズにはその規定がない。総合的に見ると現状ではマザーズのほうがより新興企業にとって魅力的な市場と言えるだろう。

新興株式市場投資のメリット

新興市場に上場している企業は、東証一部・二部と比べると経営規模が小さく単一事業を主体に運営する傾向が強い。その結果業績の変動が大きいが株価に反映されると株価も市場で大きく変動することになる。そのため業績好調な企業の株価が大きく値上がりしたときなど東証一部・二部では見られないような短期間での大きな利益が期待できることはメリットだ。

新興株式市場への投資リスク

株価の変動が大きいことは、利益を期待できる一方で投資リスクが極めて大きいことにも注意しておきたい。新興市場の銘柄は発行株式数が少なく流動性も低いため、短期間で値上がりする可能性があるが一気に暴落する危険性もある。また流動性が低いため、値下がりする銘柄を売るべきときに売ることができなくなるリスクも押さえておきたい。

新興株式市場は値動きが大きいことが魅力だ。しかしそれが諸刃の剣となり大きなリスクでもあることは充分に理解しておくべきであろう。

新興株式市場で自社の可能性を広げるために

新興企業やベンチャー企業として資金調達を行い将来の飛躍を目指して上場する場合、ジャスダックとマザーズはうってつけの市場だ。上場を検討するにあたっては「自社の強みは何か」「これまでの実績と今後の展望はどうか」ということを考慮し審査基準と比較しながら検討するべきである。ただし上場にはある程度の期間と費用がかかることも明記しておきたい。

文・大澤 秀城(ダリコーポレーション ライター)