社会では、急速に文書や資料の電子化が進んでいる。政府や地方公共団体、自治体の公文書はもちろん、企業の文書、資料についても電子化によって保存されるようになった。これを後押ししているのが、2005年4月に施行された「e-文書法」という法律である。
しかし、この法律の認知度は一般的にそれほど高くはない。今回はこの「e-文書法」の内容や要件、他の法律との違いなどを詳しく説明する。

目次

  1. e-文書法とは?
    1. e-文書法の対象となった文書や資料にはどんなものがある?
  2. e-文書法の4つの要件
    1. 1.見読性(可視性)
    2. 2.検索性
    3. 3.完全性
    4. 4.機密性
  3. e-文書法と他の法律では何が違う?
    1. e-文書法と電子帳簿保存法の違いはどこにある?
  4. e-文書法を利用する際に注意すべきこと
    1. e-文書法は事業の効率化を実現する
  5. 事業者内でのルール作りを徹底しよう

e-文書法とは?

労務
(画像=tippapatt/stock.adobe.com)

e-文書法とは、それぞれの部署を管轄する法律(例:法人税法、会社法、商法、証券取引法など)によって、保管することが義務となっているものについて、本来の紙媒体だけでなく、電子化された文書ファイル(電磁的記録)で保存を認めたものである。

e-文書法の「e」は、「electronic(電子化)」の頭文字であり、これによって、この法律は「電子文書法」とも呼ばれている。

なお、この文章内では「e-文書法」としているが、この名称は通称である。正式には「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」という2つの法律を指す。

e-文書法の対象となった文書や資料にはどんなものがある?

e-文書法によって保存できる電子化された文書・資料の種類は、実に多い。例えば、会社の財務・税務関係の書類(例:会計帳簿、契約書、領収書、請求書、納品書、預金通帳、見積書、注文書など)や会社の組織に関する書類(例:定款、株主総会・取締役会議事録など)、そして会社の決算に関する書類(例:貸借対照表、損益計算書等など)である。

一方で、この法律では規定されていない、いわば保存の対象外となっている文書・資料もある。例えば、緊急時にすぐに確認が必要な書類(船舶に置く手引書など)や現物でなければ意味をなさないもの(免許証・許可証など)、そして外国との条約により制限されているものなどである。

具体的に、どのような文書などが保存の対象となっているかについては、「内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室」の「e-文書法によって電磁的記録による保存が可能となった規定」で、確認することができる。

なお、実務上 電子化された文書・資料などを保存するに際には、法律で定められた要件を遵守しなければならない。もちろん、要件を厳格に遵守することは、会社組織にとって負担になるのだが、逆にこの要件を満たしていれば、紙媒体で保存する必要はなくなる。

その結果、本来紙で保存していた収納スペースを節約することができ、さらに文書、資料などが電子化されることで、必要なデータを探す際に時間や手間も大幅に節約することができ、結果的に業務の効率化が向上することになる。

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e-文書法の4つの要件

組織が取り扱う文書・資料などを電子化するためには、基準が設定されている。

もちろん、電子化する文書を作成する組織を管轄する各省庁が、それぞれにその基準を明確にしているため、基準は微妙に異なっている。しかし、経済活動全般を管轄する省庁である経済産業省によって、電子化の行う際の4つの基本的な要件が、以下のように定められている。

1.見読性(可視性)

パソコンやプリンターなどを使って、電子化されたデータ(文書、資料など)が明瞭・明確な状態で認識できる状態にあるということが、この「見読性」という要件である。

つまり、見たいデータが直ちに明瞭・明確に表示できたり、紙媒体に鮮明にプリントアウトできたりすることが可能でなければならないということである。

2.検索性

保存されているデータの中から、必要なときに必要なデータを取り出すことが、すぐにできることは、業務の効率性という点で重要である。これが「検索性」という要件である。

そのためには、蓄積されたデータが体系的に保存されていなければならず、会社の中で検索方法や保存のルールを周知徹底する必要がある。

3.完全性

電子化されたデータには、法律上それぞれ保存期間が規定されているが、その期間内に保存しているデータが消失したり、破損したり、あるいは毀損したりしないような措置が講じられていなければならない。これが「完全性」という要件である。

つまり、保存されている文書・資料などの内容に対する改変、改ざんを防ぎ、仮にそのような事態が発生した場合でも、いつ・どのように起こったかがわかるように、対策を講じておかなければならない。

また、電子署名、タイムプリントを用いることで、文書・資料などの原本が改変、改ざんされることなく、正しく保存されることが証明されていなくてはならない。

4.機密性

データの閲覧を許可されていない人や組織が保存されているデータにアクセスできないことは、会社組織を守る上で重要である。これが「機密性」という要件である。

つまり、保存されたデータについて、不正アクセスに対する抑止が施されている必要がある。

なお、資料や文書などを電子化して保存する際に、上の4つの要件を全部満たす必要はない。「見読性」以外は、保存するデータの種類によって、必ず満たすべき要件とはなっていない。

e-文書法と他の法律では何が違う?

e-文書法が施行される前でも、電子データの保存を規定した法律は、既に存在していた。それが、1998年に施行された「電子帳簿保存法」である。

この法律の正式名称は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」であるが、その名称のとおり、国税関係の書類を対象としたものである。この法律では、会計帳簿や国税関係書類などの電子データに関する保存などが定められている。

ただ、この法律が施行された当時は、電子データで作成されたデータをそのまま保存することを想定しており、紙媒体の文書、資料などをスキャンした上で保存することを想定しておらず、法律上対象外であった。

しかし、新たにe-文書法が施行されたことで、電子帳簿保存法が改正され、紙媒体の文書、資料などもスキャンを行った上で保存するという、「第4条3項(電帳法スキャナ保存)」が追加されることになった。

e-文書法と電子帳簿保存法の違いはどこにある?

2つの法律の大きな違いは、「承認の有無」にある。電子帳簿保存法では、国税関係書類を電子化する際には、税務署長などから承認を受けなくてはならない。しかし、e-文書法では電子化するに当たって、特に管轄官庁などからの承認や許可は必要としない。

また、電子帳簿保存法では、特に「真実性の確保」、「可視性の確保」が要件として定められている点も、e-文書法と異なる点である。電子帳簿保存法の場合、会社などの取引先と合意した根拠となる国税関係書類などの原本について、自らスキャンし電子化した電子データ保存に代えるものであるため、この2つの要件が求められるのである。

上記2つの要件のうち、「真実性の確保」については、具体的には帳簿や書類などの授受からスキャンによる電子化、破棄に至る全てのプロセスにおいて、電子データの改変や消去の抑止が求められている。

また「可視性の確保」については、税務署などが税務調査を行った際に、調査を行う担当者がすぐに必要な帳簿、書類などを提出できるような検索性、その電子データが間違いなく確認できるような見読性が求められる。

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e-文書法を利用する際に注意すべきこと

先に触れたように、取り扱うデータ(文書・資料など)によって、要件は異なってくる。

1つ目の「見読性」については、種類に関わらず、全てのデータや文書の種類に求められる要件である。保存されているデータがプリントアウトされても、明瞭な状態でなく、内容の把握ができなければ、そもそも文書・資料などとしての意味をなさないからである。

2つ目と3つ目の「検索性」と「完全性」については、一部の文書のみに必要とされている要件である。どちらの要件も、全てのデータに必要であるように思うが、法律によって一律に規制すべき要件ではなく、あくまでも文書・資料などを扱う事業者の裁量に任せる性質のものであるからだ。

4つ目の「機密性」であるが、現在のところ法的根拠にある要件とはなっていない。ただし法律で一律に規制をしていないだけで、実際、取引相手の会社や内部では機密保持の規約を作り、データの漏洩を防止しているのが現状である。

e-文書法は事業の効率化を実現する

先ほど説明したように、会計帳簿や国税関係書類などの電子データは、「電子帳簿保存法」によって保存を規定しているが、保存の際には、「真実性の確保」と「可視性の確保」が要件となっている。

つまり、資料・文書が改変・改ざんされることなく、正しいプロセスでデータ化されて、さらに電子署名とタイムスタンプを付与することで、真正あることを証明したものでなければならないことを示している。

これは、後に施行された法律、e-文書法の要件である見読性、完全性、検索性を含むものだと考えられる。

一方で、e-文書法が対象とする会計帳簿や国税関係書類以外のデータの保存については、電子帳簿保存法に比べてそれほど要件が厳格でない。そのため、事業者の裁量によってある程度自由にデータの保存が可能な部分はある。このことから、事業の効率化を実現することが可能であるといえる。

事業者内でのルール作りを徹底しよう

事業者の裁量に任せられるからといって、保存データの機密性や検索性に対して、手を抜くことは、後々トラブルを起こす要因ともなり、事業者の大きな負担になり得る。

従って、今後作成するデータや文書はもちろん、既にあるデータ・文書の電子化や保存については、事業者内でのルール作りが不可欠である。また、対外的には「機密保持契約書」を取り交わしたり、契約の条項に「機密保持条項」を盛り込んだりするなどの工夫が必要である。

会社組織が扱う文書・資料などを電子データ化することで、業務の効率化が図られ、社員なども情報の共有が容易となる。しかし併せて、データを保存するルール作りや漏洩防止策を講じる必要も、会社組織には課せられることになるだろう。

文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)