会社の経営を行う上で気になる部分の一つが社長の給料だ。個人事業主とは異なり社長の給料を決定したり変更したりする際にはいくつか守るべきルールがある。今回は、社長の給料を決める具体的な方法や注意点を分かりやすく説明していく。

鈴木 裕太
鈴木 裕太(すずき・ゆうた)
横浜国立大学在学中に中小企業診断士を取得(現在は休止中)。Webメディアの立ち上げ〜売却に携わり、SEO対策をはじめとしたWebマーケティングを幅広く経験。現在はビジネスの分野に特化したライター業と、他社のメディアサイトの立ち上げ支援を行っている。また、情報サイト”BizLabo”の運営も行っており、会社経営に役立つ知識・ノウハウを伝えることにも力を入れている(月間1.5万PV:2020年1月時点)。

目次

  1. 社長の「給料」とは?
    1. 社長の給料=役員報酬である
    2. 社長の平均年収
  2. 社長の給料を決める際の注意点
    1. 毎月同じ金額でなくてはならない
  3. 役員報酬を変更するタイミングや条件次第では税金が増える
    1. ボーナスは原則経費にならない
  4. 社長の給料を決める方法
    1. 1.節税の観点で決める
    2. 2.資金調達や事業への投資を考慮して決める
    3. 3.従業員の給料とのバランスで決める
  5. 社長の給料を変更する際の注意点
    1. 原則は事業年度の開始から3ヵ月以内の変更が必要
    2. 4ヵ月目以降の増額でも損金参入が認められるケース
    3. 4ヵ月目以降の減額でも損金参入が認められるケース
  6. 社長の役員報酬は税負担を十分シミュレーションして決めよう

社長の「給料」とは?

会計
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

そもそも社長の給料とは何だろうか?「給料=雇用されている人が受け取る報酬」というイメージを思い浮かべる人にとって「社長の給与」という概念は理解しにくいかもしれない。そこでまずは社長の「給料」がどのようなものか基本的な部分を解説する。

社長の給料=役員報酬である

一般的に社長とは、株式会社の業務に関する一切の行為を行う権限を有する「代表取締役社長」を意味することが多い。代表取締役社長の給料は、会社法第361条により他の役員と同様に株主総会の決議によって決定される。そのため代表取締役社長は給料として役員報酬を会社から受け取ることになるわけだ。なお役員報酬は「給料」扱いになるため、個人事業主とは異なり「給与所得控除」が活用できる。

給与所得控除とは、給与の金額から所得税法で定められた金額を差し引くことができる制度だ。この制度をうまく活用することで社長個人が支払う所得税に関して節税の効果を得られるだろう。ただし社員とは異なり「残業代が給料に上乗せされる」「休日手当が上乗せされる」といったことはないため注意が必要だ。

社長の平均年収

では一体、社長の平均年収はどのくらいなのだろうか。国税庁が公表している民間給与実態統計調査(2018年)によると株式会社役員の平均給料(手当や賞与含む)は約769万2,000円だった。社長のみならず他の取締役も含めた平均のため一概には言えないが一般的なサラリーマンの平均年収を大きく上回っている。

また2,500万円以上の給料をもらっている役員は9万7,223人で、その平均年収は約4,332万8,000円と非常に高水準だ。社長の平均年収は、会社のトップとしての立場と責任に見合う金額と言える。

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社長の給料を決める際の注意点

個人事業主の場合は、売上から費用を差し引いた金額がその月の収入だ。一方で社長の場合は、あらかじめ「役員報酬」として金額を決めておく必要がある。役員報酬を決定するにあたっては、いくつか守るべき点(ルール)があるため、注意が必要だ。具体的には以下の注意点を踏まえた上で社長の給料(役員報酬)を決める必要がある。

毎月同じ金額でなくてはならない

社長の給料(役員報酬)は損金に算入することで法人税の節税効果を期待できる。しかし社長の給料を損金算入するには、同じ事業年度の間は役員報酬の金額が毎月同じでなくてはならない。増額自体はできるものの増額分に関しては損金への算入が認められないため、「予想以上に儲かった」などの理由で給料を増額しても法人税を節税できないことになる。

それどころか社長個人の収入は増えるため、所得税の額も増えてしまいかねない。毎月同じ金額を支給しないとかえって会社・個人それぞれの税負担は増えるため、基本的には毎月同じ金額を支給する必要がある。

役員報酬を変更するタイミングや条件次第では税金が増える

会社設立時点または事業年度が始まった日から3ヵ月以内であれば役員報酬の金額を一度だけ変更することが認められている。この期間内の変更であれば引き続き社長の給料として支払った分を損金に算入することが可能だ。ただしこの期間以外に役員報酬を変更すると毎月同額の条件を満たさなくなるため、社長の給料を損金算入できなくなる。

その結果、法人税と所得税の負担が増えてしまう。条件次第では、3ヵ月目以降の変更でも例外的に社長の給料を損金算入できるものの、そうした例外を除くと税負担が増えるだけである。タイミングと条件をしっかりと見極めた上で税負担が増加しない場合にのみ社長の給料を変更するのが良いだろう。

ボーナスは原則経費にならない

法人が当初の予想よりも多くの利益を得られた場合、ボーナスを社長個人に支払うことで節税を考える人もいるだろう。しかし社員に支払うボーナスとは異なり社長を含む役員に対するボーナスの支払いは原則経費としては認められないため、単に税負担が増加するだけだ。ただ事前に税務署へ「事前確定届出給与に関する届出」を提出しておけば社長のボーナスを経費として認めてもらえる。

事前に届け出た金額を支払わないと経費として認められないため、節税対策としての使い勝手は良くない。

社長の給料を決める方法

社長の給料を決める方法には、確固たる正解は存在しない。しかし一般的には「節税」「資金調達・事業投資」「従業員とのバランス」といった3つの観点から社長の給与が決められる。この章では、それぞれの視点から社長の給料を決める方法を具体的に見てみよう。

  • 節税の観点で決める
  • 資金調達や事業への投資を考慮して決める
  • 従業員の給料とのバランスで決める

1.節税の観点で決める

一般的には、節税の観点から社長の給料を決める方法が広く活用されている。役員報酬の金額を多くするほど法人の利益が減少するため、法人税等の支払い額を減らすことが可能だ。ただし社長個人の所得は増えるため、結果的に個人としての税負担は増えてしまう。一方で社長個人の所得税を減らすために役員報酬の金額を少なくすると今度は法人の税負担が重くなる。

以上の仕組みを踏まえた上で社長の給料を決めていけば良いだろう。例えば法人の税負担を抑えたいならば役員報酬を増やせば良い。一方で個人の税負担を抑えたいならば役員報酬を少なく設定すれば良いわけだ。あらゆる金額でシミュレーションし自身や会社にとって最適なバランスを見つけるのが重要である。

2.資金調達や事業への投資を考慮して決める

社長の給料を決定する際には、資金調達や事業への投資を考慮する方法も有効だ。前述した通り社長個人の給料を増やせば会社の税負担を軽減できる。しかし会社に残る利益は減るため、事業に必要な資金を手元に残せなくなるだろう。また会社の財務内容における安定性や基盤が低下するため、資金調達の際に追加の担保が必要になるなど不利益を被る恐れがある。

事業のさらなる成長を目指す上で事業への投資や資金調達は不可欠だ。投資や資金調達をスムーズに行いたい場合は、ある程度会社に資金を残せるように社長の給料を決めるべきである。

3.従業員の給料とのバランスで決める

事業の成長を目指す上では、モチベーションの高い従業員にがんばってもらうことも重要だ。しかし社長の給料と比べて従業員の給料が異常に低いと従業員のモチベーションは下がってしまう恐れがある。従業員のモチベーションを下げないためには、従業員の給料とのバランスを考慮した上で役員報酬を決めるのがベストだ。

自社と同じくらいの事業規模の企業を調査し相場と同じくらいの給料にしておけば問題ないだろう。

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社長の給料を変更する際の注意点

社長の給料は決めるときだけでなく変更するときにも注意すべきポイントがある。どのような点に注意すべきか、具体的に3つのケースについて説明していく。

  • 原則は事業年度の開始から3ヵ月以内の変更が必要
  • 4ヵ月目以降の増額でも損金参入が認められるケース
  • 4ヵ月目以降の減額でも損金参入が認められるケース

原則は事業年度の開始から3ヵ月以内の変更が必要

繰り返しになるが基本的には事業年度の開始から3ヵ月以内に変更する必要がある。社長の給料を変更したい場合には、株主総会で役員報酬の変更に関する決議を行えば問題ない。なお決議した内容に関しては、必ず議事録を作成した上で保管しておく必要がある。なぜなら議事録がないと後から税務調査が行われた際に役員報酬の損金算入が認められない可能性が出てくるからだ。

後から追徴される事態を避けるためにも忘れずに議事録を作成しよう。また標準月額報酬が2等級以上増減する場合には「被保険者報酬月額変更届」の提出が必要になる可能性がある。標準月額報酬に関しては、全国健康保険協会の「都道府県ごとの保険料額表」で調べられるため、必ず確認しておこう。

4ヵ月目以降の増額でも損金参入が認められるケース

4ヵ月目以降に増額する場合でも例外的に損金算入が認められるケースがある。具体的には、新しく役員になるケースだ。例えば事業年度の途中で従業員が役員に昇格した場合などが該当する。従業員から役員になることで給料が増えるのは当然なため、損金算入が認められるわけだ。また役員の間で地位が上がるケースでも損金算入が認められる。

例えば副社長から社長に変わった場合には、給料を増やした際に損金算入を認めてもらえる。

4ヵ月目以降の減額でも損金参入が認められるケース

4ヵ月目以降に役員報酬を減額したい場合にも例外的に損金算入が認められる。最も一般的なのは、業績悪化による給料の減額だ。経営状況が悪化し高い給料を社長が受け取ることで株主などの利害関係者に影響を与える場合には、給料を減額することができる。また社長から副社長といったように役員のランクが下がるケースや役員でなくなるケースでも報酬の減額が可能だ。

社長の役員報酬は税負担を十分シミュレーションして決めよう

社長の給料は、役員報酬として会社から支給される形となるため、金額の決定や変更に関しては会社法などの法律に基づいて行わなくてはならない。役員報酬を減らしすぎれば法人税などの負担が上がり、役員報酬を増やしすぎると個人の所得税の税負担が上がってしまうため、十分にシミュレーションをしておくことが大切だ。

特に事業年度の途中で変更する際には「損金算入が認められるかどうか」についてしっかりと吟味する必要があるだろう。

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)