企業にとって「売上」は事業継続のための基本である。今回は売上の仕訳の基本知識を簡単に解説するとともに、各業種の具体的な仕訳例を解説していく。

目次

  1. 売上の仕訳とは?
    1. 売上の定義
    2. 売上仕訳の基本形
    3. 売上の仕訳はいつ切る?
    4. 売上に関する会計基準の紹介
    5. 収益認識基準について
    6. 日々の取引仕訳と決算修正仕訳の違い
  2. 業種別・売上の具体的な仕訳例
    1. 小売業
    2. 不動産賃貸業
    3. サービス業
    4. 金融業
  3. 売上仕訳の特殊な点

売上の仕訳とは?

会計
(画像=ipopba/stock.adobe.com)

売上の仕訳について、売上の定義や仕訳の基本形、仕訳を切るタイミング、売上に関する会計基準(収益認識基準含む)、日々の取引仕訳と決算修正の違いを解説していく。

売上の定義

売上とは、企業の目的にあたる商品やサービスを販売することにより得られた代金のことである。企業の本業による収入を意味しており、余ったお金を株式投資に回しているような場合の配当金や売却益は売上には当てはまらない。

売上仕訳の基本形

自社製品を100万円で顧客に販売した場合の仕訳は下記のとおりである。

借方貸方
現預金100万円売上高100万円

現預金でなく代金を翌月末払いに設定している場合の仕訳は、売掛金の勘定科目を使う。

借方貸方
売掛金100万円売上高100万円

翌月末に売掛金100万円を回収した場合、売掛金の消し込み仕訳を行う。

借方貸方
現預金100万円売掛金100万円

仮に売掛金が回収できずに貸し倒れてしまった場合、貸倒損失の勘定科目を使う。売上のマイナスとはならない点が特徴である。

借方貸方
貸倒損失100万円売掛金100万円

売上の仕訳はいつ切る?

売上の仕訳をいつまでに切らなければならない、という会計上のルールは存在しない。会社は年次決算を行い、決算に基づいた確定申告をしなければならないが、最も遅い場合、年に1回しか売上の仕訳を切らないという場合もあるだろう。

実務上は、毎日・毎週・毎月といったように、なるべく早いタイミングで売上の仕訳を切ることが望ましい。売上は会社の状況を表す最も重要な財務数字の一つであるので、経営陣が早いタイミングで売上の数字をレビューできることは、経営改善に役立てるという意味でも非常に重要である。

売上に関する会計基準の紹介

売上の計上仕訳に関して包括的に定められたものは現状存在しないが、企業会計原則と企業会計原則の注解に紹介されている。

企業会計原則 第二 損益計算書原則 「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。」

上記のルールは、売上の会計処理は「発生主義」によるものと解される。発生主義とは、現金の収入や支出に関係なく、経済的事象の発生または変化が生じた時点で収益または費用を認識する考え方である。現金を受け取ったときに収益認識する「現金主義」とは反対の考え方であり、日本の会計ルールは「発生主義」が基本となっている。

収益認識基準について

日本の会計基準は、企業会計原則を除いて収益認識に関する会計基準は包括的なものは開発されてこなかった。一方で国際的な会計基準であるIFRSや米国会計基準では収益認識に関する会計基準がすでに適用開始されている。

世界的な流れを受けて日本でも、2021年4月1日以後に開始する事業年度から原則適用となる収益認識基準が開始されることとなった。

収益認識基準とは、下記の5ステップに従って収益を認識する基準である。

1.契約の識別
2.履行義務の識別
3.取引価格の算定
4.履行義務に取引価格を配分
5.履行義務充足により収益を認識

日々の取引仕訳と決算修正仕訳の違い

日々の取引仕訳の他に売上に関する決算修正仕訳は、「前受収益」と「未収収益」の勘定科目を使う。

前受収益が登場するのは、例えば1年分のサービス料金を一括して「前払い」してもらうような場合である。例えば1年分の契約料12,000円を受け取ったときの仕訳は下記のようになる。

借方貸方
現金12,000円前受収益12,000円

現金を受け取った段階ではサービスの提供が行われていないので、発生主義に基づくと収益を認識できない点に注目されたい。1カ月間が経過した後に、前受収益を取り崩し、売上を計上する仕訳を切ることとなる。

借方貸方
前受収益1,000円売上高1,000円

反対に、未収収益が発生するのは、1年分のサービス料金を一括して「後払い」してもらうような場合である。例えば1年分の契約料12,000円を後払いしてもらう契約を締結した場合、契約締結時には仕訳は行われない。1カ月サービス提供後に未収収益と売上高を認識する。

借方貸方
未収収益1,000円売上高1,000円

12カ月経過後、後払いとなっていた現金を実際に回収した際に未収収益を取り崩す仕訳を行う。

借方貸方
現金12,000円未収収益12,000円

実務上、継続サービスを後払いすることはまれであるため、「未収利息」は貸付金利息のような場合によく登場する勘定科目である。

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業種別・売上の具体的な仕訳例

ここからは業種別に、具体的にどのような売上に関する仕訳が行われるかを解説していく。売上発生のタイミングは下記のようにさまざまなものが考えられるが、業種ごとにタイミングが異なっていることに注目してほしい。
・契約締結日
・商品発送日
・輸出の場合、船済み完了の日
・顧客に商品が到着した日
・顧客が検収を行った日
・商品代金の支払期限
・商品代金を実際に受け取った日

なお、消費税を売上に含める「税込経理方式」と、含めない「税抜経理方式」があるが、具体的な仕訳例としては「税抜経理方式」を採用し、消費税に関する仕訳は考慮していない。

小売業

小売業は、スーパーマーケットやコンビニのような商品を仕入れて最終顧客に販売する業種である。小売業の場合、売上発生のタイミングは顧客がレジで決済を済ませたタイミングと考えられる。

一人の顧客が10,000円の買い物を現金決済した場合の仕訳は下記のとおりである。

借方貸方
現金10,000円売上高10,000円

クレジットカード決済を行った場合の仕訳は下記のとおりである。なお、クレジットカード会社から請求される手数料率は3%とする。

借方貸方
売掛金10,000円売上高10,000円
現金9,700円売掛金10,000円
支払手数料300円

売上仕訳を切るタイミングは会社によってさまざまであるが、POSシステムを備えたレジであれば個々の取引データを勘定系システムに転送し、勘定系システムにて売上に関する仕訳を自動的に切ることができる。

システム連携されていない場合は、店舗ごとに日々の取引を集計し毎日仕訳計上を行うなどの手作業が必要となる。

不動産賃貸業

不動産賃貸業は、自社または個人が保有している不動産を第三者に貸し出して収入を得る業種である。賃貸借契約を締結した際は、サービスの提供がなされていないため家賃収入に関する売上に関する仕訳を切ることはない。

自らが保有する不動産を第三者に月額10万円の賃貸借契約を締結した際の仕訳は下記のとおりである。なお、契約締結時に家賃の1カ月分の前払い、10万円の敷金、10万円の礼金を受領したこととする。

借方貸方
現金30万円前受収益10万円
預り金10万円
売上高10万円

敷金は賃貸契約終了後に顧客に返還するべきであるため、売上高には計上せず「預り金」勘定を使う。礼金は敷金と異なり返還義務のないお金なので売上高に計上することができる。

次月以降の仕訳は下記のとおりである。

借方貸方
前受収益10万円売上高10万円
現預金10万円前受収益10万円

毎月の家賃の仕訳タイミングとしては、家賃の振込期限かもしくは実際に家賃が振り込まれた日とするのが通常だろう。仮に家賃の振込がなければ下記のように、売上は認識しつつ資産として「未収入金」を計上する。

借方貸方
未収入金10万円売上高10万円

サービス業

サービス業は、物の販売ではなく役務の提供によって収益を得る業態である。ソフトウェア開発受託事業を例にとって仕訳を解説していく。

一般的なソフトウェア受託開発業の場合、契約締結、顧客の仕様を固め、実際のプログラミング作業を行い、顧客の検収、代金の支払いという業務フローとなる。

この場合、売上計上のタイミングは顧客の検収が完了したときが望ましい。顧客の検収が完了した時点で下記の売上計上の仕訳を計上する。なお、受託金額は100万円とする。

借方貸方
売掛金100万円売上高100万円

最後に代金支払いのタイミングにて、売掛金を消し込む仕訳を計上する。

借方貸方
現預金100万円売掛金100万円

また、ソフトウェアの開発受託期間が長い場合、「工事進行基準」と呼ばれる業務の進捗に合わせて売上高を認識する方法もある。

例えば、受託金額100万円のうち、工事進行基準を適用した際の仕訳は下記のとおりである。なお、工事の進捗度合いは50%とする。

借方貸方
売掛金50万円売上高50万円

金融業

金融業は、銀行業や証券業、保険業、貸金業などの業界である。金融業の場合、「売上高」という勘定科目自体は使用せず、「受取利息」や「受取配当金」といった勘定科目を使用する。

例えば、貸金業を営んでおり、顧客に100万円を年利10%で貸し付けた仕訳を考えたい。資金を貸し付けた際の仕訳は下記のとおりであり、売上高(=受取利息)は発生していない。

借方貸方
貸付金100万円現預金100万円

利息の支払日に受取利息の計上仕訳を切る。

借方貸方
現預金10万円受取利息10万円

顧客から無事、100万円の返済がなされた場合は貸付金を消し込む仕訳を計上する。なお、仮に顧客から返済がなされなかった場合は貸倒損失として処理する。

借方貸方
現預金100万円貸付金100万円

もしくは、以下のように記載する。

借方貸方
貸倒損失100万円貸付金100万円

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売上仕訳の特殊な点

今回は売上高に関する仕訳計上の基礎知識から、業種ごとの具体的な仕訳例まで解説してきた。売上高は企業が最もよく切る仕訳であるものの、会計基準自体としては包括的なルールとしては定まっていない。

2021年4月1日より収益認識基準がスタートするが、中小企業であれば収益認識基準は任意適用であるためそこまで気にする必要はないだろう。ただし、中小企業であっても監査対象企業であれば原則適用が求められる。

売上計上に関する仕訳は、業種や契約、ビジネスモデルなどにより、仕訳タイミングや何の経過勘定を使うかが異なってくる。新規ビジネスを行うような場合、経済実態に合わせて適切に売上の仕訳を考えなければならない点に留意が必要である。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部