スタートアップ企業にとって重要な資料の一つ、事業計画書。出資を受ける際の判断材料などとして必要となるものだが、役割はそれだけではない。起業の段階で事業計画書を練り上げておけば、突き進む原動力にもなる。ここでは事業計画書の意義やまとめ方のポイントを中心に解説する。

目次

  1. スタートアップにおける事業計画書の意義とは?
    1. スタートアップで事業計画書が必要になる場面
    2. 事業計画書を作ることで分析を深め、周囲を巻き込める事業に
    3. 自分の情熱をぶつけるよりも「人に伝える」視点を重視
  2. 見せる相手別・適した事業計画書の書き方
    1. 1.投資家やVC:斬新さ・V字成長で「跳ねる」事業を求める
    2. 2.金融機関:堅実さ・安定成長で「継続する」事業を求める
    3. 3.事業メンバー:「魅力的なビジョンと実現性のバランスがとれた」事業を求める
  3. 事業計画書は将来の事業を強固にするための重要な鍵

スタートアップにおける事業計画書の意義とは?

しっかり作れば宝の地図にも!スタートアップにとっての事業計画書とは?
(画像=motortion/stock.adobe.com)

株式公開用語辞典によると「事業計画とは、事業概要・経営方針・事業内容・経営環境・事業展開戦略・財務計画等を3〜5年間(上場までが一般的)策定したもの(目標数値)。 事業計画書とはそれらを記した資料。」とされている。

ただスタートアップ企業、特に創業融資を受けた経験があると「金融機関や投資家などから事業に対して融資(出資)を受けたい事業主が、審査のために用意する書類」というふうに認識しているケースも珍しくないだろう。

しかし、事業計画書はただの書類ではない。その作り方・見せ方次第では、事業の行く末を左右する「宝の地図」になる可能性も十分にあるものなのだ。

スタートアップで事業計画書が必要になる場面

スタートアップでは、主に出資してもらうときに事業計画書が必要となる。投資家が出資するかどうかを決める材料としてはピッチ(短時間のプレゼンテーション)がより重視されるが、事前に提出する事業計画書にもしっかりと創業者の人柄や経歴、事業への思いをしたためておかなければならない。

特に個人投資家の場合は、経営者の人柄や思いに共感して出資を決めることも多いため、相手に伝わる書き方を心がけたい。

また、新たなビジネスモデルを創り出すスタートアップの事業計画書においては、数値の組み込みも大切だが、それ以上に「将来性が見えるかどうか」に重きを置いて仕上げる必要があることも押さえておきたい。

事業計画書を作ることで分析を深め、周囲を巻き込める事業に

「誰かに見せるもの」として作られがちな事業計画書だが、実は作る当人にとっても、事業計画書を作るためにリサーチを重ね、収集したデータをつぶさに分析し、これから取り組もうとする事業アイデアやビジネスモデルについて深く考えていくことは重要な意義を持っている。

当人が深く納得しながら作り上げた事業計画書は、事業メンバーや投資家をはじめとした周囲の人々をスタートアップの事業に巻き込み、資金調達だけでなく人脈形成や宣伝広報などさまざまな面で力を発揮してくれるはずだ。

自分の情熱をぶつけるよりも「人に伝える」視点を重視

事業計画書は作る当人のためにも意義があると述べたが、一方で「作る当人だけのための、独りよがりなもの」になってしまわないように気をつけたい。

起業を志すような人物であれば、事業計画書にもとにかく自分の情熱をストレートにぶつけてしまいがちなのは想像に難くないが、ストレートにぶつけたからといってそれが必ず相手に響くとは限らないのだ。

出資してもらえるかどうかは、もちろん経営者の人柄や事業への思いも総合して判断されるが、それもきちんと相手に伝わらなければ意味がなくなってしまう。

例えば、事業に関して確固たるビジョンがあるのなら、思いのままにそれを吐露するのではなく、まずは自分の中でそれを整理し、相手に伝わる形で言語化して伝えることを意識しよう。収支計画は十分に相手が納得してくれるものになっているか、その根拠について今一度考えてみよう。

事業計画書を見せたい相手に渡す前に、信頼できる人に内容をチェックしてもらうのもおすすめだ。スタートアップの事業計画書作成のサポートを専門とするアドバイザーもいるので、そうした専門家のサポートを受けることを検討するのもよいだろう。

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見せる相手別・適した事業計画書の書き方

事業計画書は投資家、ベンチャーキャピタル(VC)、金融機関の融資担当者、事業メンバーなどのうち「誰に見せるために作るか」で、最終的に重視するべきポイントが変わってくる。

とはいえ、実際に事業を遂行するのは経営者なのだから、事業の基本となっているビジョンや方針を曲げてまで、見せる相手に合わせた事業計画書を作るわけにはいかない。

それぞれの相手に響く事業計画書を作るには、それぞれの相手が「事業計画に求めるもの」を把握しておき、それに合わせて事業計画書の書き方をアレンジしていくとよい。では、事業計画書を見せる具体的な相手を想定しながら、それぞれの相手に向けての事業計画書で重視するべきポイントについて見ていこう。

ここでは「投資家やVC」「金融機関」「事業メンバー」の3つに分けて紹介する。

1.投資家やVC:斬新さ・V字成長で「跳ねる」事業を求める

一般的に、投資家やVCは急激に伸びると予想される成長性の高い事業を好むとされる。これを売上推移グラフの形に例えると、一度赤字に転じた後にグッと上がっていく、V字型に近いモデルだ。

例えば、斬新なアイデアを活かした新しいビジネスモデルで未開拓の市場、いわゆるブルーオーシャンを掘り当て、目立った競合相手が出てこないうちに事業が当たって大きく成長し、ほどなく出口へ向かう……といった事業計画がこれにあたるだろう。

この場合、事業計画書では事業アイデアの魅力や事業による課題解決のモデル、独自性のアピールに力を入れることや、想定される競合商材などがあれば差別化要素をどこに見出すか、といったことなどがポイントになってくる。相手がどのような投資をする傾向があるのかもしっかりリサーチしておきたい。

有望な起業家を応援する目的で出資を行う「エンジェル投資家」に向けて事業をアピールしたい場合、一般的な投資家やVCほど利益や成長性は重視されない。その一方で、事業アイデアの魅力や事業による課題解決のモデルや独自性を伝え、共感してもらうことがより一層重要になってくる。

特に社会課題を解決できる事業アイデアは、エンジェル投資家にとっても投資することが社会貢献につながるので、より一層関心が高いはずだ。

2.金融機関:堅実さ・安定成長で「継続する」事業を求める

金融機関は一般的に安定した成長を続ける堅実な事業を好むとされる。金融機関としては投資家のように投資で利益を得るのではなく、融資した資金を着実に回収できるかが評価のポイントになるためだ。

これを売上推移グラフの形に例えると、事業スタート時から落ち込むことなく、ゆるやかな右肩上がりでまっすぐ成長していくモデルだ。

例えば、すでに安定した市場があり、早いタイミングから継続的に売上が見込めるビジネスモデルで、比較的ゆっくりではあるものの着実に成長していく……といった事業計画がこれにあたるだろう。

こうなると、投資家やVCにアピールするケースと同じ事業アイデア、つまり市場は未開拓で、売上はV字に推移するであろう事業アイデアを、そのままの形で金融機関にアピールしていくことはやや難しくなる。

この場合は、新しい事業アイデアが軌道に乗るまで、別の事業ドメインで堅実に売上を稼いでいくような事業計画を打ち立てるのが望ましいだろう。

例えば、自社の新しいWebサービスやアプリの開発を最終目的としながらも、起業からしばらくは受託開発を積極的に受注して売上を伸ばし、会社に体力をつけていく。こういった「当たりを狙う事業」と「着実に稼ぐ事業との」二段構えの計画などで、事業計画の堅実さをアピールしたいところだ。

3.事業メンバー:「魅力的なビジョンと実現性のバランスがとれた」事業を求める

共に事業を進めていくメンバーからは、投資や融資を受ける場合のように事業計画書の提出を求められることはないかもしれない。だからといってメンバーのための事業計画書が不要かというと、決してそんなことはない。

これから取り組む事業のアウトラインを明確にし、共に走り始めるメンバーとあらかじめビジョンを共有しておくためにも、ぜひメンバーに見せるための事業計画書も用意したいところだ。

スタートアップ企業のメンバーともなれば、投資家やVC、金融機関のように事業成長モデルを最重視するとは限らないだろう。なにしろ、事業立ち上げというのはノーリスクで手掛けられるような方法があるものではない。

どれだけ安全策を取っても、メンバーには雇われるよりはるかに重い負担がかかることも少なくないし、さらには経営に参加することによるリスクもついてまわる。

それでも積極的にコミットしたくなるような魅力的な事業アイデアやはっきりとしたビジョンが事業計画書によって示されれば、そしてメンバーがそれに共感してくれれば、降りかかる苦労も承知の上でついてきてくれ、それが大きな力になってくれるはずだ。

とはいえ、事業メンバーも夢ばかりが大きくふくらんで、まるで成功できる可能性を感じられない事業にみすみす身を投じるわけにはいかない。

事業メンバーのための事業計画書では、事業の魅力を伝えることに加えて、しっかりと根拠を持った実現可能性、例えば新商品開発のための資金繰り計画といった具体的な道筋を示しておくことも重要だ。

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事業計画書は将来の事業を強固にするための重要な鍵

事業計画書を作ることは、自分がこれから取り組む事業についてつぶさに分析し、深く知ることにもつながる。

事業計画書を提出する相手に合わせて、その内容をアレンジしていくこともまた、相手へのアピールといった直接の目的のためだけにあるのではない。それはある意味、事業スタート後に起こるであろうさまざまな状況を想定し、複数の事業計画を用意しておくことでもあるのだ。

こうして事業計画を練りながらあらゆる可能性を想定して備えることで、事業が急成長を遂げたときにも、堅実な成長を見せるときにも、それに応じて冷静に動くことができるだろう。

どんな人間であれ、人生を賭けて起業した事業で想定していないことが起これば多少なりとも動揺するものだ。より確からしい根拠を持って、より多くの可能性とその対策について想定しておくことは、ひいては万が一のときに事業を守ることにもつながっていく。

もし、資金調達やメンバーとの意思共有といった直接的な必要性がなかったとしても、会社と事業をより強く、確実なものにしていくためにはぜひ、しっかりとした事業計画書を作っておくことをおすすめする。

文・ライトアップ