新型コロナウィルスの感染拡大により企業の業績が落ち込み店舗も休業や閉店に追い込まれるなど経済に与える影響が深刻化している。日本政府や地方自治体も助成金などの支援策を打ち出してはいるが補てんは十分とは言えない状態だ。そんな中クラウドファンディングが有効な資金調達手段として注目を浴びている。
このような危機を乗り切るためには、クラウドファンディングをどのようにビジネスへ活用すれば良いのだろうか?今回はクラウドファンディングの概要とその種類、メリットやリスクなどについて紹介していく。
目次
クラウドファンディングとは?

クラウドファンディングは、群衆を表すクラウド(crowd)と資金調達を表すファンディング(funding)を組み合わせた造語だ。ITサービスのクラウド(cloud)と勘違いする人がいるがこちらの英単語は「雲」を表すため意味が異なる。クラウドファンディングの本来の意味は、不特定多数の人間(群衆)が他の人たちや企業などに資金の提供や協力などを行うことだ。
クラウドファンディングの仕組み自体は、古くからあり欧米などでも活用されていたがインターネットの普及とITの発達により近年は利便性が著しく向上している。例えばREADYFOR(レディーフォー)は、2011年3月からクラウドファンディングサービスを開始した。2020年現在では自治体や学校法人などの公益的なものからクリエイティブ系まで幅広いプロジェクトを展開するサービスに成長している。
他に日本で有名なプラットフォーマー(クラウドファンディングサービスを提供する事業者)としては、Makuake(マクアケ)やCAMPFIRE(キャンプファイヤー)などさまざまだ。各サイトとも多くのプロジェクトと高い成約率を誇っている。
クラウドファンディングの仕組み
多くのプラットフォーマーでは、資金調達の募集案件を「プロジェクト」と呼ぶ。プロジェクトは、あることを目標として資金の提供を出資者(もしくは支援者)に求め一定の期間内に資金の目標額を達成した場合に成立となることが一般的だ。また先述のプラットフォーマーなどで起案者によって始められて成立した場合には起案者が出資者へのリターンを行う義務が発生する。
さらに起案者は、プラットフォーマーに所定の手数料を支払わなければならない。(後述するAll in 型の場合にはこの限りではない)手数料は各プラットフォーマーで異なるが多くはプロジェクトに集まった金額の約10~20%だ。クラウドファンディングのプロジェクトは、主にAll or Nothing 型とAll in 型に分かれる。
・All or Nothing 型
「資金が目標額に到達しなかった」「期間が過ぎてしまった」などでプロジェクトが不成立の場合、支援者には出資金が返金される。起案者もプラットフォーマーに対して手数料を支払わなくても良い。当然、この場合は出資者へのリターンも発生しない。
・All in 型
プロジェクトが目標額に達しなくても期限が来れば成立する。支援者へのリターンもプラットフォーマーへの手数料も支払わなければならない。
クラウドファンディングで資金調達を行うメリットは、既存の金融機関では理解を得られなかった融資が、支援者の理解を得られれば獲得できることだろう。
5種類のクラウドファンディング
クラウドファンディングは、プロジェクトの性質によって主に「寄付型」「購入型」「融資型」「ファンド型」「株式投資型」の5つの種類に分かれる。以下、それぞれのクラウドファンディングがどのようなものか、簡単に説明していこう。
- 寄付型
- 購入型
- 融資型
- ファンド型
- 株式投資型
1.寄付型
環境や動物の保護などある目的達成のために寄付を行う型だ。金銭や物品のリターンは基本的にない。プロジェクトの中には、地震や洪水による被災地支援、病気の子どもたちへの支援など公共性の高いプロジェクトが多いのが特徴だ。寄付金の活用に関しては、支援内容の報告書やWebサイトなどで活動報告が行われる。
そのため支援者は自分の支援金がどのように活用されているのかを把握することが可能だ。寄付型クラウドファンディングの代表的なプラットフォーマーには「READYFOR for Charity」「Good Morning」「A-port寄付型」などがある。
2.購入型
クラウドファンディングの中では一番多いプロジェクトだと言われており、今回の新型コロナウィルス感染拡大でも多くのプロジェクトが支援策として起案された。購入型クラウドファンディングは、デジタル家電やガジェット関連などの「モノづくり」プロジェクト、飲食店の回数券やインディーズ系アーティストのコンサートチケットなど、幅広いプロジェクトの内容が特徴だ。
プロジェクトの成果は、モノやサービスとして支援者に還元される。プラットフォーマーも数が多く「READYFOR」「Makuake」「BOOSTER」「machi-ya」「3rd Table」などが有名なサービスだ。各プラットフォーマーには得意とする分野もあり飲食関連なら「3rd Table」、デジタル家電やITガジェット系の開発なら「machi-ya」といった具合だ。
ここから紹介する「融資型」「ファンド型」「株式投資型」の3つは投資型と呼ばれるクラウドファンディングだ。
3.融資型
「貸付型」や「ソーシャルレンディング」とも呼ばれるクラウドファンディングの型だ。融資型のクラウドファンディングは、複数の出資者から資金を集めて借り手となる企業に融資を行いプロジェクトが運営されていく。プロジェクトの起案時に融資に対する利率(金利)が決められており出資者には毎月利息が支払われるタイプが多い。
融資型は、寄付型や購入型と異なり出資者が金銭的なリターン(利息)を得ることになるため、区分は金融商品となる。「貸金業法」や「金融商品取引法」などによる法規制を受ける点は押さえておこう。例えば「OwnersBook(オーナーズブック)」「SBIソーシャルレンディング」「CROWD CREDIT(クラウドクレジット)」などが有名なプラットフォーマーだ。
4.ファンド型
ファンド型クラウドファンディングは、起案者が提案したビジネスに対して出資を行う。出資者はビジネス(プロジェクト)が成功し収益を上げれば出資額に応じた金銭的なリターンを得ることができる。利息を受け取るのではないことが融資型とは異なる点だ。ファンド型は、ファンドを運営する事業者に対して出資者が匿名組合契約を結びクラウドファンディングを行う。
プラットフォーマーとしては「セキュリテ」「Funds」などが有名だ。
5.株式投資型
一般的に株式投資は、証券会社を介して上場会社の株式へ投資を行う。しかし株式型クラウドファンディングは、クラウドファンディングサービスを介して未上場企業が発行する株式や新株予約権などへ投資を行う方法だ。金銭的なリターンは、業績に基づく出資額に応じた配当、IPO(Initial Public Offering:株式上場)やM&Aによる株式の売却益などとなる。
プラットフォーマーとしては「FUNDINNO(ファンディーノ)」「CAMPFIRE Angels」「ユニコーン」などが有名だ。
資金調達や投資が目的なら株式投資型
プロジェクトを自社のビジネスに利用するのではなく資金調達や投資を目的とする場合は、株式投資型のクラウドファンディングがおすすめである。なぜなら上場企業のような比較的高額な株式ではなく未上場企業の株式に対して少額から投資できるからだ。つまり少ない資金で大きなリターンが期待できることが株式投資型クラウドファンディングのメリットの一つである。
実績のあるプラットフォーマーを利用する
株式投資型のプラットフォーマーとして「FUNDINNO」「CAMPFIRE Angels」「ユニコーン」などを紹介したがそれぞれのプラットフォーマーが独自の特徴をもっている。例えばFUNDINNOは、2015年に日本ではじめて株式投資型クラウドファンディングを開始したパイオニアで国内取引量はトップクラス。2020年6月末時点で累計契約金額が約33億円、登録ユーザー数は3万人を突破した。
CAMPFIRE Angelsは、国内2社目の株式投資型プラットフォーマーであったGoAngelを2019年に大手プラットフォーマーのCAMPFIREが買収して誕生。こちらも豊富な実績が特徴のプラットフォーマーだ。ユニコーンはスタートアップ企業への投資を専門に行っている。起業家や企業へのフルサポートなどの実績が特徴だ。
株式投資型クラウドファンディングにかかるコスト
株式投資型クラウドファンディングへ投資する場合のコストは、基本的に出資金と口座への振込手数料だ。例えば「CAMPFIRE Angels」の場合、出資する企業を決め投資金額を選択したあと出資金を指定口座に振り込む。出資額は、例えばCAMPFIRE AngelsやFUNDINNOであれば約10万円からユニコーンなら5万円から投資することが可能だ。
また株式投資型クラウドファンディングは、金融商品取引法で1社あたりの投資額が1年間で50万円までと定められている。
クラウドファンディングごとのリスク
メリットの多いクラウドファンディングだがデメリットや金融商品ならではのリスクもある。メリットとデメリットを見比べて自らのビジネスにぴったり合った特性のものを選ぼう。以下、主なクラウドファンディングの特徴的なリスクを列挙しておく。
購入型のリスク
購入型は、プロジェクトが成立しない場合に大きなリスクとなる。特にAll in 型の場合は、目標額が達成されなくても支援者へのリターンもプラットフォーマーへの手数料も支払わなくてはならない。またAll or Nothing 型であっても成立・非成立にかかわらずさまざまな管理コスト(プロジェクトページに掲示する画像や動画の作成や成立した場合のリターンの送料やサービス提供にかかるコスト)が必要だ。
またクラウドファンディングのプロジェクトは何度でも立ち上げることができるが不成立のプロジェクトが多いと支援者からの信頼を失ってしまうこともリスクとして挙げておきたい。
融資型のリスク
融資型のリスクは、いわゆる「貸し倒れ」だ。融資型は通常の金融商品に比べて高利回りであることが特徴である。しかしその分倒産リスクもあると覚えておきたい。
ファンド型のリスク
売上や利益に応じて分配金が変動するため、出資したビジネスの成功・非成功が収益に大きく影響する。最悪の場合は、元本割れとなることもありえるだろう。
株式投資型のリスク
未上場株式は、IPOできなかった場合に「収益性が低くなる」「流動性や換金性が悪く売りたいときに売ることができない」といったリスクがある。
資金集めには事業戦略が鍵
投資型のクラウドファンディングは別として購入型で商品開発のようなプロジェクトを立ち上げる場合は、支援者の興味をひくような商品でなければ出資は集まらない。また商品が魅力的であってもプロジェクトの事業戦略がお粗末であれば出資者は自分の資金を投入する気にはならないだろう。クラウドファンディングでは通常の金融機関のように担保を求められるようなことはない。
しかし信頼される事業計画、説得力のある事業戦略がプロジェクト成立の鍵となることは確かだ。
アイディアを駆使して資金調達をしよう
クラウドファンディングの魅力は、中小企業や個人事業主など既存の金融機関からの融資を受けにくい企業でもアイディア次第で資金調達できることにある。投資型(融資型、ファンド型、株式投資型)は少ない資金で投資を行いたい人向け、ビジネスとして購入型を利用するなら「アイディアはあるが資金がない」といった企業が利用するべき金融システムと言えるだろう。
文・長田小猛(ダリコーポレーション ライター)