電子帳簿保存法により、ペーパーレス化を促進し、電子帳簿を導入する企業が増えてきている。しかし、この電子帳簿保存法を詳しく知っているという人は少ないだろう。今回は電子帳簿保存法の基礎知識とどのようにすれば電子帳簿を導入できるかについて、具体的に解説していこう。

目次

  1. 電子帳簿保存法とは?
    1. 法律改正の経緯
  2. 電子帳簿保存法で可能な保存方法は?
    1. 対象となる帳簿・書類
    2. 保存方法1.紙の場合はスキャナで読み取って保存
    3. 保存方法2.データの場合
  3. 国税関係帳簿の保存には申請が必要!申請期限は?
  4. 電子帳簿保存法を適用するメリット・デメリット
  5. 電子帳簿保存法とe-文書法の違い
  6. 電子帳簿保存法は申請のメリットが大きい!

電子帳簿保存法とは?

会計
(画像=studio-east/stock.adobe.com)

電子帳簿保存法とは、国税関係の書類の一部または全部を電子データにより保存することを認める法律だ。これまで紙でしか保存できなかった税金関係の書類も、この法律によってコンピュータで管理することができるようになった。

実は電子帳簿保存法は、平成10年度(1998年)税制改正の一環として創設されたもので、歴史は長い。適正公平な課税を確保しつつも、納税する人の帳簿保存に係る負担を軽減する狙いがある。

背景には1996年頃から急速に普及したインターネットの存在が大きい。インターネットの誕生によりペーパーレス化が進展。会計処理の分野でもコンピュータを使用した帳簿書類の作成が普及してきたため、帳簿書類の電子データによる保存を認めるような働きかけが続いてきたのだ。

法律改正の経緯

次に電子帳簿保存法に大きな改正が入ったのは平成28年度、2016年だ。スマートフォンのカメラ性能が飛躍的にアップしていたが、平成28年度(2016年)以前は、スマートフォンによる撮影データは電子データとして認められていなかった。しかし、利用者の利便性を図る観点からスマートフォンによる撮影データも認められるようになり、原本の保存も必要なくなった。

令和2年度(2020年)税制改正においても、電子帳簿保存法に一部改正がなされている改正点は、電子データを受け取った場合の「タイムスタンプ付与」についてだ。タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在していたことを証明するもので、タイムスタンプを付与することで電子データが改ざんされていないことを証明することができる。

以前の法律では発行者のタイムスタンプがあっても、受取側でもタイムスタンプが必要であった。改正後の法律では、発行者のタイムスタンプがあれば受取側ではタイムスタンプは不要となり、受取側の負担が減少したことになる。ただし、発行側のタイムスタンプがなければ、受取側でタイムスタンプが必要であるのは、改正前と変更がないことは注意しておこう。

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電子帳簿保存法で可能な保存方法は?

電子帳簿保存法で可能な保存方法は、紙データのスキャナ保存と電子保存の2つに分類される。対象となる帳簿・書類についてそれぞれ違いが生じているので、具体的に見ていこう。

対象となる帳簿・書類

電子帳簿保存法の対象となる帳簿・書類は、帳簿、決算関係書類、契約書などのその他の書類に分類することができる。それぞれの分類における具体的な帳簿・書類名は以下のとおりである。

帳簿・書類名詳細
1帳簿・仕訳帳
・総勘定元帳
・現金出納帳
・売掛金元帳
・買掛金元帳
・売上帳
・仕入帳
など
2決算関連書類・貸借対照表
・損益計算書
・棚卸実地表
など
3その他の書類・契約書
・領収書
・見積書、納品書、注文書、検収書、納品書
など

また、電子化帳簿保存法の適用を受けるためには、以下の要件を満たした状態になっていなければならない。

●電子化帳簿保存法の適用要件
・記載事項の定性、削除を行った場合の事実内容を確認できる
・通常の業務処理機関を経過した後の入力履歴を確認できる
・電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間に、相互にその関連性を確認できる
・システム関連書類等を備え付ける
・保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及び操作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で出力できる
・取引年月日、勘定科目、取引金額、その他の帳簿種類に応じた主要な記録項目により検索できる
・日付または金額の範囲指定により検索できる
・二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できる

保存方法1.紙の場合はスキャナで読み取って保存

税法で保存が義務付けられている書類を一定の要件のもとで、紙のままでなくスキャナで読み取った電子データの形で保存することができる。

対象となる書類は、取引相手から受け取った書類と自身が作成し取引相手に交付する書類の写しである。具体的にはその他の書類に分類される契約書、見積書、注文書、納品書、請求書、領収書などが該当する。

ここで、電子データとして保存するためのスキャナは何でも良いわけではなく一定の要件が定められているので注意されたい。

●電子化帳簿保存法のスキャナ要件

・解像度200dpi(A4サイズで約387万画素相当以上)による読み取りが可能であること
・カラー画像による読み取りができるものであること(ただし、資金や物の流れに直結しない一般書類を保存する場合はグレースケールも認められている)

解像度200dpi、カラー画像の条件を満たすものとして、スマホやデジカメも該当するが、平成28年度改正によってスマホ・デジカメも要件を満たしているので安心して使用することができる。

保存方法2.データの場合

税法で義務付けられている帳簿書類は一定の要件のもと、紙のプリントアウトを必要とせず、作成した電子データのまま保存することができる。

対象となる書類は、「自己がコンピュータを使用して」作成する帳簿、決算関連書類、その他の書類である。帳簿であれば、前述しているとおり仕訳帳、総勘定元帳、経費帳、売上帳などを電子データのままにしておくことができる。特に総勘定元帳など、紙でプリントアウトする場合に数百枚以上になってしまう時などは、データでの保存は必須である。

また、自己が取引先に渡す書類の写し(見積書、請求書、納品書、領収書など)もデータ保存のままで良いことも注目したい。現在、様々な会計クラウドサービス等で見積書や請求書の作成が可能である。電子データで作成した書類をわざわざプリントアウトせずに済ませられるのは利用者の利便性に大きく貢献している。

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国税関係帳簿の保存には申請が必要!申請期限は?

電子帳簿保存法の適用を受けるためには、税務署長の事前承認が必要である。申請に必要な書類は「承認申請書」と「添付書類」である。

承認申請書は、電子データによる保存、スキャナ保存、マイクロフィルムによる保存のそれぞれにおいて申請書の種類が異なっていることに留意が必要である。申請書一式は国税庁のホームページからそれぞれダウンロードすることができるので参照されたい。

参考:申請書等様式(国税庁)

添付書類とは、使用している会計システムの概要が記載してある書類や、会計システム導入に関する事務手続きの概要が分かる資料などである。承認申請書に沿った正しい添付書類を用意しなければならない。

帳簿の場合、電子データによる保存を開始する3カ月前の日が申請期限となる。ただし、原則として課税期間の途中から電子帳簿保存法の適用を受けることはできない。例えば、決算日が3月31日である場合、4月1日から新しい事業年度となるので、前年の12月31日が申請の期限となる。

書類の場合はスマートフォンのカメラによる保存などを開始する日の3カ月前の申請が必要となる。例えば、1月1日から画像データ等による保存を開始したい場合は、前年の9月30日までの申請が必須だ。

電子帳簿保存法を適用するメリット・デメリット

電子帳簿保存法を適用するメリットは、以下のとおりである。

・紙の書類を減らすことができるので、事務所スペースを節約することができる
・紙やインクなどの資源節約につながり、環境問題へ配慮している
・データであれば検索機能が使用できるため、書類を探す時間が省ける

帳簿や決算書類などを電子化することによるメリット大きい一方で、当然に以下に挙げるようなデメリットは考慮しなければならない。

・導入のための費用が必要
・すべての書類をなくせるわけではない
・タイムスタンプ付与など電子化の要件を満たす必要がある
・申請手続が煩雑である
・システムのダウンや、紛失時の損害が甚大となる

電子帳簿保存法により、将来の作業効率アップが見込まれるものの、導入費用や電子化要件の厳格さなどハードルがあるのが実情である。それぞれの企業にて、電子帳簿保存法の適用のメリットとデメリットを慎重に比較検討のうえ、検討すべきかどうかを決定する必要がある。

自社のみでの導入が難しい場合は、会計事務所や税理士法人などが電子化帳簿保存法に対応するための支援メニューを用意していることがあるので、問い合わせしてみると良いだろう。

電子帳簿保存法とe-文書法の違い

e-文書法とは、2005年に施行された、

・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律
・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

の2つの法律の総称である。

e-文書法の対象となる書類は、保険業法や医師法、会社法、法人税法など約250本の法律に対して適用されており、範囲が広いことが特徴である。

例えば、電子帳簿保存法に基づく国税関係書類、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに基づく紙カルテや紹介状など、建築業法・建築士法に基づく建築図面等が電子データとして保存できるようになった。

電子帳簿保存法は税務に関連するものであるが、e-文書法は税務だけでなく幅広い法律に影響しているという点で大きな違いが生じている。どちらも同じような言葉であるため、混同しないようにしたい。

電子帳簿保存法は申請のメリットが大きい!

会社が電子帳簿保存法を適用することで、事務手続や情報の検索が効率化できるなどメリットは大きい。一方で、導入するためには会計システムを中心に導入コストがかかってしまう。また、今までの紙ベースの事務処理から大きな変化となるので、従業員にとっての負担も大きなものとなってしまう。

今後、IT化はますます進むものと考えられる。起業したばかりの際は、はじめから電子帳簿保存法を前提としたオペレーションを設計しておくと良いだろう。電子帳簿保存法のメリットとデメリットをよく検討したうえで、積極的に電子帳簿保存法の申請をすることをお勧めしたい。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部