中小企業の資金調達の方法には、融資・補助金・助成金・株式や社債の発行、そのほかクラウドファンディングなどがある。その中でも特に融資・補助金・助成金はコロナ禍の影響を踏まえた制度の改正が進んでいる。今回は、中小企業が検討すべき資金調達方法について解説する。

目次

  1. 中小企業の資金調達方法:融資
    1. 日本政策金融公庫
    2. 商工組合中央金庫
    3. 信用保証付き融資
    4. 利子補給制度
    5. 無利子への借り換え
  2. 中小企業の資金調達方法:補助金
    1. ものづくり補助金、IT補助金、持続化補助金の拡充
    2. 家賃支援給付金
    3. 自治体の支援事業
  3. 中小企業の資金調達方法:助成金
    1. 雇用調整助成金
    2. 小学校休業等対応助成金
  4. 資金調達は早めに検討を

中小企業の資金調達方法:融資

コロナ禍の今、中小企業がまず検討すべき資金調達方法は?
(画像=EtiAmmos/stock.adobe.com)

コロナ禍において通常よりも有利な条件で受けられる融資には、下記の機関による融資が挙げられる。

  • 日本政策金融公庫
  • 商工組合中央金庫
  • 民間金融機関

特に日本政策金融公庫、商工組合中央金庫(商工中金)の一部の融資については、7月から融資限度額と利下げ限度額が引き上げられ、調達できる金額がさらに多くなっている。

日本政策金融公庫

  • 新型コロナウイルス感染症特別貸付 一定の売上減少要件を満たすことで受けられる日本政策金融公庫の融資である。既存の融資制度の残高にかかわらず、別枠で受けることが可能だ。

【融資限度額】

  • 国民生活事業(小規模な企業向け):8,000万円
  • 中小企業事業:6億円

【返済期間】

  • 設備資金 20年以内(うち据置期間5年以内)
  • 運転資金 15年以内(うち据置期間5年以内)

【売上減少要件】

  • 最近1ヵ月の売上高が前年または前々年同期比で5%以上減少
  • 業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合などは、別途比較対象あり

(参考)「新型コロナウイルス感染症特別貸付」(※2020年8月時点)

  • 新型コロナウイルス対策マル経融資 通常時でも申し込めるマル経融資に、コロナ特別枠が上乗せされた融資である。小規模事業者を対象とし、無担保・無保証で申し込める融資であるが、商工会議所、商工会または都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受ける等の要件を満たさなければならない。

【融資限度額】

  • マル経融資の通常枠(限度額2,000万円)+1,000万円

【返済期間】

  • 設備資金10年以内(うち据置期間4年以内))
  • 運転資金 7年以内(うち据置期間3年以内)

【売上減少要件】

  • 最近1ヵ月の売上高が前年または前々年同期比で5%以上減少

(参考)「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」(※2020年8月時点)

  • 経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付) 売上減少時などに申し込める既存の融資であるが、コロナ禍によって申し込み要件が緩和されている。

【融資限度額】

  • 国民生活事業:4,800万円
  • 中小企業事業:7.2億円

【返済期間】
設備資金 15年以内(うち据置期間3年以内)
運転資金 8年以内(うち据置期間3年以内)

【売上減少要件】
特になし。通常時の「売上高が5%以上減少」にかかわらず、今後の影響が見込まれる場合は対象となる。

(参考)「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」(※2020年8月時点)

商工組合中央金庫

  • 危機対応融資 商工中金による融資で、対象は商工組合の組合員である。組合に加入していないが今回の融資を申し込みたい場合は、借入申し込み時に相談するとよいだろう。

【融資限度額】
6億円(据置期間:5年以内)

【返済期間】
設備資金:20年以内(据置5年以内)
運転資金:15年以内(据置5年以内)

【売上減少要件】
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と同じ。

(参考)商工中金ホームページ(※2020年8月時点)

信用保証付き融資

民間金融機関による信用保証付き融資である。融資を申し込む中小企業等が信用保証協会から保証を受けることによって、信用力の低い企業でも融資を実行できるようにしたものだ。その代わり、返済中は信用保証協会に保証料を支払う必要がある。

  • セーフティネット保証4号・5号 4号は突発的災害(自然災害等)を受けた地域に対する融資で、指定地域で1年以上継続して事業を行っている場合が対象となる。5号とは業況の悪化している業種に対する融資を指す。コロナ禍については現在、全都道府県が4号、全業種が5号の指定を受けている。

【融資限度額】
一般保証枠(限度額2.8億円)+セーフティネット保証枠(限度額2.8億円)
最大5.6億円の融資枠となる。

【売上減少要件】

  • 4号:最近1ヵ月の売上高等が前年同月比で20%以上減少
  • 5号:最近3ヵ月の売上高等が前年同月比で5%以上減少

  • 危機関連保証 セーフティネット保証の別枠として、最大2.8億円の融資を行うものである。ただし融資限度額はセーフティネット保証枠と共有となるため、一般保証枠と合わせて最大5.6億円であることは変わらない。

【売上減少要件】
最近1ヵ月の売上高等が前年同月比15%以上減少

利子補給制度

  • 日本政策金融公庫の融資 新型コロナウイルス感染症特別貸付、新型コロナウイルス対策マル経融資、危機対応融資など一定の融資は、利子補給制度によって実質無利子化の対象となる。そもそもこれらの融資は、一定の融資額にかかる利子に対して、当初3年間はマイナス0.9%の利下げが適用される。4年目以降から通常の金利に戻る仕組みだ。

利子補給制度とは、この利下げが適用される3年間の金利に対し、さらなる売上減少要件を満たす企業には利子相当額を返還するという制度である。後から利子相当額を補給する制度であるため、一旦は支払いが必要になる点に注意が必要だ。

【利下げが適用される融資額】

  • 国民生活事業:4,000万円まで
  • 中小企業事業:2億円まで(危機対応融資もこちら)

【売上減少要件】
借入申し込み時点の「最近1ヵ月」または「その後2ヵ月を含む3ヵ月間のうちいずれか1ヵ月」と、前年または前々年同期比の売上高の減少率が、以下の要件を満たすことが条件となっている。

  • 小規模事業者(法人):15%以上減少
  • 中小企業者(上記を除く):20%以上減少
  • 小規模事業者にあたる個人事業主は、要件なし

  • 信用保証付き融資 セーフティネット4号・5号、危機関連保証による融資を受ける中小企業等についても、保証料や金利をゼロか2分の1に減免する制度が導入されている。自治体の制度融資を活用して導入された補助制度だ。利子補給が行われるのは当初3年間のみであるが、保証料は全融資期間を通じて補助の対象となる。

【適用される融資額】
3,000万円

【売上減少要件・減免額】


 
売上高5%減少 売上高15%減少
保証料 金利 保証料・金利
個人事業主
(小規模のみ)
ゼロ ゼロ ゼロ
小・中規模事業
(上記除く)
1/2減

(参考)経済産業省ホームページ(※2020年5月5日時点)

無利子への借り換え

利子補給制度の対象となる一定の融資について既往債務の借り換えを行った場合、借り換えた債務も実質無利子化の対象となる。この機にうまく活用できれば、以後3年分の借入返済が楽になるはずだ。ただし、新規融資と既往債務の借り換えの合計で限度額が判定されるため、各融資制度の限度額に注意しよう。

中小企業の資金調達方法:補助金

中小企業の資金調達方法は、融資だけではない。ここからは補助金について解説する。

ものづくり補助金、IT補助金、持続化補助金の拡充

  • ものづくり補助金
  • IT補助金
  • 持続化補助金

上記3つの補助金は、小規模企業者や中小企業者のさまざまな取り組みに使えるものだ。現在、申請する補助対象経費の6分の1以上がコロナ禍を乗り越えるための前向きな投資である場合、補助率等が拡充された特別枠を申請することができる。

コロナ禍を乗り越えるための前向きな投資とは、下記の3つに分類される。

  • 類型A:サプライチェーンの毀損への対応
  • 類型B:非対面型ビジネスモデルへの転換
  • 類型C:テレワーク環境の整備

それぞれ公募期間や内容が異なるため、まずはどの補助金を申請するかを決め、そこから申請スケジュールを立てる必要がある。さらに、業種別ガイドラインに沿った感染防止対策を行った場合(たとえばマスク、消毒、飛沫防止対策、換気等)、その対策費用について「事業再開枠」という別枠の補助金も用意されている。

家賃支援給付金

資本金10億円未満の中堅企業、中小企業、小規模事業者が支払う事業用の建物や土地の賃料の一部を補助するものだ。東京都の申請も、8月17日から開始されている。

【給付金額】

  • 法人は最大600万円
  • 個人事業主は最大300万円

【売上減少要件】
2020年5月~2020年12月までの間の売上高が、次のいずれかに当てはまる。

  • いずれか1ヵ月の売上が前年同月比で50%以上減少
  • 連続する3ヵ月の売上の合計が前年同期比で30%以上減少

(参考)家賃支援給付金ホームページ(※2020年8月28日時点)

自治体の支援事業

自治体独自の補助金もチェックしておこう。たとえば、東京都の「新型コロナウイルス感染症緊急対策設備投資支援事業」では、感染症対策関連商品の製造に必要となる最新の機械設備の購入費を、5分の4以内で助成している。インターネットで「(自治体名) コロナ 補助金」などで検索すると詳しい情報を見つけることができるだろう。

(参考)東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ(※2020/05/25 時点)

中小企業の資金調達方法:助成金

ここでは、厚生労働省が企業に対して交付する助成金について紹介する。

雇用調整助成金

企業が一時的に従業員を休業等させた場合に支払う「休業手当等」の一部を助成するものだ。徐々に要件の緩和や助成率の拡充が行われ、現在は、6月12日から1日あたりの上限が1人1万5,000円に引き上げられた。さらに、解雇等を伴わずに雇用を維持した中小企業については「休業手当等」の10分の10まで助成されるようになった。(2020年4月1日~9月30日まで)

すでに申請済みの企業にも、4月1日にさかのぼって適用され、解雇等を伴う場合であっても、中小企業は5分の4(大企業は2分の3)が助成される。

小学校休業等対応助成金

子どもの世話のために休業が必要となった労働者に対して、2月27日~9月30日の間に有給休暇を取得させた企業に対する助成である。ただし、通常の年次有給休暇とは別に取得させた休暇でなければならない。休暇中に支払った賃金相当額の10分の10が助成され、4月以降は、上限額が1人1日あたり1万5,000円に引き上げられている。

資金調達は早めに検討を

ここまで、中小企業の資金調達方法について解説してきた。コロナ禍の影響で、資金繰りに悩んでいる経営者も多いだろう。そうした状況を踏まえ、通常よりも有利な条件で融資や補助金、助成金などを受けることができる制度が整いつつある。

感染拡大について予断を許さない状況が続くが、資金繰りに不安を感じるときは先手を打ち、早めに融資等を検討しよう。

※記事中の法律・税制などに関する記載は2020年8月時点のものであり、現在は法律等が改正されている場合が考えられますのでご注意ください。

文・中村太郎(税理士・税理士事務所所長)