「新規事業を始めるにあたって、収支計画書の書き方が分からない」「必ず作るべきなのか?」と疑問に思う人も多いだろう。 この記事では収支計画書を作成するメリットや基本的な書き方を分かりやすく紹介する。作成すべきタイミングについても解説しているから、参考にしてみてほしい。

収支計画書とは?

新規事業の立ち上げ前に知っておきたい、収支計画書を作成するメリットと作り方
(画像=Mongta Studio/Shutterstock.com)

収支計画書(予想損益計算書)とは、事業や会社に関するお金の「収入」と「支出」を詳細に予測する書類だ。収支計画書とよく間違われるものに「損益計算書」がある。まずはこれらの違いを確実に理解しておこう。

収支計画書は未来の見通し、損益計算書は過去の振り返り

収支計画書と損益計算書はよく混同されがちだが、下記のように基本的な前提や目的が異なっている。

  • 損益計算書:過去のお金の動きや実績を振り返る書類
  • 収支計画書:未来の事業やお金の動きを見積もる書類

損益計算書は「既に入ってきている収入と、既に出ていった支出」を詳細に記録する、いわば事業における過去のお金の動きや実績を振り返るための書類を指す。対して収支計画書は「これからの収入と支出」を予測する。いわば未来の事業やお金の動きを軸にして実績を見積もるための書類なのだ。

また収益計画書は、ただ収支を予測するだけではない。予測に沿って事業を運営するための指針となる「計画」を含んでいることも特徴だといえる。策定した計画を、実際の経営に反映させるための重要な資料にもなっているのだ。

収支計画書はいつ作るべきか?作らなくてもいいのか

では収支計画書はいつ作ればいいのだろうか。必ず作らなければならないタイミングは、「会社や事業に対して融資を受けたい」ときだ。金融機関で融資を受けるときは収支計画書の提出を求められる。

当然のことだが、融資はまだ見ぬ将来の収益を見込んで行われる。金融機関の担当者は、融資の可否を検討するために収支計画書を精査することで、会社や経営者の能力を推し量り、事業の収益可能性を見極めるのだ。

ただ、仮に収支計画書の提出を求められることがないとしても「収支計画書を作っておくと事業を進めていく上で役に立つ」タイミングがある。まずは起業前であり、新規事業であればスタート前だ。

自己資金だけで事業を始めるのであれば、誰かに収支計画書を求められることはない。しかし、収支計画書を作っていく中で、下記のような事業に必要なデータ分析や計画策定を進められるのだ。

  • 起業にあたっての支出の洗い出し
  • 経営を安定させるために必要な利益
  • 事業が安定するまでに必要な期間
  • 商品やサービスの価格策定

提出することがないからといって大雑把に事業をはじめるよりも、これらの計画を立てて事業を始めたほうが成功の確率も高まるだろう。

事業計画は3年先まで作って見通しを立てるべし

事業の先を見通す収支計画書だが、どれくらい先まで見通しておけばいいのか。1年先では大きな目標を立てづらいし、5年先、10年先まで細かい計画を立てておいても、社会情勢などが変化して実態に沿わない計画になってしまいかねない。

一般的には、ある程度見通しが利きやすい「3年先」までが、収支計画をはじめとする経営計画をあらかじめ立てておくのに適した期間といわれている。3年後に到達したい目標を打ち立てゴールを設定することにより、逆算する形で1年目、2年目にやるべきことも見えてくるはずだ。

もちろんたった3年であっても計画通りにいかないことは出てくるだろう。そのためにも計画は立てっぱなしにしてはいけない。3年後に初めて振り返るのではなく、定期的に計画と実績の差分を検討する機会も設けておきたい。

収支計画書の基本的な作り方

続いて収支計画書の作り方を見ていこう。まずは収支計画書に書くべき項目をしっかり押させておくべきだ。この項目をもとに事業計画を立てていこう。

収支計画書の主な項目

ここでは日本政策金融公庫のWebサイトで提供されている収支計画書の書式から、主な項目をピックアップして説明する。

・売上高
飲食業であれば「客単価×席数×回転数」、製造業であれば「設備の生産能力×設備数」など、その業種の特性に合わせた方法で算出する。算出にあたっては日本政策金融公庫が提供している資料が参考になるだろう。

売上高を甘く見積もると、早々に計画と実態がズレることになる。また融資を受ける場合は審査結果にも影響しかねないので「目標ではなく予測」であることを念頭に置いて、慎重に設定しよう。

・売上原価(仕入高)
「原価」と聞くと、「モノ自体の価格」と考えがちだが、実際の原価には素材などの仕入れ価格だけでなく、外注費や人件費も含まれている。

売上原価の算出にあたっては毎月の費用を個々に加減乗除するのではなく、予想される原価から一定の「原価率」を設けて算出するのが一般的だ。

・経費
経費には下記のようなものが当てはまる。 人件費(個人事業主の場合、事業主の分は除く) 家賃 支払利息(借入金×年利率÷12ヵ月で算出する)

後述する「利益」を算出するために、経費の合計も算出しておく。

・利益
「売上高-売上原価-経費(合計)」で算出する。創業当初はマイナスになることもあるが、どのくらいの期間でプラスへ転じられるかも分析しておきたい。

・借入金返済額
公庫や民間金融機関からの借入金返済額の元金を記入する。返済がない場合は0とする。

ここまでの項目は数字(金額)のみなので、月ごとに記入できる図表にしておこう。

・売上高、売上原価、経費の算出根拠
計算式や費用内訳などを細かく記入する。融資を受けるための収支計画書であれば必ず、そうでなくてもできる限り創業計画書や事業計画書との齟齬がないようにまとめる。

・売上高達成に向けた具体的な取り組み
営業活動、人材育成、設備投資など「どのようにして売り上げを上げていくか」という取り組みの内容と、それぞれの実施時期を記入する。

・計画した売上高を下回った場合の資金繰り・資金調達方法
融資を受けようとしている会社なのだから、事業用の余分な資金はないということになっている。ここには、事業用以外の預金や資産などを記入するのが一般的だ。

ここまでは「計画通り進んでいく」ことを想定し一貫した内容を打ち立ててきたが、この項目だけは「計画通りいかなかった」ことを想定する。ここにどれだけの備えができているかは、融資の可否にも影響してくるだろう。

商品やサービスの価格を決め、支出や収入の予測を立てる

先ほど紹介した収益計画書の項目「売上高」や「原価率」を計算するためには、まず商品やサービスの価格を決める必要がある。価格は自由に決めることができるが、目標売上高を達成できるかどうかの重要な要素でもある。

同業他社と比べて割高な価格であれば、商品やサービスにも付加価値がなければ厳しいだろう。安価であれば売りやすいが、仕入れや人件費などを工夫して利益を確保する必要があるし、過当競争に巻き込まれるリスクも出てくるのだ。

価格を決める方法は2つある。「価格から先に決める方法」と「支出や収入から決める方法」だ。どちらもメリット・デメリットがあるので下記にまとめておく。

・価格から先に決める
市場や同業他社の動向などを分析してまず価格を決め、その価格で十分な利益を出せるように原価率を設定する。設定した原価率に収まるよう、経費の各項目の予算を立て、予算通りに収められるようにしていく。

仕入れ価格を抑える工夫をする、人件費であればアルバイトの時給や人数を調整する、事務所や店舗の物件が未定であれば予算内の家賃で探す、といったことが出てくるし、難しい場合は価格で調整するしかないこともある。

・支出や収入から決める方法
事業にかかる経費や必要な売上高、予想される販売数などをまず算出し、その売上高を達成できる価格を算出する。ただし、算出した価格が顧客にとって妥当と感じられるものでなければ、販売の機会を逃しかねないので、調整が必要なこともあるだろう。

収支計画書の作成後は多くの人に見てもらい、ブラッシュアップを

ここまで見てきたように、収支計画書に書き込まれる数字にはそれぞれ根拠があることが望ましく、冷静かつ客観的な分析が求められる。起業や新規事業の立ち上げに意気を上げる当事者の熱意はもちろん大切だが、同様に外部の視点も重視したい。

収支計画書は早い段階でひとまず仕上げ、できれば起業家仲間に限らず士業やマーケティング経験者など別の視点をもって数字に接することができる人に見てもらったほうがいい。意見をもらってブラッシュアップしていくことをおすすめする。

まずは収支計画書を作成して事業について見直そう

新しい会社を立ち上げよう、新しい事業を立ち上げようというからには、将来に夢を抱き「熱意があれば多少の苦境も何とかなる」と考えてしまうかもしれない。

それももちろん重要なことではあるのだが、ひとたび腰を据えて収支計画書を作ってみると、走りだす前に一度冷静になり、会社や事業に本当に必要な物事について、改めて考えることができるだろう。

文・ライトアップ