大企業と中小企業を分けて考えることは多いが、以外と知られていないのがそれらの「定義」だ。実は、大企業と中小企業にはいくつかの区分がある。それぞれの違いを正しく理解し、その上で大企業と中小企業のメリット・デメリットを詳しく解説していく。また、上場株式には大型株・中型株・小型株がある。将来IPOを考えているなら、それらの違いについても知っておきたい。

目次

  1. 中小企業の定義は業種によって異なる?製造業は資本金3億円以下
  2. 法人税法、租税特別措置法における中小企業は1億円以下
  3. 法人企業統計における中小企業は資本金1億円以下
  4. 日本の中小企業の実態は?
  5. 中小企業と大企業の売上格差拡大
  6. 中小企業の優遇税制
  7. 中小企業のメリットとデメリット
  8. 大企業のメリットとデメリット
  9. IPOを目指すなら知って起きたい東証の大型株・中型株・小型株の違い
  10. 大企業と中小企業それぞれにメリット・デメリットがある

中小企業の定義は業種によって異なる?製造業は資本金3億円以下

中小企業と大企業の定義は?それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説
(画像=naka/stock.adobe.com)

中小企業基本法は、中小企業に関する施策について、その基本理念や基本方針、その他の基本となる事項を定めるとともに、国と地方公共団体の責務などを明らかにすることにより、中小企業に関する施策を総合的に推進し、国民経済の健全な発展と国民生活の向上を図ることを目的として公布されている。

中小企業基本法では「中小企業者の範囲」、さらに「小規模企業者の範囲」を規定している。その範囲は(資料1)のとおり、4つ区分にされた業種によって異なる。

たとえば製造業における中小企業者とは、「資本金が3億円以下、常時使用する従業員の数が300人以下のいずれかを満たす」企業を指す。

(資料1)

図表1
(出典:中小企業庁)

法人税法、租税特別措置法における中小企業は1億円以下

法人税法と租税特別措置法では、中小企業向けに優遇税制を設けている。優遇措置の種類によって、法人税法に規定される「中小法人」、租税特別措置法に規定される「中小企業者」がそれぞれ以下のように定義されている。

・法人税法の「中小法人」の主なものは、資本金が1億円以下の普通法人である。
・租税特別措置法の「中小企業者」の主なものは、資本金の額が1億円以下で、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人ある。

法人企業統計における中小企業は資本金1億円以下

企業活動の実態を見る統計に、財務省の「法人企業統計」がある。四半期ごとに営利法人1万6,000社を抽出して、調査を行う。調査結果は、政府の月例経済報告や「国民経済計算」の推計、民間シンクタンクのレポートなどにも用いられる。資本金の額別にデータを取れるので、中小企業庁のデータとしても用いられることが多い。

法人企業統計では企業を資本金の規模で分類しており、大企業は10億円以上、中堅企業は1億円以上10億円未満、中小企業を1,000万円以上1億円未満としている。

日本の中小企業の実態は?

中小企業庁の「2019年版中小企業白書」によると、企業数では、日本企業の約1万1,000社が大企業で全体の0.3%を占めている。中規模企業が約53万社で14.8%、小規模事業者が約304万8,000社で84.9%だ。つまり、日本企業の99.7%は中小企業なのである。

従業者数では、大企業が約1,459万人の31.2%、中規模企業が約2,176万人で46.5%、小規模事業者が約1,044万人で22.3%であり、中小企業に勤めている人は約70%だ。

付加価値額では、大企業が約120.5兆円で47.1%、中規模企業が約99.4兆円で38.9%、小規模事業者が約35.7兆円で約53%である。つまり、企業数では0.3%に過ぎない大企業が、日本のGDPの約半分を生み出しているのだ。

中小企業と大企業の売上格差拡大

中小企業の「売上」の推移(資料2)を見てみよう。「売上」に注目するのは、「利益」よりも景況感に直結するからだ。なお、データは「法人企業統計調査季報」を参照した。

2007年から2011年までは、大企業より中小企業の利益がやや先行している。2008~2009年はリーマショックの影響でどちらも売上が大きく落ちこむが、中小企業の売上動向は大企業よりも早く動く景気の先行指標であった。その振れ幅は、大企業よりも中小企業のほうが大きい。中小企業は景況感の影響をいち早く受け、影響の度合いも大きいと言える。

2011年の東日本大震災以降、中小企業の「売上」のトレンドが変わった。大企業の売上が回復しても、中小企業の売上は2013年まで長期低下傾向が続き、大企業と中小企業の売上の格差が大きくなったのである。2016年以降は中小企業も売上を戻すが、大企業との格差はなかなか解消しない。

元来中小企業は、日本の大手企業のサプライチェーンの役割を果たしていたが、リーマンショックや東日本大震災を経てその役割が海外にシフトしたため、このような現象が起こっているのだろう。

(資料2)

図表2

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中小企業の優遇税制

法人税法上の「中小法人等」には、軽減税率が適用される。1989年4月1日以降、普通法人の税率は23.20%である。資本金1億円以下の「中小法人」の法人税率は、所得金額800万円超の部分は23.20%だが、800万円以下の部分は15%に軽減されている。

加えて、繰越欠損金については翌年以降に全額を繰り越すことができる、交際費等の800万円を限度とした損金算入が認められるなど、有利な取扱いが適用される。

租税特別措置法上の「中小企業者」については、「中小企業投資促進税制」「商業等活性化税制」が適用される。小企業者等が機械などを取得した場合、中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却または税額控除、少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例などを利用できる。また、各種税額控除制度における税額控除限度額が優遇されている。

中小企業のメリットとデメリット

中小企業のメリット・デメリットを理解するには、求人情報のマイナビ社が行ったアンケートが参考になる。

【中小企業のメリット】
1位 人間関係
2位 仕事内容
3位 労働時間・休暇制度
4位 社風、企業文化
5位 スピード感

【中小企業のデメリット】
1位 給与(ボーナス・昇給を含む)
2位 会社の将来性や安定性
3位 福利厚生
3位 人間関係
5位 労働時間・休暇制度

大企業のメリットとデメリット

同様に、大企業のメリットとデメリットを見てみよう。

【大企業のメリット】
1位 福利厚生
2位 ネームバリューや社会的信用
3位 会社の将来性や安定性
4位 給与(ボーナス・昇給を含む)
5位 労働時間・休暇制度

【大企業のデメリット】
1位 人間関係
2位 社風、企業文化
3位 労働時間・休暇制度
4位 人事制度(評価・昇進・研修など)
5位 ネームバリューや社会的信用
5位 業務量

大企業、中小企業のメリット・デメリットを理解し、その環境を整える経営をすることで、社員のモチベーションの向上や有利な採用活動などにつながるだろう。

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IPOを目指すなら知って起きたい東証の大型株・中型株・小型株の違い

東京証券取引所(東証)では、上場株式を大型株・中型株・小型株に区分している。東証1部上場企業で、時価総額と流動性が高い上位100銘柄(TOPIX100の算出対象銘柄)を「大型株」、次いで上位400銘柄(TOPIX Mid400の算出対象銘柄)を「中型株」、大型株・中型株に含まれない全銘柄(TOPIX Smallの算出対象銘柄)を「小型株」としている。

2020年4月6日時点で、東証1部銘柄は2,168社ある。つまり、東証1部銘柄であっても上位500社以外の1,668社は、東証では小型株として扱われる。東証1部銘柄が、すべて大型株というわけではないのだ。

中小企業経営者の中には、IPOを目指している人もいるだろう。現在東証には、東証1部、東証2部、JASDAQ、東証マザーズという4つの市場がある。マザーズが成長企業向けのステップアップ市場、東証2部が中堅企業向けのステップアップ市場として位置づけられている。JASDAQには、一定の事業規模と実績を有する成長企業向けの「スタンダード」と、成長可能性に富む企業で構成される「グロース」がある。

マザーズ市場は上場要件が東証やJASDAQより緩和されており、ビジネスモデルが優れていれば赤字でも上場できる市場として知られている。

マザーズ上場の主な形式要件は、株主200人以上、時価総額10億円以上などで、利益の要件はない。東証2部は、株主800人以上、時価総額20億円以上、最近2年間の利益の額の総額が5億円以上もしくは時価総額が500億円以上である。JASDAQは、株主200人以上、最近1年間の利益の額が1億円以上もしくは時価総額50億円以上だ。

上場し東証1部へステップアップすることで企業の知名度は上がり、営業活動や採用活動がやりやすくなるというメリットがある。

マザーズやJASDAQに上場した後、東証1部にステップアップするための要件は、株主数2,200人以上、時価総額40億円以上、最近2年間の利益の額の総額が5億円以上もしくは時価総額が500億円以上である。IPOを目指すなら、この要件は意識しておきたいところだ。

大企業と中小企業それぞれにメリット・デメリットがある

大企業にも中小企業にも、それなりのメリット・デメリットがある。2019年、トヨタ自動車の豊田章男社長や経団連の中西宏明会長が「終身雇用の限界」を訴え始めた。「日本型雇用システム」は、見直しの時期と言えるだろう。自分がどのような働き方をしたいのか、どのような職場環境を望むのかなどを冷静に分析して、自分に理想のワークスタイルが大手企業と中小企業のどちらに合うのかを考える時が来たと言えそうだ。

文・平田和生(ストラテジスト)