売上高について日々確認している経営者でも、「一人当たりの売上高」を意識している方はそう多くない。一人当たりの売上高は、会社の生産性確認に役立つ指標であり経営改善のきっかけにもなり得る。今回は具体的な見方や活用法について見ていこう。

目次

  1. 一人当たりの売上高とは?見方や使い方
    1. 一人当たりの売上高の求め方
    2. 業種や経営政策によっても差が出る
  2. 一人当たりの売上高を上げるには?
  3. 一人当たりの売上高の推移や各業界平均
    1. 一人当たりの売上高の推移
    2. 企業規模による違い
    3. 業種による違い
  4. 一人当たりの売上高を上げる経営を考えよう

一人当たりの売上高とは?見方や使い方

売上高に一喜一憂する経営者は多いだろう。もちろん、売上高を伸ばしていくことは重要な経営課題だ。しかし、ここで忘れてはならないのは、その売上高を何人の従業員で上げているかだ。少ない従業員で多くの売上を上げるほど、労働生産性は高いといえる。従業員は重要な会社の資源だ。

「一人当たりの売上高」とは、従業員一人当たりが上げた売上高のことを指す。従業員をどれだけ活用できているかが、一人当たりの売上高でわかるのだ。

財務省の研究所である「財務総合政策研究所」の調査によれば、2018年の一人当たりの売上高は、全産業で平均3,564万円、製造業は4,378万円、非製造業は3,335万円となっている。ただし、後述のとおり一人当たりの売上高は、業種による違いが大きい。したがって、業種を超える比較には適さない。

一人当たりの売上高を経営に活用するためには、まず同業他社との比較が有効だ。特に、同規模の会社と比較してみることで、自社が従業員をどの程度有効に活用できているかを判断できる。

また、一人当たりの売上高は、自社の推移で見てみるのもよいだろう。年を経るにつれ高まっているのか、それとも下がっているのかを見ることで、経営改善につなげることができる。

一人当たりの売上高の求め方

一人当たりの売上高の求め方について見ていこう。計算法はシンプルで、「一人当たりの売上高 = 売上高 ÷ 従業員数」である。ここで、売上高は年間のものを使用する。したがって、従業員数も1年の平均数を用いる必要がある。1年の平均従業員数は、期首と期末の従業員数を足し合わせ2で割ることで概数が求められる。

従業員数は、原則として役員の数は含めない。ただし、派遣社員やパート・アルバイトについては含める必要がある。派遣社員が正社員と同じ時間数だけ働いているのであれば、従業員数1人としてカウントする。パート・アルバイトの場合には、全員の年間勤務時間数を足し合わせ、それを正社員の平均年間勤務時間数で割った数を従業員数としてカウントするのがよいだろう。

他社の売上高や従業員数は、中小企業の場合だと知るのが難しいケースが多い。ただし、上場企業の場合は、有価証券報告書に記載がある。売上高は「損益計算書」に、従業員数は「主要な経営指標等の推移」に明記されている。

業種や経営政策によっても差が出る

一人当たりの売上高は、業種や地域、会社の規模などにより差が出てくる。以下のグラフは、経済産業省が2007年に調査を行った、業種、企業規模および都道府県ごとの一人当たりの売上高だ。

【製造業】

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【卸売業】

卸売業

【小売業】

小売業

【飲食業】

飲食業

出典:経済産業省『商工業実態基本調査 2.従業員1人当たりの売上高』

一人当たりの売上高は全国・全企業規模平均で、製造業は3,124万円、卸売業は9,249万円、小売業は2,023万円、飲食業は562万円と大きな差がある。また、グラフを見れば、大企業と中小企業の違い、あるいは地域の違いによっても差があることがわかるだろう。

また、同じ業種であっても、経済政策の違いで差が出てくることもある。自動車メーカーの場合なら、一人当たりの売上高は、トヨタや日産、マツダ、スバルなどに比べてスズキは低いといわれている。これは、はじめの4社が高級車など高単価の車を扱っているのに対し、スズキの場合は軽自動車が主力であることによると考えられる。

※1 経済産業省『商工業実態基本調査 2.従業員1人当たりの売上高』

一人当たりの売上高を上げるには?

労働生産性を高め、一人当たりの売上高を上げるためには、さまざまな施策が考えられるだろう。単純にいえば、販売の数量を増やすことや、単価を引き上げること、あるいは商品の仕入原価を削減することなどが一人当たりの売上高を上げることにつながる。

ここで一つの例として、カレーハウス「CoCo壱番屋」を運営する株式会社壱番屋を見てみよう。株式会社壱番屋の一人当たりの売上高は、従業員数を倍増させた2017年度までは減少しているものの、その後は再び順調に増加している。

これは、株式会社壱番屋が直営店を増やさずに、フランチャイズ店を増やす戦略をとっていることが関係している。直営店を増やせば、その分従業員も増えるため、一人当たりの売上高は減少することになりかねない。しかし、フランチャイズ店ならば、店舗の従業員は会社の従業員としてカウントされない。

ただし、競争が激しい飲食業界でフランチャイズ店の経営を軌道に乗せるのは至難の業だといえるだろう。そこで株式会社壱番屋では、フランチャイズ店の店長には自社の正社員が就任する。店長候補には店舗経営ノウハウを徹底的に教育し、一定の経営能力を身につけたとみなされてはじめて店長に昇進する。

店長は自由な裁量をもち、フランチャイズ店を経営してリピーターを増やし、売上を増やしていく。CoCo壱番屋のフランチャイズ店は10店に1店しか潰れず、飲食業界では「驚異の生存率」といわれているそうだ。このようなビジネスモデルは、企業経営者にとっても参考になるのではないだろうか。

※2 東洋経済ONLINE『「ココイチ」FC加盟店が失敗しづらいカラクリ』

一人当たりの売上高の推移や各業界平均

一人当たりの売上高の推移や各業界平均を見ていこう。データはいずれも財務総合政策研究所の「法人企業統計調査」のものである。

法人企業統計調査は昭和23年(1948年)に開始された。さまざまな業種・規模の企業に全国の財務局・財務事務所などを通じて調査票を郵送し、自社で記入・返送してもらうという方法で調査を行っている。

調査の項目に、「売上高(当期末)」および「期中平均従業員数(当期末)」がある。以下の一人当たりの売上高は、そこから計算したものである。

一人当たりの売上高の推移

一人当たりの売上高の推移を見てみよう。下のグラフは、2001~2018年度までの一人当たりの売上高の推移を、全産業(金融保険業以外)と製造業、非製造業のそれぞれで見たものだ。

このグラフを見ると一人当たりの売上高は、2003年度までは全産業・製造業および非製造業で同じ3,600万円程度だったものが、2004年度から製造業が平均を上回るようになったことがわかる。リーマンショックの2008~2009年度で一時落ち込みを見せたものもすぐ回復し、その後も製造業が全産業平均を上回る状況が継続している。

企業規模による違い

一人当たりの売上高が企業規模によりどのように違うかを見てみよう。下のグラフは、2018年における資本金ごとの一人当たりの売上高を示している。

すべての規模の平均は3,564万円である。このグラフを見ると、企業規模が大きくなるほど、一人当たりの売上高も大きくなっていることがわかるだろう。ただし、これは必ずしも企業規模と一人当たりの売上高が直接関係することは意味しない。

次に示すとおり、一人当たりの売上高は業種による差が大きい。規模が小さな企業は一人当たりの売上高が低い業種に、規模が大きな企業は一人当たりの売上高が大きな業種に多いことも要因の一つと考えられる。

業種による違い

一人当たりの売上高の業種による違いを見ていこう。下の表は、一人当たりの売上高を36の業種について、高い順に並べたものである。参考のために売上高と期中平均従業員数も記載してある。

No 業 種 売上高【百万円】 期中平均従業員数【人】 一人当たりの売上高【百万円】
1 石油製品・石炭製品製造業 11,314,993 27,097 417
2 電気業 27,585,319 139,126 198
3 純粋持株会社 10414533 77538 134
4 ガス・熱供給・水道業 5,081,065 45,311 112
5 非鉄金属製造業 12,032,362 161,473 74
6 物品賃貸業 16,128,781 226,779 71
7 自動車・同附属品製造業 72,502,878 1,033,617 70
8 鉄鋼業 17,200,135 245,741 69
9 化学工業 42,805,862 646,642 66
10 鉱業、採石業、砂利採取業 2,558,930 39,772 64
11 卸売業・小売業 547,570,520 9,148,915 59
12 不動産業 46,536,349 839,390 55
13 情報通信機械器具製造業 33,273,272 684,246 48
14 電気機械器具製造業 31,795,250 721,522 44
15 パルプ・紙・紙加工品製造業 9,069,162 214,616 42
16 生産用機械器具製造業 26,883,481 648,610 41
17 業務用機械器具製造業 13,425,572 333,130 40
18 窯業・土石製品製造業 9,278,082 246,284 37
19 情報通信業 76,179,443 2,045,497 37
20 建設業 144,959,886 3,905,410 37
21 はん用機械器具製造業 7,463,647 204,027 36
22 食料品製造業 45,841,610 1,478,605 31
23 木材・木製品製造業 3,338,553 117,148 28
24 学術研究、専門・技術サービス業 49,771,214 1,754,429 28
25 印刷・同関連業 8,164,177 290,437 28
26 娯楽業 17,107,731 621,207 27
27 金属製品製造業 20,877,149 805,988 25
28 農林水産業 6,488,707 252,740 25
29 繊維工業 7,899,211 351,394 22
30 運輸業、郵便業 71,862,499 3,363,304 21
31 宿泊業 8,031,433 673,659 11
32 生活関連サービス業 17,389,017 1,742,464 9
33 教育、学習支援業 2,560,551 301,982 8
34 飲食サービス業 20,283,624 2,524,592 8
35 医療、福祉業 8,448,140 1,192,516 7
36 職業紹介・労働者派遣業 9,546,711 1,439,622 6

出典:財務総合政策研究所「法人企業統計調査」より作成

この表を見ると、まず一人当たりの売上高が高い業種に、石油や電気、ガスなどのエネルギー関係が並んでいることが見てとれる。次に来るのはさまざまな製造業だ。物品賃貸業や卸売・小売業、不動産業なども比較的高いところにある。

逆に低いのは、建設業、農林水産業、運輸・郵便業、そしてサービス業だ。中小企業に多いであろう飲食サービス業は、36位中34位となっている。飲食サービス業の約800万円と、トップの石油製品・石炭製品製造業の約4億円とでは、実に50倍の違いがある。一般に、設備産業は一人当たりの売上高が高く、労働集約型の業種は低くなる傾向があるといえる。

一人当たりの売上高を上げる経営を考えよう

一人当たりの売上高は、会社の労働生産性を判断する指標である。同業他社との比較や時系列上での推移を見ることにより、経営改善のヒントにできるだろう。

社員が生き生きと働くことにより高い生産性を上げることは、会社の理想ともいえる。一人当たりの売上高を高める経営を考えて、よりよい会社づくりにつなげていっていただければ幸いである。

文・高野俊一(ダリコーポレーション ライター)