労働基準法を守らなかったり、労働者の人権を無視したりする企業は、「ブラック企業」「ブラックな経営」などと呼ばれる。一方、それらとは反対の意味の「ホワイト経営」という言葉が一般的になりつつある。ホワイト経営を実践すると、従業員はもちろん企業自体にとってもメリットが大きい。

今回の記事では、「ホワイト経営」の意味やメリット、事例、ホワイト経営を実現する際のポイントなどを詳しく解説する。

鈴木 裕太
鈴木 裕太(すずき・ゆうた)
横浜国立大学在学中に中小企業診断士を取得(現在は休止中)。Webメディアの立ち上げ〜売却に携わり、SEO対策をはじめとしたWebマーケティングを幅広く経験。現在はビジネスの分野に特化したライター業と、他社のメディアサイトの立ち上げ支援を行っている。また、情報サイト”BizLabo”の運営も行っており、会社経営に役立つ知識・ノウハウを伝えることにも力を入れている(月間1.5万PV:2020年1月時点)。

目次

  1. ホワイト経営とは?
    1. ホワイト経営の意味
  2. ホワイト経営のメリット
  3. ホワイト経営を実践している企業3選
    1. 富士そば
    2. 佰食屋
    3. 未来工業
  4. 運送業界では「ホワイト経営認証制度」の導入が検討されている
    1. ホワイト経営認証制度とは?
    2. ホワイト経営認証制度の項目
  5. ホワイト経営認証を取得するメリット
  6. ホワイト経営を実践する際の3つのポイント
    1. 1.業績を重視しすぎない
    2. 2.福利厚生を充実させる
    3. 3.評価制度を明確にする
  7. ホワイト経営の実践企業をお手本に経営改革を

ホワイト経営とは?

ホワイト経営
(画像=Flamingo Images/Shutterstock.com)

まず、ホワイト経営の意味とメリットをおさらいするので、イメージをつかめていない人は参考にしてほしい。

ホワイト経営の意味

「ホワイト経営」に正式な定義はないが、ブラック企業が行う経営と反対の意味で用いられることが多い。一般的には、以下のような企業の経営を意味する。

・法定労働時間を遵守している(残業時間が少ない)
・残業があったとしても、しっかり割増賃金を支払っている
・福利厚生が充実している
・評価制度が明確
・従業員を大事にする社風である
・多様な働き方を認めている
・実力に応じた給与を支払っている

つまり、「ホワイト企業」が実践している経営である。一見すると当たり前と思える項目ばかりだが、それができない企業が多いため、あえてホワイト経営と呼ばれているわけだ。

ホワイト経営のメリット

ホワイト経営を実践する企業は、従業員のモチベーション低下や離職を回避できる。ブラック企業では、従業員のモチベーションが低下したり離職したりするリスクが高い。ホワイト経営で働きやすい環境を提供すれば、従業員のモチベーションを高い状態で維持できる上に、離職を減らす効果が期待できる。

また、労働基準法違反などの罪に問われるリスクがないことも、ホワイト経営で得られるメリットの1つだ。万が一従業員が過労死した場合、労働基準法違反に問われるだけでなく社会的な信用も失うため、事業の続行が難しくなる。上場を目指すような成長企業にとって、労働基準法違反は致命傷だ。このようなリスクを回避する上で、ホワイト経営の実践は必須と言えるだろう。

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ホワイト経営を実践している企業3選

ブラック企業ばかりが注目されがちだが、ホワイト経営を実践している企業も少なからず存在する。ここでは、ホワイト経営を実践している企業の事例を3つ紹介する。

富士そば

「富士そば」は、首都圏を中心に店舗を展開している立ち食いそばチェーンだ。富士そばの業績は業界トップレベルであり、その背景にはホワイト経営がある。年末年始を休みにするのはもちろん、パートやアルバイトにもボーナスを支給するという。しかし、富士そばがホワイト経営と言われる理由は、これだけではない。

前年度よりも利益が出たら従業員の給与を増やしたり、3交代の8時間勤務を導入したりすることで長時間労働を防止する徹底ぶりだ。徹底的なホワイト経営の背景には、創業者である丹道夫氏の「社員こそ内部留保であり良い社員がいなければ会社は伸びない」という考え方がある。ブラックと言われる飲食業界において、富士そばのホワイト経営はお手本にすべき事例と言えるだろう。

佰食屋

京都に店舗を構えるステーキ丼専門店「佰食屋」も、ホワイト経営のモデルケースとして有名だ。特筆すべきは、わずか3時間半しかない営業時間とステーキ丼を1日100食限定にしていることだ。一般的に、少しでも売上を増やすためになるべく営業時間を長く設定するが、同店舗では楽しく働きやすい環境を従業員に提供するために、あえて売上に上限を設けている。

業績を犠牲にしてでも従業員の幸せを優先する佰食屋の経営方針は、ホワイト経営の目指すべき姿と言えるだろう。

未来工業

最後に紹介するのは、岐阜県にある資材メーカーの未来工業だ。未来工業がホワイト経営と言われる理由は、休日が多いにも関わらず給与が高い点だ。年間140日の休日がある上に、それとは別に40日もの有給休暇を取得できる。1年の約半分休めるにも関わらず、何と平均年収は約643万円(2019年3月時点)と非常に高いから驚きだ。

これらは、ホワイト経営の一部に過ぎない。もちろん残業やノルマはなく、産休などの福利厚生は当然のように充実している。これだけ従業員を大切にしているにも関わらず、2019年3月時点で売上高は360億円を超えている。未来工業は、ホワイト経営でも利益を上げられることを証明する事例と言えるだろう。

運送業界では「ホワイト経営認証制度」の導入が検討されている

運送業界では、ホワイト経営を行っている業者を認証する制度の導入が検討されている。ここでは、その「ホワイト経営認証制度」について詳しく解説する。

ホワイト経営認証制度とは?

ホワイト経営認証制度とは、労働環境や労働条件が良好な運送業界を、ホワイト経営を行っている優良企業と認証する制度だ。運送業界では、劣悪な労働環境(長時間労働など)によるドライバー不足が深刻な課題となっている。その課題を解決するために、ホワイト経営認証制度の導入が検討されているわけだ。

この制度は、長時間労働の是正や働き方改革に取り組んでいる事業者に対して、1つ星から3つ星までの3段階で優良度を評価する。労働環境が整っている優れた事業者を「見える化」することで、各事業者に対してホワイト経営に取り組むインセンティブを与える効果が期待できる。また、業界全体がホワイト経営化することで、運送業界への求職者を増やすことを目指している。

ホワイト経営認証制度の項目

ホワイト経営認証制度では、いくつかの認証項目の加点方式によって優良度が判定される。具体的には、以下の6つのカテゴリーに、それぞれ詳細な認証項目が設定されている。

・法令遵守
・労働時間・休日
・心身の健康
・安心・安全
・多様な人材の確保・育成
・自主性・先進性

たとえば、「運転者の連続勤務の実績は12日以内」「労働災害・通勤災害の上積み補償制度がある」などの項目が用意されている。このような項目を多く満たすほど、良い評価が下される仕組みだ。詳しい評価項目を知りたい場合は、以下を参照してほしい。

参考:ホワイト経営認証制度 認証項目 国土交通省

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ホワイト経営認証を取得するメリット

ホワイト経営の認証を受けた事業者には、どのようなメリットがあるのだろうか? ホワイト経営認証を受けると、求職者や取引先、顧客に対して健全な労働環境であることをアピールできる。これによって求職者を集めやすくなったり、取引先や顧客にさらにサービスを利用してもらえるようになったりするだろう。

ホワイト経営を実践する際の3つのポイント

では、どうすればホワイト経営を実践できるのだろうか? この章では、事例や認証制度などから見えてくる、ホワイト経営を実践する上での重要なポイントを3つ紹介する。

1.業績を重視しすぎない

ホワイト経営を実践する上では、業績を重視しすぎないことが大切だ。利益がなければビジネスが成り立たないため、業績を重視することは重要である。しかし、従業員の健康や幸せを犠牲にしてまで業績を重視しては、たちまちブラック企業の仲間入りだ。従業員を大事にする前提で業績を重視することが、ホワイト経営を実践する上では重要なのだ。

紹介した3企業のように、業績を徹底的に追い求めなくても上場を果たしたり、数百億円規模の売上を上げたりすることもできるので、安心してホワイト経営を実践してもらいたい。

2.福利厚生を充実させる

ホワイト経営を実践する上では、福利厚生を充実させて従業員が働きやすい環境を確立することも必須だ。近年普及している育休や産休はもちろん、託児施設も準備すれば、育児で忙しい社員にも快適に働いてもらえるだろう。また、身体的にも健康で働いてもらうために、フィットネスジムを社内に設けている会社もある。

近年は、勤務先の福利厚生を重視する人が増えているため、求人においては大きなアドバンテージとなるだろう。また、働いている従業員のモチベーションや生産性も上がるため、海外進出や上場などで本格的に事業を拡大したい場合も、福利厚生の充実は有効な戦略と言える。

3.評価制度を明確にする

ホワイト経営を実践する上では、評価制度の明確化も重要だ。ブラック企業では、事業所や店舗によって評価制度が異なったり、上司の好き嫌いで評価が変わったりするケースが少なくない。評価制度が不明瞭だと、頑張って成果を出しているにも関わらず、それに見合う報酬をもらえない従業員が出てくる。その結果、優秀な従業員が次々と離職してしまうことになる。

すると、業績が悪化したりブラック企業のレッテルを貼られたりして、求職者が減少する可能性もある。それを防ぐためにも評価制度を明確にして、努力や成果に見合うだけの報酬を与えるホワイト経営に移行するべきだ。評価制度を明確化すると優秀な従業員のモチベーションが上がり、社内全体の生産性が高まることにもつながる

評価制度を明確化するメリットは、頑張った分だけ給料が増えるシステムを導入し、立ち食いそば業界でトップを取った富士そばの事例からも理解できるはずだ。

ホワイト経営の実践企業をお手本に経営改革を

事業を拡大するためには、多くの顧客から支持を得たり、従業員の人手を増やしたりすることが必要だ。顧客からの支持や従業員を獲得したいなら、ホワイト経営を実践するべきだ。実際にホワイト経営を取り入れる際は、すでにホワイト経営を実践している企業の成功事例を参考にするといいだろう。

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)