百貨店・ショッピングセンター(SC)業界でもコロナショックは広がっている。アフターコロナの生き残りを賭けた「新たな経営モデル」が必須とされている今、消費者を魅了するためのアプローチの変化や新たなトレンドをいち早く察知し、今後を予想する洞察力が求められる。

世界最大のSC大国である米国や日本などの動向から、コロナ時代の新たな経営モデルのヒントを探ってみよう。

目次

  1. 破たん続出の米国 今後5年で4分の1が閉鎖?
  2. 回復基調の日本も油断大敵?
  3. 新たな経営モデル 5つの動向
    1. 1 エクスペリエンス重視型への移行
    2. 2 在庫を置かない
    3. 3 ローカルビジネスとの提携で地域経済に貢献
    4. 4 安全性・安心感の向上
    5. 5 サステナビリティ経営の強化
  4. 経営資源を育む「未来への投資」

破たん続出の米国 今後5年で4分の1が閉鎖?

破たん続出のショッピングセンター コロナ時代勝敗を決める「新たな経営モデル」とは?
(画像=/stock.adobe.com)

2020年8月13日現在、米国では感染者数・死者数ともに世界最悪の記録を更新している。ネットショッピングの需要拡大で売上が減少していたSCは、さらにコロナが追い打ちをかけ、過去数ヵ月で破たんや買収、事業縮小が急増している。

米国に存在するおよそ1,200ヵ所におよぶSCの全敷地面積のうち、約30%を百貨店が占めている。その10%は創業118年の老舗百貨店チェーンJ.C.ペニー と、2018年に破産申請を行った老舗小売業者シアー・ホールディングスによるものだ。

5月に入り、J.C.ペニーや高級百貨店チェーンのニーマン・マーカス、アパレルグループのJ.クルー、7月にはアセナ・リテール・グループなどが相次いで破たんした。GAPは未払いの家賃をめぐり、商業用不動産会社と法廷で争っている。すでに空き店舗が目立っていたSCがさらに閑散とし、客足がおちることは避けられないだろう。

そうなれば小規模な店舗は、「2つ以上のアンカーストアが撤退した場合、家賃の削減やリースの解約が可能になる」というリース条件を利用して、雪崩を起こしたかのように撤退ラッシュを引き起こすかも知れない。高級ブランドだけではなく、中堅ブランドでも同様の傾向が見られるため、「今後5年で4分の1のSCが閉鎖に追い込まれる」と米市場調査企業Coresight Researchの創設者であるデボラ・ウェインズウイッグ氏は予想している。

回復基調の日本も油断大敵?

日本ショッピングセンター協会の発表によると、緊急事態宣言下にあった2020年4月と5月の売上高は、前年同月比60%台まで落ち込んだものの、6月は前年同月比15.0%減まで回復した。数字だけを見ると、日本の百貨店やSCが受けた打撃は、比較的小さく抑えられた印象を受ける。

しかし、景気後退突入を目前にひかえ、いずれ消費の低迷と売上減少による在庫の膨張が負担となり、一部の店舗を閉店したり、最悪の場合破たんしたりする小売業者も出てくるはずだ。またMMD研究所の調査によると、コロナの影響でECモールの利用者が約3割増加するなど、実店舗の集客にも影響がでている。

つまり長期的な観点から見ると、米SCの崩壊は日本にとっても他国にとっても、けっして他人事ではないということだ。

新たな経営モデル 5つの動向

そこで世界中のあらゆるSCに、長期的な生き残り戦略の見直しが必須となる。すでに一部のSCでは、以下のポイントを集客戦略に組み込み、コロナ時代の新たなカスタマーバリューとブランド力の創造を試みる動きが見られる。

1 エクスペリエンス重視型への移行

特に、若い世代の消費者の価値観がマテリアル(物質)からエクスペリエンス(体験)へと移行しつつある現在、SCはマテリアルを提供するだけではなく、「価値あるエクスペリエンス」を提供する場としての役割を担うことで、新境地を開拓できる。

映画館やレストラン、スポーツクラブなどに比重を置いたアミューズメント施設、あるいはクリニックやカルチャースクール、オフィス、住居などの複合施設への移行は、今後さらに加速するものと予想される。ここでの重要ポイントは、ライバルとの差別化だ。ほかのSCでは体験できないエクスペリエンスを提供することで、付加価値をあげる必要がある。

2 在庫を置かない

ネットショッピングの拡大を踏まえ、ネットで注文した商品のピックアップポイントとして、あるいは店頭でサンプルをチェックしたり試着・注文したりした後、商品は自宅や会社で受けとるといった、店内に在庫を置かないビジネスモデルも検討されている。後者は小売店に大量の在庫を配送する労力を省き、ウェアハウスから直接商品を消費者に発送できるため、輸送で排出されるCO2の量の削減にも役立つ。SCがこのようなモデルを採用しても不思議ではない。

3 ローカルビジネスとの提携で地域経済に貢献

近年加速していたグローバリゼーションはコロナを機に影を潜め、よりローカライズされたエコシステムが発展すると予想される。

例えば、ローカルビジネスや公共・教育機関、組合との提携関係を強化し、出店やイベントの開催、あるいはローカル・コミュニティハブとして情報を発信する活動を通して、地域経済・社会に貢献するといった発想だ。

4 安全性・安心感の向上

コロナを経て、消費者の安全性に対する懸念はさらに高まっている。不特定多数の客が集まるSCには、これまで以上に衛生や換気に細心の注意を払い、混雑を極力回避するための対応策が求められる。特に、クローズ型(屋内型)の施設は空気がこもりやすく、感染病がアウトブレイクしやすい環境だ。消費者が楽しめるだけではなく、安心して過ごせる空間創りに努める姿勢が重要だ。

5 サステナビリティ経営の強化

サステナビリティ(持続可能性)も、コロナを機に社会意識が高まっている分野の一つである。長期的な視野からビジネスとして収益をあげると同時に、環境や人に優しい経営戦略を打ちだし、消費者の信頼を得ることが、ビジネス存続のカギをにぎっているといっても過言ではない。

経営資源を育む「未来への投資」

コロナ時代の新しい経営モデルへの移行を成功させるためには、以上のポイントを意識すると同時に、「未来への投資」を積極的に行うことも重要だ。ここでいう未来への投資とは、経営資源(人・モノ・お金・情報・時間・知的財産)を育み、さらなる成長の機会を創出、そして最大化するための投資である。

まずはコロナ時代の新しい経営モデルの方向性を決定し、それぞれに適した未来への投資を行うアプローチがビジネスの勝敗を分けるのではないだろうか。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部