社有車の購入を考える時、業務に最適なクルマを選ぶのが最優先だが、経費も気になるところだ。自賠責保険料や登録費用、重量税は一括で経費に計上できるが、購入費用は減価償却費として処理するため、一括計上できない。現行税制では、新車と中古車でも経費の計上に違いがある。今回は、社有車購入に関わる経費の考え方を解説する。

目次

  1. 中小企業にとって節税の王道の1つは自動車の購入?
  2. 自動車を節税目的で購入するメリットとデメリット
    1. メリット
    2. デメリット
  3. 車の購入で節税できる減価償却費のからくり
  4. 有利なのは中古車?
  5. リース、ローンでもメリット?
  6. 社有車を購入後の5つのポイント
    1. 1.価値が落ちない自動車を購入する
    2. 2.自動車ディーラーはしっかり選ぶ
    3. 3.個人から会社に名義を移す
    4. 4.税務調査で私用との指摘受けないようにする
    5. 5.高級車購入はリスクが高い
  7. 結局、最も節税寄与度が高いのはどんなクルマ?

中小企業にとって節税の王道の1つは自動車の購入?

クルマの購入は企業にとって節税の王道 中古車有利は本当?
(画像=Andrii Kvasov/Shutterstock.com)

中小企業経営者であれば既にご存知かもしれないが、一括で経費に落とせる金額は、年間合計で300万円を超えないことが前提で、1個口単位で10万円未満までとなっている。青色申告の個人事業主と中小企業経営者の場合は、1個口30万円未満まで、購入し、使用開始した年度で、一括計上できる特例がある。

社有車購入で30万円未満というケースはあまりないので、期間に応じて分割して費用として計上する減価償却で会計処理を実施するのが一般的だ。社有車を新車で購入した時は、減価償却期間は6年になるが、社有車購入時の減価償却による経費の計上は、購入した時期や、新車、中古車、現金購入、ローン購入、リース契約などによって、違ってくる。

節税を考えた場合、企業の状況に合わせて、望ましい社有車の購入プランは存在する。しかし、大前提として、節税効果だけを考えて高額な社有車を購入することは、好ましくないだろう。クルマを購入すれば、その分のお金はなくなってしまうという点を忘れてはいけない。節税を考える以前に資金が調達できなくなるのである。

さらに、節税だけのために、事業に必要のない社有車を購入する事は、コストを増やすだけで企業経営にとってプラスにはならないだろう。

自動車を節税目的で購入するメリットとデメリット

社有車を節税目的で購入する場合は、自社の状況に合わせて、メリットとデメリットのバランスをよく考慮する必要がある。社有車が業務に必要であり、企業の経営を向上させるために重要であるかを見極め、必要な費用であれば、節税効果のある購入プランを検討していくのが良いだろう。

メリット

社有車を新車で購入した時は減価償却期間が6年になる。だが、中古車を購入した場合、一定の要件を満たせば、新車購入より短い期間で減価償却を行い、損金計上できる。中古車でも、購入金額が数千万にのぼるモデルもあり、高額の費用を損金で落とすことができる。

自動車メーカーや、車種、車の状態によって、車の価格帯にばらつきがある点も、損金計上額の調整に合わせやすい。自社の経営状況をみながら、社有車の購入価格を調整することができるのだ。

デメリット

クルマは市場価値が下がりやすく、価格の予測も難しい点は大きなデメリットだ。社有車の購入を活用した、節税は、視点を変えると利益を繰り延べることになる。購入した社有車の市場価値が、予測以上に下がってしまうと、節税効果が得られなくなる。

社有車を購入して、損金計上に成功しても、車を売却した特に購入価格と比較して大幅に安くなっていた場合は、節税以上の損失が発生することになるのだ。

購入した社有車は、業務で使用されるので、事故を起こす可能性がある。事故車は市場価値が激しく下がる。事故の予測は困難であるため、損失が発生するリスクを負うことになる。

社有車には維持費用が発生することも忘れてはならない。維持費は、メンテナンス費用の他に、税金、車検費用、自動車保険料、駐車場代など、年間支出は相当の金額になる。高額な社有車は、さらに維持費が高くなる。

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車の購入で節税できる減価償却費のからくり

社有車を節税目的で購入する場合には、減価償却について振り返ってみると良いだろう。減価償却とは、自動車のように、購入後長期間使用すると見込まれるものについて、使用される年数に対応した経費を分割して経費に計上する制度だ。

自動車以外にも、企業で購入した、建造物、設備、機械装置、備品など、購入後長期間使用し、時間の経過とともに、価値が減少していくものが対象となる。自動車の法人税法上の耐用年数は6年だ。

社有車購入を活用した節税を考える際に、減価償却の制度は大きなポイントになる。決算対策で、当年度の利益を抑えるために社有車を購入しても一気に償却はできず、その年度に社有車を保有していた月数分だけを減価償却として損金にすることになる。つまり、社有車購入を活用した節税には、計画性が重要なのである。

有利なのは中古車?

減価償却は、使用される年数に対応した経費を分割して経費に計上する制度である。したがって、中古車は新車と比べて、耐用年数が短くなる。同じ金額の社有車を購入した場合、年度に回せる損金の金額は大きくなり、早い年数で経費に計上されるのである。

社有車を中古車で購入すると、耐用年数は新車より短くなる。具体的には、新車時の耐用年数である6年から、中古車の経過年数を引いた数に経過年数に0.2をかけた数をプラスした数値が耐用年数となる。つまり、古い中古車ほど耐用年数が短くなる。

例えば4年落ちの中古車の耐用年数は、6年-4年+4年×0.2=2.8年となり、耐用年数が1年未満は切り捨てられるため、2年となる。新車の耐用年数6年と比較すると、期間が短くなり、早い年数で経費に計上できるのである。

ただし、現実に社有車を購入する場合、購入の条件は節税だけではないだろう。計算上は中古車を購入した方が、経費に計上できる金額は増加し、節税効果は上がっている。しかし、トータル的に考えると、前述したように、社有車には相当の維持費がかかる。新車は、中古車と比較して、メンテナンス費用は安く済み、長く使える利点もある。最近では、自動車の安全性能も向上しており、社内外に与えるブランドイメージも新車の方が優れているかもしれない。経営者は、節税だけでなく総合的な判断をすることが望ましいだろう。

リース、ローンでもメリット?

社有車の購入は、一括だけではない。リースやローンで購入した場合メリットはあるのだろうか。

リースは購入ではないので経費の考え方は全く異なる。リースの場合は、リース料金は経費であり全額損金計上となる。一括で社有車を購入する場合、減価償却の会計処理をしなければならないことを考えると、リースは単純な処理で済む。さらに全額損金という節税効果も期待できる。 さらに、リースは購入と違い、自動車の所有はリース会社にあるため、リース中の社有車を固定資産として計上する必要がない。リースは契約のための契約手続きが契約期間ごとに発生するが、企業において社有車を所有する理由がなければ、リース料金を全額損金にできる点や、資金繰りを考慮すると検討の余地があるプランである。 社有車の購入をローンで考える大きな理由は、資金繰りだろう。資金が潤沢でも、資金を運用するため、ローンを採用する経営者もいる。企業経営においては、現金や預金は、できるだけ残しておく経営戦略をとる企業も多い。 一方で今回のテーマである節税の視点で考えると、ローンの借入金の元金は経費とはならないため、経費に計上できるのは支払利息のみとなる。

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社有車を購入後の5つのポイント

社有車を購入した後にも注目しておきたい5つのポイントがある。

1.価値が落ちない自動車を購入する

社有車を購入する事で節税を考える場合、メインになるのは減価償却である。減価償却では、社有車を売却するときの市場価値が、想定を大きく下回ると、節税を上回る損失が発生してしまう。

そこで、問題になるのは、いかに市場価値が落ちない社有車を購入するかという点である。しかし、市場価値が下がらない車を選択するのは至難に業だ。そんななかでも、現在の分かる範囲の市場価格をもとに将来の市場価格を予測していく必要がある。

2.自動車ディーラーはしっかり選ぶ

自動車ディーラーをしっかり選ぶことは、社有車を購入する際にも売却する際にも重要になる。社有車を購入する際には、将来的に売却する際に価格が落ちにくい車を紹介してもらう必要があるだろう。社有車を購入する事で節税効果を期待したい場合は、対象の年式の中古車を選別してもらわなければならない。

可能であれば、複数のディーラーとコミュニケーションをとり、比較検討ができるようにしておきたい。自動車の購入と売却は、同じディーラーと取引する必要はない。ディーラーによって得意分野が異なることが多く、ディーラーの得意不得意も把握しておくと役立つことが多いだろう。

3.個人から会社に名義を移す

中小企業経営者の中には、社有車を購入して数年経過後に、個人で買い取るケースがある。減価償却による節税効果を得た後に、個人へ資産を移転することができるのである。当然のことながら、税務上の指摘を受けることがないように、社有車の買い取りは、適正な評価価格で実行されなければならない。

4.税務調査で私用との指摘受けないようにする

社有車の使用で注意したいのが業務と私用との使い分けである。税務調査で指摘を受けないように区分には注意しなければならない。ガソリン代やETC代などは、最初から事業用と私用とで分けておくのである。

しかしながら、社有車を業務とプライベートで使用するケースがある。この際は原則的には、担当の税理士などの税務の専門家や所轄の税務署に確認して経理処理を行う。

5.高級車購入はリスクが高い

企業の業績が上昇してきた際に、節税効果を期待して、高額な高級車を社有車として購入する事はリスクが高い。中小企業を取り巻く社会環境の変化は激しく、近年は自然災害やパンデミックが起きている。予期せぬ出来事が起こり、事業を悪化させる事態が起こる可能性があるのだ。

経営者は、資金繰りに細心の注意を払いながら、最適な取り組みを実行しなければならない。社有車の購入を使った節税対策を検討する際も同様である。

結局、最も節税寄与度が高いのはどんなクルマ?

前述でも指摘したように、社有車の購入を考える際には、節税のみが選択基準になるわけではない。その大前提をふまえた上で、購入後の維持費用や売却価格などを考慮せず、一括購入で最も節税寄与度が高いのは、4年おちの中古車であろう。

業務に必要な社有車の購入が、節税にも活用できれば企業にとって喜ばしいことだ。しかし、社業とバランスの取れた車の購入である事が前提だ。自動車のような高額な購入をすれば想定通りの節税効果が得られるとは限らない。税金に関わる節税の範疇は担当税理士や所轄の税務署に確認すべきである。中小企業向けの優遇税制も数多く提案されているので、合わせて確認すべきであろう。

文・Business Owner Lounge編集部