2020年の新型コロナ禍で、現在、国内の中小企業の経営支援のために数々の緊急融資が行われている。
今回は中小企業向けの緊急融資について、主なものを紹介する。自社で利用できるか、条件や期限をしっかり確認して融資選びの参考にしてみてほしい。(2020年8月6日時点)

目次

  1. 中小企業向けの緊急融資制度とは?
  2. 緊急融資を実施する各種機関
  3. 日本政策金融公庫の新型コロナウイルス緊急融資事例
    1. 新型コロナウイルス感染症特別貸付
    2. 新型コロナウイルス対策マル経融資
    3. 生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付
    4. 特別利子補給制度
  4. 民間の金融機関による新型コロナウイルス緊急融資事例
    1. セーフティ保証4号・5号・危機関連保証
  5. 地方自治体の新型コロナウイルス緊急融資事例
    1. 東京都の4つの緊急融資
    2. 渋谷区の緊急経営支援特別資金(新型コロナウイルス感染症対応)
    3. 目黒区の新型コロナウイルス対策緊急融資制度
  6. まずは必要な融資額を定め、どの制度を選ぶべきか整理しよう

中小企業向けの緊急融資制度とは?

緊急融資制度の活用で経営危機を乗り越えろ!新型コロナ禍の融資制度も紹介
(画像=Andrey Popov/stock.adobe.com)

災害などから中小企業を守るための緊急融資は、これまでにも東日本大震災時などに実施されてきた。 今回の新型コロナ禍でも、通常の融資とは異なる新しい融資が創設されたり、既存の融資制度の限度額とは別枠になる融資が設けられたりしている。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

緊急融資を実施する各種機関

緊急融資は日本政策金融公庫が実施する場合と、地方自治体や民間企業が独自に支援するパターンがある。日本政策金融公庫の施策だけではなく、地方自治体や民間企業の施策も調べた上でできるだけ負担の少ない制度を選ぶようにしたい。

・日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、政策金融機関の1つである。中小企業の創業や事業再生などを融資で支援し、民間の金融機関を補完する役割を担う。日本政策金融公庫の融資は、中小企業事業、国民生活事業(小規模企業・個人事業向け)などに分かれている。

今回の新型コロナ禍では、経営環境の変化に対応するための「セーフティネット貸付」の要件緩和が行われたほか、新型コロナ禍に対応するための新たな融資が創設されている。

・地方自治体や民間の金融機関

地方自治体や民間の金融機関は、信用保証協会と連携し、地元の中小企業を支えるための制度融資や信用保証付き融資を実行している。

新型コロナ禍では、民間金融機関による信用保証付き融資としてセーフティネット保証が活用されるほか、地方自治体が民間の金融機関と連携し、緊急融資を行う事例も見られる。

日本政策金融公庫の新型コロナウイルス緊急融資事例

ここからは新型コロナ禍で開始された主な緊急融資の内容を紹介する。

新型コロナウイルス感染症特別貸付

【対象者】
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来たし、次のA、Bのいずれかに該当する事業者。

A:最近1ヶ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している
B:業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の場合等は、最近1ヶ月の売上高が次のア~ウのいずれかと比較して5%以上減少している
ア 過去3ヶ月(最近1ヶ月を含みます。)の平均売上高
イ 令和元年12月の売上高
ウ 令和元年10月から12月の平均売上高

このほか、「最近店舗が増えた」、「合併や業種の転換を行った」などの理由がある事業者や、ベンチャー・スタートアップ企業のように、短期間に売上増加に直結する設備投資や雇用の拡大を行っている事業者も、Bの場合に準じてア~ウとの比較が認められる可能性がある。

【融資限度額】
・中小企業事業 6億円(別枠)
・国民生活事業 8,000万円(別枠)

【貸付期間】
設備資金20年以内、運転資金15年以内 (うち据置期間5年以内)

【金利】
基準金利となる。ただし、中小企業事業は2億円、国民生活事業は4,000万円(※)を限度に、当初3年間はマイナス0.9%となる。(例:基準金利が1.11%であれば3年間は0.21%になる)

さらにこの3年間については、別途要件を満たせば、「特別利子補給制度」により実質無利子化の対象となる。「特別利子補給制度」については後述する。
(※)「新型コロナウイルス対策マル経融資」、「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」などの合計で4,000万円が限度になる。

(参考)
日本政策金融公庫HP:「新型コロナウイルス感染症特別貸付」

新型コロナウイルス対策マル経融資

【対象者】
新型コロナウイルス感染症の影響により、最近1ヶ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している小規模事業者。

【融資限度額】
通常の融資枠(2,000万円)+別枠(1,000万円)

通常のマル系融資に、1,000万円の別枠を利用できるようにしたものである。マル系融資とは小規模事業者のための融資で、申請するには商工会議所や商工会などの推薦を受ける必要がある。

【貸付期間】
設備資金10年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金7年以内(うち据置期間1年以内)

【金利】
特別利率となる。(令和2年7月1日現在、年利1.21%)なお、当初3年間は一定の限度額までマイナス0.9%となる。限度額については「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を参照。

(参考)日本政策金融公庫HP:「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」

生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付

【対象者】
生活衛生関係の事業を営み、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している事業者で、一定の売上減少がある事業者。売上減少の要件は、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と同じ。

【融資限度額】
8,000万円(別枠)

【貸付期間】
設備資金20年以内、運転資金15年以内 (うち据置期間5年以内)

【金利】
基準金利となる。なお、当初3年間は一定の限度額までマイナス0.9%となる。限度額については「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を参照。

(参考)日本政策金融公庫HP:「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」

特別利子補給制度

生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付などは当初3年間、一定の融資額までマイナス0.9%の利下げ措置がある。さらにこれらのうち一定の要件を満たすものは「特別利子補給制度」によって、当初3年間に支払った利子の補給を受けられる。

これにより、上記の融資は当初3年間は実質無利子で受けられる。なお、日本政策金融公庫の既往債務の借り換えも、この制度の対象になる。

【対象者】
最近1ヶ月またはその後2ヶ月の3ヶ月間のうち、いずれか1ヶ月と前年または前々年同月の売上高を比較して、下記の要件を満たす事業者。下記にあてはまらない個人事業主については、売上減少要件なし。

・小規模事業者(※)のうち法人
 売上高15%減少
・中小企業者
 売上高20%減少
(※)従業員20人以下(卸売、小売、サービス業は5名以下)

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

民間の金融機関による新型コロナウイルス緊急融資事例

セーフティ保証4号・5号・危機関連保証

民間の金融機関による信用保証付融資に区分される緊急融資である。中小企業信用保険法に基づく経営安定のための融資で、現在、4号(突発的災害)と5号(業況の悪化している業種)について、全都道府県・全業種で検討できる。

【融資限度額・主な対象要件】

・セーフティ保証4号
一般保証枠(最大2.8億円)の別枠保証(最大2.8億円)となる。売上高が前年同月比マイナス20%以上減少などの要件がある。

・セーフティ保証5号
4号と同枠の、別枠保証となる。売上高が前年同月比マイナス5%以上減少などの要件がある。

・危機関連保証
セーフティ保証4号・5号とはさらに別枠(最大2.8億円)の融資となる。売上高が前年同月比マイナス15%以上減少などの要件がある。

・実質無利子化
セーフティ保証4号・5号、危機関連保証もまた、一定の売上減少要件を満たせば、実質無利子化の措置が設けられている。

さらに現在ある信用保証付債務(既往債務)についても、要件を満たせば、制度融資を活用した実質無利子融資への借り換えが可能である。

売上高▲5% 売上高▲15%
個人事業主 保証料なし・金利なし
小・中規模事業者 保証料2分の1 保証料なし・金利なし

【実質無利子化の要件】
・融資上限額 4,000万円
・補助期間 保証料は全融資期間、利子補助は当初3年間
・融資期間 10年以内 (うち据置期間は最大5年)

地方自治体の新型コロナウイルス緊急融資事例

地方自治体が民間の金融機関と連携して行う緊急融資もある。それぞれの都道府県、市区町村などで事業を行う方を対象とする融資であるため、該当する自治体のホームページなどを利用して情報収集する必要がある。

この記事では参考までに、東京都や渋谷区、目黒区の緊急融資を紹介する。

東京都の4つの緊急融資

東京都では、「新型コロナウイルス感染症対応緊急融資」「新型コロナウイルス感染症対応緊急借換」「危機対応融資」「感染症対応融資(全国制度)」の4つの融資を、民間の金融機関を通じて実施している。

融資額1億円まで3年間の無利子化、信用保証料の全額補助などの充実を図っている。

融資 主な対象要件 融資限度額 金利 信用保証料
新型コロナウイルス感染症対応緊急融資 ・最近3か月の売上または今後3か月の売上見込みが令和元年 12 月以前の直近同期比で5%以上減少 2億8千万円 ・全額補給(融資額1億円まで)
・融資実行後3年間
全額補助
新型コロナウイルス感染症対応緊急借換 ・最近3か月の売上または今後3か月の売上見込みが令和元年 12 月以前の直近同期比で5%以上減少
・信用保証協会の保証付融資を利用している
・事業計画を策定し、経営改善などに取り組む
危機対応融資 ・最近1か月の売上が前年同月比で 15%以上減少、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上が前年同期比で 15%以上減少が見込まれる
・危機関連保証に係る区市町村の認定を受けている
感染症対応融資(全国制度) ・セーフティネット保証(4号・5号)または危機関連保証に係る区市町村の認定を受けている 4千万円 ・全額補給
・融資実行後3年間
全額補助

(参考)東京都防災ホームページ

渋谷区の緊急経営支援特別資金(新型コロナウイルス感染症対応)

【主な対象要件】
新型コロナウイルス感染症の影響により、原則として最近1ヶ月間の売上高などが前年同月比で10%以上減少しており、かつその後2ヶ月間を含む3ヶ月間の売上高などが前年同期に比べて10%以上減少することが見込まれることなど。

融資限度額 2,000万円以内
貸付期間 運転資金7 年以内(据置期間 1 年を含む)
金利 渋谷区が全額補助
信用保証料 補助なし

(参考)渋谷区ホームページ

目黒区の新型コロナウイルス対策緊急融資制度

【主な対象要件】
新型コロナウイルス感染症の影響により、直近1ヶ月の売上高などが前年同期と比して20%以上減少していることなど。

融資限度額 1,000万円以内
貸付期間 運転資金5 年以内(据置期間 1 年を含む)
金利 目黒区が5年間補助
信用保証料 補助なし

(参考)目黒区ホームページ

まずは必要な融資額を定め、どの制度を選ぶべきか整理しよう

新型コロナ禍による緊急融資には、現在、国、都道府県、市区町村などが民間の金融機関や信用保証協会と連携したさまざまな取り組みを実施している。

まずは、事業に必要な融資額を定め、どの融資を選択するか金融機関や都道府県の相談窓口などで整理しよう。できる限り、利子補給など負担の少ない制度で融資を受けることが大切だ。既往債務の借り換えによる無利子化ができるものもあるため、この点もぜひ検討しよう。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部