急速に進化するその成長性に雇用機会を剥奪される脅威から、AI(人工知能)の将来性には不透明な時期もあった。現在では実用化が着実に進められ、幅広い分野でAIによる新たなサービスが誕生し、スタートアップ企業の参入も相次いでいる。

目次

  1. AI技術をビジネスに活用
  2. 農業から教育の現場まで産業別AIスタートアップの活躍
    1. <農業>AGRIST株式会社(アグリスト)
    2. <防犯>株式会社VAAK(バーク)
    3. <自動車産業(自動車産業・製造業)> 株式会社Preferred Networks
    4. <教育> atama plus株式会社
    5. <金融> OLTA株式会社
  3. AIスタートアップの新興は活況に
  4. AIに対する恐怖からの脱却、共存の時代へ

AI技術をビジネスに活用

今注目の「AIスタートアップ」5選!AIのビジネス活用法を紹介!
(画像=taa22/stock.adobe.com)

人口知能であるAIには、固有の定義は存在しない。その一方で、武田英明をはじめとする国立情報学会研究所の教授らはAIを「人工的につくられた、知能を持つ実態。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究する分野」と定めている。

AIが急速に存在感を増してきた背景には、ディープラーニングと呼ばれる学習手法の存在が大きく関係している。ディープラーニングは、膨大なデータから隠れた法則や相関関係を見抜き、学習を継続することで知能に磨きをかけられる画期的なテクノロジーだ。

AIによって現在までに発展した技術は、画像認識・言語理解・感情理解・音声認識・行動予測などが代表的である。大企業が導入している具体例として、Googleの音声入力や自動運転車、ソフトバンクロボティクスのロボット「Pepper(ペッパー)」などが挙げられる。

AIの導入によってもたらされるメリットは甚大で、Pepperの例では接客業務においても活躍しており、人手不足に悩む現場で貴重な即戦力となっている。また、話題性も尽きないことから、企業が導入することで物珍しさを顧客に訴えることもまだまだ可能である。

このほかAIは裏方としても、ディープラーニングを活かして、定型業務の自動化にも応用され、業務の効率化にも貢献している。その活躍の場は幅広い産業に広がっており、好機とみたスタートアップ企業はそれぞれの分野において存在感を増している。

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農業から教育の現場まで産業別AIスタートアップの活躍

AIを活用したユニークなアプローチを試みているスタートアップ企業は、近年増加傾向にある。ここでは、農業・防犯・自動車産業(自動車産業・製造業)・教育・金融の5つの分野を取り上げ、それぞれの企業の取り組みについて述べる。

<農業>AGRIST株式会社(アグリスト)

農家の高齢化や成り手不足に加え、気候変動の影響などからも農業が直面する状況は厳しさを増している。その一方で、農業分野はITなどの技術革新の参入がまだまだ進んでいない分野でもあるため、AIの導入によって伝統的な農業に革新がもたらされている事例が報告されており、厳しい局面に立たされていた農業にも光が差し込み始めている。

「アグリスト」がAIの技術を使用して提供するサービスは吊り下げ式の収穫ロボットである。ロボットは24時間365日稼働することが可能で、農家が就寝中に収穫作業を終えることも夢ではなくなった。収穫作業に係る人手を省くことができ、さらには作業そのものをロボットに任せることで、空いた時間にその他の作業に従事することができる。そうすることで、結果的に農作業の効率性アップが期待できる。

また、単に収穫をロボットが代行するだけにとどまらず、そのプロセスで収集するデータを解析し、病気の早期発見などにもつなげる性能を目指している。害虫予防がAIの助けによって実現すれば、将来的な生産量のアップも見込めるだろう。

<防犯>株式会社VAAK(バーク)

世界的にも治安がよいとされる日本だが、オリンピックなど国際イベントを控え、テロ対策などの面からも防犯ビジネスの需要が高まりつつある。従来の防犯カメラは、設置することで万引きなどの抑止力として効力をもたらしたり、犯罪を映像として記録したりする機能が主たるものであった。

しかしながら、AIを活用した防犯カメラはさらに進化を遂げている。「VAAK」が提供するVAAKEYEは、AIの行動予測の技術を防犯カメラに搭載しており、小売店に設置された防犯カメラで客の行動解析をして万引きなど犯罪行為を検知し通知する性能を備えている。

犯罪行為が即座に検知されるシステムが普及すれば、犯罪行為そのもののさらなる抑止力としての効果が期待できるだろう。また、店舗側も防犯対策に複数の定員配置が不要になることで人件費の節約が可能になる。さらに、一歩進んで将来的には無人店舗の普及にも寄与することが考えられるだろう。

<自動車産業(自動車産業・製造業)> 株式会社Preferred Networks

IoTに注力したAIのディープラーニングをビジネスに活用することを目的に創業された「Preferred Networks」は、創業わずか6年というスタートアップ企業だが、すでにその名前はAIに参集するスタートアップ企業の代表格といっても過言ではない。

同社が有する機会学習やディープラーニング、ビックデータ処理等の知能化関連技術は世界でもトップレベルとの呼び声が高い。そのポテンシャルに惹かれたのは、世界の自動車メーカーでもあるトヨタ自動車だ。Preferred Networksの技術にほれ込んだトヨタは、これまでに約115億円を出資し、物体認識技術や車両情報の解析技術などの共同研究を進めている。この技術を発展させ、両社で自動運転やコネクテッドカーといった次世代のモビリティ社会の実現を見据えているのだろう。

Preferred Networksの実力と将来性に魅了されたのはトヨタだけにとどまらず、産業用ロボットメーカーであるファナックも同様である。機会学習やディープラーニングで物体認識・制御・異常探知・最適化などの技術を産業用ロボットに適用し、実際にファナックの製品に新機能として搭載され、製造現場で導入が進んでいる。

<教育> atama plus株式会社

ベビーブーマーの受験戦争が激しかった時代には、予備校や学習塾では大講義室で1人の先生を何百人もの生徒が囲む光景は珍しくなかった。少子化が進む大学全入時代を迎え、予備校や塾も1人1人の生徒にきめ細かい指導をする個別指導が広がってきている。

しかしながら、生徒1人1人に手をかけようとすると、先生や講師の負担は増す一方である。そのサポート役として存在感を見せるのがAIだ。AIの技術を活用した「atama+」のシステムはすでに学習塾などに導入されている。

その仕組みは、生徒それぞれの得意分野や苦手分野、つまずくポイント、集中できる状態などを分析し、カスタマイズされた学習プランを提供することで、学びの最短ルートに導くようになっている。さらに、生徒の学習の進捗状況は随時AIが解析して先生の端末に情報として送信される。先生は受け取った情報をもとに、生徒がつまずいたポイントで、適切なタイミングで声がけをして指導することができる。

AIは塾での生徒の学習状況を把握し、それに基づいてそれぞれに宿題を課す。この技術のおかげで、先生の負担を軽減しながら、必要なポイントに絞って生徒1人1人にきめ細やかな指導をすることができるようになる。

<金融> OLTA株式会社

フィンテック、仮想通貨など技術革新のインパクトが大きい金融分野においても、AIの存在は必要不可欠になりつつある。「OLTA」はクラウドファクタリングと呼ばれる早期に運転資金を調達するための仕組みをAIの技術を駆使して構築した。

その仕組みは、A社が取引先のB社からの入金を待っている状態の請求書をOLTAが買い取り、A社に現金を振り込む。B社から請求金額が振り込まれたらA社がOLTAに弁済をするスキームである。特に短期の事業運転資金のニーズに応える仕組みとなっており、このサービスでは審査スピードにも注目が集まっている。

web上で書類を提出すると、24時間以内で審査が完了し、問題がなければ即日に振り込みが実施される。この迅速な審査システムを支えるのが独自のAIスコアリングだ。AIによる審査で、スピードアップを図るとともに、手数料もファクタリング業界において低水準に抑えることに成功した。

資金繰りは事業にとって死活問題である。AIによって新たな迅速な資金調達手段が、事業主に提供される道が開かれたといっても過言ではないだろう。

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AIスタートアップの新興は活況に

すでにあらゆる分野にAIの導入が進んでいる例をみてきたが、その勢いは今後しばらく継続していきそうだ。IT専門調査会社のIDCによると2019年の日本国内のAIシステム市場規模は前年比56%増の818億円にのぼり、2020年には1,172億円とさらなる成長が見込まれている。

2019年から2024年の5年間の市場規模は毎年33%拡大するとの見通しで、その結果2024年の市場規模は3,458億円にまで到達するとみられている。

時代の趨勢に乗じたスタートアップ企業によるAI分野への参入を、老舗企業や大企業が胡坐をかいてじっと見ているというわけではない。大企業が自らAIを導入して自社サービス効率化や新事業への展開をみせる動きのほか、スタートアップの技術力を活用して自社の成長に取り組もうとする動きもある。

自動車産業・製造業部門で取り上げたPreferred Networksはまさにその好例で、トヨタ自動車・ファナックといった名立たる企業と協働に踏み出している。こうした動きは日本国内だけにとどまらず、米国ではGAFAに名を連ねるアマゾン、アップルが自動運転技術を有するスタートアップ企業を買収するなどの動きをみせている。

新たな成長分野として注目されるAIだが、課題を挙げるのであれば、「人材育成」が1つの鍵となろう。急速に進化するAIについては、これまでは専門の技術者を中心に開発が進められてきた。AIによるサービスが普及するにつれて、技術者のみならず幅広い分野でのAI人材が求められることになるため、その育成が市場の拡大を左右する可能性は十分考えられるだろう。

AIに対する恐怖からの脱却、共存の時代へ

雇用機会の剥奪の恐れからAIに対して、ビジネス界には不安も存在していた。しかしながら、AIはすでに各分野に浸透し、人手不足や業務の効率化等の直面する課題を解決する一助となり、その存在感は日に日に増している。

また、ビジネスの現状を改善するだけにとどまらず、自動運転など未知なる世界への飛躍を後押ししてくれるポテンシャルも秘めており、AIとどのように共存しながらビジネスを展開できるかということが、企業にとっても生き残りをかける選択となり得るかもしれない。成長著しいスタートアップにとっては、AIはまたとない飛躍のチャンスを与えてくれる存在といえるだろう。スタートアップの台頭は、当面の間続いていきそうである。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部