「営業活動は『カンと経験』が重要」と考える営業スタッフもまだまだ少なくないかもしれない。しかし、カンと経験に頼るだけの属人的な業務では、営業部門全体の売上を大きく高めることはできないだろう。営業マニュアルは、個人の営業能力に頼りすぎることなく、会社の営業スタンスをスタッフのそれぞれが共有しながら、トータルに営業力を上げるために作成する。この記事では、営業マニュアル作成のポイント、および注意点を紹介する。

目次

  1. 営業マニュアルの作成はなぜ必要なのか
  2. 営業マニュアル作成のポイント
    1. 1.わかりやすい言葉で作成する
    2. 2.フォーマットは統一する
    3. 3.営業シーンに分けてマニュアルを作成する
    4. 4.現場の事例を交えて作成する
    5. 5.ブラックボックスをなくす
  3. 営業マニュアルの実効性の確認とフィードバックが必須
  4. 営業マニュアルの5つのNG
    1. 1.なぜ営業マニュアルが必要かが明確でない
    2. 2.営業マニュアルの読者の設定が曖昧
    3. 3.内容が偏りすぎて普遍性がない
    4. 4.営業活動の具体的な進め方が書いていない
    5. 5.マニュアルの存在が周知されていない
  5. 営業マニュアルに記載すべき項目の事例
    1. 1.顧客へのアプローチ方法
    2. 2.商談時のマナー
    3. 3.トークフロー
    4. 4.会社が取り扱うサービスや商品の情報
    5. 5.クレームへの対処法
    6. 6.顧客のデータ管理方法
  6. 営業マニュアルを作成して営業力を底上げしよう

営業マニュアルの作成はなぜ必要なのか

営業マニュアルの活用で自社の営業力の底上げを!作成のポイントと注意点
(画像=miya227/stock.adobe.com)

営業活動は、サービスや商品を販売する販売活動や、販売調査、販売計画、納品、代金回収、クレーム処理、広告宣伝など、具体的・個別的な活動は多岐にわたる。これら多くの活動を通し、売上を上げることにより、会社の経営を支えることを目的としていることはいうまでもないだろう。

営業活動の成果を上げるためには、活動の内容を標準化、効率化することが重要だ。その際に必要となるのが営業スタッフへの教育である。営業マニュアルは、営業スタッフへの教育効果をより高めることを目的として作成する。

これまでの営業活動により積み上げられたエッセンスがまとめられるため、新人スタッフの役に立つのはもちろんのこと、中堅スタッフが学び直すためにも有効だ。また、職務のマンネリ解消のために行うジョブローテーションも、マニュアルがあればスムーズに行えるだろう。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

営業マニュアル作成のポイント

営業マニュアルを作成する際の5つのポイント、および注意点を見ていきたい。営業マニュアル作成時の5つのポイントは以下のようなものだ。

1.わかりやすい言葉で作成する

営業マニュアルは、読者が読みやすいこと、および理解しやすいことが重要だ。できる限りわかりやすい言葉で作成する必要があるだろう。営業経験が全くない新人スタッフにとっても読みやすく、理解しやすいことが大切になる。

経験者のあいだでは当たり前に使われる社内用語や専門用語は、解説なしで使うのを避けたい。社内用語や専門用語の解説ページを作るのもよいだろう。また、図や画像、マンガなどを使用して、視覚に訴えるようにするのも有効だ。

2.フォーマットは統一する

フォーマットを統一するのも、営業マニュアル作成時のポイントだ。マニュアルは、複数の営業スタッフなどで作るケースもあり、執筆者ごとにフォーマットが異なると読みにくく、使い勝手が悪くなりやすい。

マニュアルのどこに、何が書かれているかが直感的にわかるよう、フォーマットを工夫しよう。特に、業務のゴールを冒頭で具体的に設定すること、および、いつ、誰が、何を、なぜするかを明記することは重要だ。

3.営業シーンに分けてマニュアルを作成する

営業活動には、事前準備やテレアポなどから始まり、初回訪問のアプローチ、顧客の話を聞くヒアリング、自社のサービスや商品の説明をするプレゼンテーション、契約締結に向けたクロージング、および契約後のフォローアップなど、多くのシーンがある。マニュアルは営業シーン別に分けて作成し、営業活動の大きな流れを全体として把握できるページを用意するのも重要だ。

4.現場の事例を交えて作成する

営業マニュアルは、現場の事例を交えて作成しておきたい。営業活動は、現場の状況により臨機応変な対応が要求されるため、事例はできるだけ多く集めたほうがよいだろう。

ただし、現場事例を多く盛り込み、雑然としてしまうのでは意味がない。事例は種類別・場面別に分類して整理し、全体をどのように構成するかをよく検討することが必要だ。

5.ブラックボックスをなくす

マニュアルを作る際に大切なのは「ブラックボックス」をなくすことだ。ブラックボックスとは、インプットとアウトプットだけがわかっていて、そのあいだのプロセスが不明なもののことをいう。業務の分業が行われ、専門性が高まるとブラックボックスが発生しやすくなる。

ブラックボックスを解消するには、フローチャートで業務のプロセスを可視化するのがよいだろう。業務が流れで図示されるため、専門性がないスタッフでも理解しやすくなる。

営業マニュアルの実効性の確認とフィードバックが必須

営業マニュアルを作成する際の注意点として重要なのは、「作って終わり」にならないことだ。マニュアルを作ったら、実際に新人スタッフなどに、マニュアルの内容通りに実践してもらうのがよいだろう。それにより、マニュアルの実効性を確認し、現実に即さない部分についてはマニュアルの修正が必要だ。

また、営業活動の現場や業務内容は時間がたつにつれ変化するため、マニュアルの定期的なアップデートも欠かさずに行おう。

営業マニュアルの5つのNG

続いては営業マニュアル作成時の5つのNGポイントについて見ていく。

1.なぜ営業マニュアルが必要かが明確でない

まず、必要性が明確でない営業マニュアルはNGだ。何のために営業マニュアルを作ったのかを社内で明確しておくことが必須だろう。

最も良くない例は、営業マニュアルを絶対視してしまうことである。マニュアルは本来、職場の仕事を指導員なしで自律的に回せるようにするためにあるため、マニュアルの内容はルールとは異なり「絶対」ではないからだ。

マニュアルを絶対視してしまうようになれば、マニュアルに縛られて業務がかえって非効率化したり、あるいは「現場はマニュアルとは違う」とマニュアルが利用されなくなったりすることになりがちであるため特に注意したい。

2.営業マニュアルの読者の設定が曖昧

読者の設定が曖昧なことも、営業マニュアルとしてはNGだ。営業マニュアルは新人スタッフに向けて作られることと、中堅スタッフに向けて作られることとがある。それぞれで、使用する用語も書き方も異なったものとなるため、両者を区別せずに読者を曖昧にしてしまえば、どちらにも伝わりにくくなってしまう可能性がある。

3.内容が偏りすぎて普遍性がない

営業マニュアルが、少数のスタッフの経験と意見に基づいて作られてしまうことがある。その場合には、内容が偏りすぎて普遍性がない、NGなマニュアルになりがちだ。

マニュアルは、できる限り多くのスタッフの経験と意見、および事例を収集し、個人の意見によらない、誰にでも通用するものを目指す必要がある。特に、営業フローやノウハウは、最善・最適であるかについて十分な確認が必要だろう。

4.営業活動の具体的な進め方が書いていない

精神論や考え方などに偏って、営業活動の具体的な進め方が書いていないマニュアルもNGだ。もちろん、「営業の心構え」などを短く記すことは必要だが、マニュアルは、考え方や体験を開陳するものではなく、具体的な方法を記すものである。豊富な事例に基づいて、営業の最善・最適な方法を詳細に記述することを心がけたい。

5.マニュアルの存在が周知されていない

営業マニュアルは、往々にして使われなくなってしまいがちだ。使われるようにするためには、まずはマニュアルの存在を周知する必要がある。

だが営業マニュアルが使われなくなるのは、「営業に大切なのは『カンと経験』でありマニュアルではない」との先輩社員の考え方が原因となることもある。営業マニュアルの目的・必要性を確認すること、あるいはマニュアルのアップデートを行うことも、マニュアルが使われるようにするためには重要な要素だといえるだろう。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

営業マニュアルに記載すべき項目の事例

次に営業マニュアルに記載すべき項目の事例を見ていこう。

1.顧客へのアプローチ方法

顧客へのアプローチ方法は、営業マニュアルに記載すべき内容として重要だ。自社が実際に行っているアプローチ方法に基づいて記載しよう。特に近年、顧客へのアプローチで重要になっている、マーケティング部門との連携方法については詳しい記載が必要だ。

2.商談時のマナー

営業スタッフにとって、アプローチした顧客からよい第一印象を持ってもらうことは非常に重要だろう。図や写真・マンガなどを使用し、服装や挨拶、名刺交換など、商談時のマナーについては詳細に記載したい。

3.トークフロー

商談時やアプローチ時などのトークフローは、営業マニュアルとしてメインの内容ともいえる。営業シーンごと、あるいは顧客の反応ごとなど複数のケースについて、事例に基づいて記載したい。

4.会社が取り扱うサービスや商品の情報

会社が取り扱うサービスや商品の情報も、営業マニュアルには必須だ。顧客が抱えている課題別に、どのサービス・商品をどのように勧めるかも記載しておけば、営業マンごとに説明に齟齬が出てしまうこともない。

5.クレームへの対処法

クレームへの対処法も、クレームの種別ごとにしっかりと記載したい。また、クレームなどのトラブル時の連絡経路をはっきりとさせておくことも大切だ。

6.顧客のデータ管理方法

顧客のデータ管理方法は、営業マニュアルの重要なテーマの1つだろう。顧客データがダブらない、あるいは随時確実にアップデートされるためのルールやツールの使用方法を記載し、効率的な管理を営業全体で行っていくことが重要だ。

営業マニュアルを作成して営業力を底上げしよう

つい「カンと経験」に頼ってしまいがちな営業活動は、マニュアルを作成することにより全体の実力の均一化が可能だ。会社の営業スタンスをスタッフのそれぞれが共有し、最善・最適と考えられる標準化された方法で営業活動を行うことで、スタッフによるばらつきを抑えられる。

営業マニュアルを作成するにあたっては、目的と対象を絞って読みやすく、理解しやすいこと、営業シーンや現場事例を取り入れるなどして具体的であること、個人の経験や精神論などに偏りすぎず普遍的であることが重要だ。経営者として、営業マニュアルをしっかり作り、営業力を底上げしていくことが会社の成長にもつながるだろう。

文・高野俊一(ダリコーポレーションライター)