企業のバックオフィスには様々な部門がある。特に総務・経理などはよく耳にするが役割・業務内容にはどのような違いがあるのだろうか。今回は、総務・経理の役割と違いについて整理した上で企業のバックオフィス業務について説明する。  

目次

  1. 総務と経理の仕事の違いは何か
    1. バックオフィスの要である点は一緒
    2. 仕事の方向性の違い
  2. 総務の仕事
    1. 資産管理・物品管理
    2. 社内規程の制定・管理
    3. 文書管理
    4. 取締役会・株主総会の運営
  3. 経理の仕事
    1. 記帳業務
    2. 請求・支払業務
    3. 資金繰り業務
    4. 決算業務
  4. そのほかの間接部門
    1. 人事
    2. 財務
    3. 法務
    4. 広報
  5. 企業の目的達成にはバックオフィスの存在が不可欠

総務と経理の仕事の違いは何か

総務と経理の違いとは?バックオフィス業務について解説
(画像=gstockstudio/stock.adobe.com)

そもそも、総務と経理の仕事はどんな点で異なっているのであろうか。まずは、総務と経理の仕事の共通点と相違点について比較してみる。

バックオフィスの要である点は一緒

総務も経理も、会社の業務としては間接部門であり、実際の営業活動には直接関与しないことが大半である。その一方で、どちらも会社のバックオフィス業務の要となる部分であり、一定規模以上の企業では、総務と経理が機能していないと現場が雑用に追われ、本業に集中できない事態が発生する。

総務も経理もバックオフィスの要として、会社全体のパフォーマンスを上げることが最大の目的であり、その点においては二つの部門における仕事の目的は類似している。

仕事の方向性の違い

一方で、二つの部門における仕事の方向性は大きく異なる。バックオフィスと一口にいっても、相手にするものが違うためだ。総務の仕事は、実物の管理や組織の運営管理など、主に実体のある物や人などを相手として行う業務を指す。経理の仕事は、会社の動きに伴って発生する「お金」の流れを相手にする仕事であり、主に数字を相手として行う業務といえる。

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総務の仕事

企業によっても異なるが、総務の仕事は物・組織を管理していくための業務が主体となる。主として、資産管理・物品管理や社内規定の制定・管理、文書管理、取締役会・株主総会の運営などが挙げられる。

資産管理・物品管理

総務の仕事のうち、重要な業務の一つとして社内の資産・物品の管理という仕事が挙げられる。これは、単純な消耗品等の管理(調達・運用)のほか、重要な事業用資産(土地・建物・機械設備・車両など)についての管理も含まれる。

資産の取得・更新・修繕・廃棄など、業務内容は多岐にわたり、会社の規模が大きくなればなるほど業務は複雑化する。不動産に関しては、所有する物件のほか、賃貸についても管理する必要があり不動産や賃貸契約に関する知識も求められる。

管理する業務用資産の種類・数が多い企業やその重要性が高い企業の場合には、資産管理部門を別組織とすることもある。

社内規程の制定・管理

社内で運用するための規程類については、総務が管理するケースが多い。定款のような公的な役割を持つ規程のほか、社内のルールとなる規程類に関しても制定・管理を行う。

規程には、経営・業務運営・経理処理に関するものなど多岐にわたる。規程そのものの作成・管理から、社会的な要請や法改正などの動きを捉えて、適切な変更を行っていく必要がある。そのため、専門的な知識と確実な処理が要求される業務といえるだろう。

文書管理

規程ではなくても、会社には様々な文書(自社で作成した文書、他社から受け取った文書など)が存在している。文書の取り扱い次第では、会社のパフォーマンスやリスク管理に大きな影響を与えることがあるため、それらの文書を管理する必要がある。そのような業務も総務の領域である。

具体的には、社内文書の取り扱いに関する規定の策定・運営や、実際の文書の保管・管理について運営・指導を行う。また、社内文書の廃棄についても担当する。

取締役会・株主総会の運営

株式の取り扱いと、取締役会・株主総会の運営も総務の重要な業務だ。取締役会は会社の経営に関わる重要な意思決定機関であり、その適切・適法な管理運営と記録の作成・保管は必要不可欠な業務である。取締役会は設置が必須の機関ではないが、その場合には取締役としての決定すべき事項に関しては同様の管理・運営が必要となる。

また、株主総会は、会社の最高意思決定機関であり、その運営と管理には細心の注意を払う必要がある。取締役会・株主総会ともに、その役割や開催時期・招集方法・開催方法などについて、会社法をはじめとする各種法令によってその方法が定められており、法令に違反していると適切な効果を発揮しない。そのため、総務においては、適法な運営を行うことはとても重要だ。

取締役会・株主総会ともに経営陣にとっては重要なイベントとなるため、その運営にあたっては、経営陣とのコミュニケーションを密にして、的確な運営を行っていくことが求められる。

経理の仕事

経理の仕事は、基本的にお金にまつわる全てが担当となる。代表的な業務としては、記帳業務、請求・支払業務、資金繰り業務、決算業務などが挙げられる。

記帳業務

企業活動は、その全てにおいて何らかの形で金銭的な裏付けが存在する。その取引を適時・適切に帳簿に記帳して、会計処理をすることが、経理の重要な仕事の一つだ。複式簿記による適切な記帳を行っていないと、決算期が到来しても決算を行うことができず、適切な会社運営はできない。

また、会計処理によって、会社の現状を常に定量的に把握できるようにすることで、取締役会・株主総会における意思決定が適切に行える体制を作っていくことも大切だ。

請求・支払業務

企業活動の成果に基づく他者への売上金などの請求業務と、企業活動に伴って発生する原価・経費・投資などに伴う請求金額の支払いを確実に行っていくことも、経理の大切な仕事の一つである。

請求書の発行や請求書の受け取り・集計、対外的な振込業務など一つ一つは一般的な事務処理であるが、それらを適時に行っていくことが会社運営としては非常に重要なプロセスといえる。また、それを毎月確実に行っていくことも、経理業務の大切なポイントだ。加えて、担当者による不正が起こりやすい業務でもあるため、業務内容の透明性と複数による検証体制を整備しておく必要がある。

資金繰り業務

記帳業務・請求支払い業務を通じて過去・現在までの資金の流れを把握・集計するとともに、将来の資金の流れを推測し、自社の資金繰り管理を行っていくことも経理の重要な仕事だ。

資金繰りは会社経営の最重要事項であり、どんなに収益力のある会社であっても、資金繰りが回らなければ、倒産することになる。そのため、常に蓋然性の高い数字を算出することが求められる。

また、現在の資金繰りだけでなく、将来の資金繰りについても検討する必要がある。将来の資金繰りは、過去の実績に基づくものだけでなく、会社の将来的な見通しも含めて考えないと算出できない。したがって、経理としての知識・経験とともに会社の業務に対する理解と将来の収支見込み・投資計画についての情報も必要となる。

会社の将来的な見通しまで含めて把握するためには、経営陣との意思疎通が重要となるため、経営陣との密接なコミュニケーションが必要不可欠だ。また、外部からの資金調達環境も資金繰りにとっては大きな要素であり、特に中小企業においては取引銀行とのコミュニケーションも重要な業務の一つといえる。

財務部門を別に置いている場合には、将来的な収益の見通し・資金繰りおよび資金調達方法まで含めて財務部門で担当することが多い。

決算業務

毎年、決算期が到来すると、企業は決算処理を行い、財務諸表を作成・公表する必要がある。この決算業務も、経理部門の大切な業務だ。決算処理は、会計処理に関するルールに基づいて、適正に行うとともに、一定期間内に一年間の経理処理の内容を見直して決算書として取りまとめる。

経理では、決算後2~3ヵ月という短期間で決算の取りまとめ、取締役会の承認・決算監査(監査法人・監査役・内部監査)の対応・株主総会への対応と、多岐にわたる業務を行う必要があり、多忙を極める。また、決算を確定させるためには、税務申告についても同時に検討する必要がある。

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そのほかの間接部門

ここまで、間接部門として代表的な総務・経理について紹介してきた。しかしながら、企業運営には、総務・経理以外の人事・財務・法務・広報などのバックオフィスを支援する部門の協力も欠かせない。

人事

企業の人事・労務管理と採用について担当する部門である。ある一定規模以上の企業にとっては、企業の組織運営、カルチャー形成、将来的な業務執行能力など経営に多大な影響を与える重要な部門だ。小規模な企業では、業務については総務が、意思決定については経営陣がその機能を担っている場合が多い。

財務

経理部門に業務が近い部分もあるが、内容としては経理が作成した決算書類をもとにして、企業のお金の将来的な計画を行う部門のことを指す。具体的には、将来の収益計画の検討と将来の資金調達の管理が主な業務となる。

一定規模以上の企業では大変重要な業務となり、専任が置かれている場合が多い。その一方で、小規模な企業では経理部門が兼任していたり経営陣が引き受けているケースが多々みられる。さらに規模が大きくなると、将来的な事業の企画部門として経営企画が置かれることも多い。

法務

企業活動の法務面での対応を統括する部門であり、契約書の内容管理や自社の企業運営、サービスにおける法務面での検討、企業としてのリスク管理など、法令・コンプライアンスに関する業務を統合的に行う。小規模な企業であれば、総務や経営陣で対応していたり、外部に委託しているケースも見受けられる。

法律という専門的な領域を統括する部門であり、高い業務知識と倫理観が求められる部署といえるだろう。

広報

企業の対外的なコミュニケーションを統括する部門であり、自社の情報発信と外部からの問い合わせに対する回答が主な業務となる。企業全体のブランディングを統括する場合も多い。インターネットの発展により、PR活動による企業の認知度向上が直接的に企業業績に影響する場合も増加しており、スタートアップ企業などでは重要なポジションだ。

また、投資家に対するコミュニケーション(IR)を担当する場合もある。

企業の目的達成にはバックオフィスの存在が不可欠

総務と経理は、同じバックオフィスとして円滑な企業活動に資するという共通目的があるものの、業務内容は大きく異なる。また、バックオフィスには総務・経理以外にも様々な業務があり、規模が大きくなればなるほど業務は多様化していく。

企業活動を円滑に行い、企業の目的達成に邁進するためには、顧客との対応を行うフロントだけでなく、バックオフィスに関しても計画的な組織づくりを行っていくことが大切だ。

文・村上克己(中小企業診断士)