決算書はざっと見ただけでその内容を理解することは難しい。決算書を読み解くためには、まず読み方を理解し分析する必要がある。ここでは、決算書の分析手法と財務指標について基本的な部分を説明する。

目次

  1. 決算書の分析とは何か?
  2. 決算書の分析とは?
    1. 決算書分析の着眼点
    2. 決算書の分析方法
  3. 財務指標の種類と読み方
    1. 安全性の主要指標
    2. 収益性の主要指標
    3. 資金繰りの主要指標
  4. 決算書の分析を行った上で総合的な判断をする

決算書の分析とは何か?

決算書の分析の方法とは?多角的に分析して企業の状態を知る
(画像=崇正 魚谷/stock.adobe.com)

決算書とは、会社の決算時における業況を示す計数について、一定のルールに基づいて整理した書類のことであり、会社が決算期を迎えたときに作成する。

決算書を作成する目的は、「会社の業績と獲得した利益を経営陣に報告する」「決算期における税金を計算する」「会社の経営状況を株主・債権者に対して報告する」「会社の配当可能利益を計算する」など、様々だ。

会社の外部の人間にとって、会社の中で起こっていることを分析するためには、決算書の内容を読み解いていくことが最も手っ取り早い方法といえる。

決算書には様々な数字が書かれており、決算書を読み解くにあたっては、その数字の内容を分析することになる。そうすることによって、会社にこの決算期には何が起こっているか、どういう状況であるかを読み取ることができるのだ。

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決算書の分析とは?

単純に決算書の数字を見るだけでは、読み取れる内容に限界がある。そのため、各種の分析手法と指標が用意されている。ここでは、決算書の主な分析手法について説明する。

決算書分析の着眼点

決算書を分析する場合には、まず分析の着眼点をどこに置くかが重要となる。分析の目的によっても着眼点は異なるが、外部の人間が決算書を分析する場合はその企業に対する与信審査が多い。そのため、以下には与信審査の観点から決算書を分析する場合の視点について解説する。

1.安全性

その会社の経営の安定度を図るための視点である。例えば、何か有事が発生した時に経営を継続できる企業体力がどの程度あるか、収益の変動にどの程度耐えられるかについて、主に企業の財務面での余力という観点から分析していく。

2.収益性

その会社の持つ稼ぐ力を見る視点である。収益性には、投下資本に対する収益性すなわち事業のために使用した資金に対するリターン(利益)の割合という観点と、ビジネスとしての利幅の良否(提供する商品・サービスの付加価値の割合)という観点がある。

3.資金繰り

どんな企業も資金が尽きたときに倒産する。そのため、ビジネスの構造上資金繰りにどの程度余裕があるか、というのは重要なポイントとなる。

決算書の分析方法

決算書を分析する場合には、数字の読み解き方によって以下のような手法がある。手法を複数組み合わせながら、仮説をもって検討することでその企業の状況を分析することができる。

1.実数分析

決算書に記載のある実額に対して着目する分析手法である。利益・売上の額についてどのような数字が出ているかを検討し、その金額の絶対額や科目毎の数字のバランスから決算内容について分析する。

例えば、目標としている利益額に対して、現在の利益水準とその乖離額や借入金の金額に対する利益額などが挙げられる。このような分析方法では、単純には数字の良否が判断しにくく、経験豊富な者でないと動向を読み取れない傾向がある。

2.比率分析

決算書に記載されている多数の数字について、その組み合わせから比率を算出し、その比率から決算の内容を分析する手法である。決算書の分析というと比率分析を指すことも多い。

後述する財務指標を中心として、その指標の数値の良否でその企業の状況を分析したり、同業他社・業界平均と財務指標の内容を比較して良否の判定などを行う。

その場合、比較対象となる指標としては下記の指標や各種レポートが挙げられる。

・TKC全国会が集計している「TKC経営指標BAST」
・帝国データバンクが集計している「全国企業財務諸表分析統計」
・東京都産業労働局が公表している「業種別経営動向調査」
・日本政策金融公庫が公表している「小企業の経営指標調査」

上記以外にも各団体が発表している指標などがあるため、それらを参考にするとよいだろう。

また、中小企業基盤整備機構が提供している「経営自己診断システム」による診断や、経済産業省が提供している「ローカルベンチマークツール」を利用した分析なども手段の一つといえる。

3.比較分析

複数年の決算書の比較し、その数字の推移によって企業の状況を分析する手法を指す。企業の決算内容そのものの分析もさることながら、主にその企業の経営状況や環境の変化を捉えるための手法といえる。

一般的には3~5年の決算書の内容を年次で比較することが多いが、場合によってはもっと長い期間で分析したり、1~2年間の月次データの推移によって行うこともある。また、前述の比率分析で算出した財務諸表の数値の推移をもって、企業の状況を分析するケースもある。その際は、比較対象の数字の変動幅や、各種の数字の変動の方向性などを総合的に分析することになる。

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財務指標の種類と読み方

比率分析においては、財務指標の選定とその読み解き方が分析上で重要となる。ここでは、安全性・収益性・資金繰りに関する代表的な指標と、その読み解き方について簡単に説明する。

安全性の主要指標

1.自己資本比率

調達した資本のうち自己資本が占める割合を計算したものである。返済不要である自己資本による調達割合が多いほど資本が安定しており、経営上の有事の際に損失が発生した場合にも債務超過(総資産の額を負債が上回ること)に陥る可能性が低くなる。

適正とされる明確な基準はないが、負債によるレバレッジを効かせる必要性によっては構造的に低くなるため、業種によって適正水準は異なる。

自己資本比率=自己資本(純資産)÷総資産×100 (%)

2.流動比率

流動資産と流動負債の割合を示す指標である。流動資産・流動負債はそれぞれ、短期間(概ね1年以内)での受け取り・支払いが予定される債権および債務を示しているため、短期的な資金の安定性を示す。一般的に100パーセント以上であることが求められる。

流動比率=流動資産÷流動負債×100(%)

3.当座比率

流動資産のうち換金性の高い資産(現預金・売掛金)と流動負債の割合を示す指標である。指標としての性質は流動比率と類似しているが、より一層資金の動きに着目している点が特徴的だ。一般的には100%を超えていれば安全な水準であるといわれている。

当座比率=(流動資産-棚卸資産)÷流動負債×100(%)

4.固定長期適合率

固定資産に対する固定負債と純資産の合計額との割合を指す。固定資産は長期的に資金が固定される投資のことであり、そのために必要な資金の調達方法を示している。固定資産の取得資金に流動負債を利用すると資金回収のバランスが崩れるため望ましくない。

固定資産の取得資金は基本的には返済までの期間が1年以上である固定負債と純資産によって賄われる性格のものであり、通常、この指標は100パーセント以下であることが求められている。

固定長期適合率=固定資産÷(固定負債+純資産)×100(%)

収益性の主要指標

1.総資産経常利益率

事業に投下した全ての資産に対する経常利益の割合を示す指標である。決算期間における企業全体での投資利回りを示しており、総合的な収益性の指標とされている。

総資産経常利益率=経常利益÷総資産×100(%)

2.売上高経常利益率

売上高に対する経常利益の割合を示す指標であり、財務内容を含めた企業全体での事業としての利益率を示している。一定以上の水準が求められており、大手企業であれば最低でも5パーセント程度は確保したいところだ。

売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100(%)

3.売上高総利益率

売上高に対する売上高総利益率の割合を示す指標である。その企業の行っている事業そのものの利益率を指しており、売上に対して顧客に提供している価値の高さを示す。卸売業であれば数パーセントとなることもあるが、純粋なサービス業であれば100パーセントになることもあり、業種業態によって大きく異なる指標でもある。

売上高総利益率=売上総利益率÷売上高×100(%)

4.売上高成長率

対前期比での売上高の成長率を示す指標のことである。事業規模の成長力を示しており数値が高いほどよいとされるが、成長率が高すぎる場合には、それに見合う体制整備が行われているかについても検討することになる。

売上高成長率=(当年度売上高-前年度売上高)÷前年度売上高×100(%)

資金繰りの主要指標

1.売上債権回転期間

売上債権の平均回収期間を示す指標である。売上として計上しても現金化するまでは資金繰りには貢献しないため、この期間の長短が資金繰りに大きな影響を与える。また、業界慣行より不自然に長期化している場合には、何らかの問題が発生している場合もあるため注意が必要だ。その企業における平均的な債権回収に要する期間の1.5~2倍程度の範囲内になるのが通常である。

売上債権回転期間=売掛債権(売掛金・未収金など)÷売上高÷12(ヵ月)

2.仕入債務回転期間

仕入債務の平均支払期間を示す指標である。売上原価として計上しても、仕入債務を支払うまでは現金が流出しないため、この期間も資金繰りに大きな影響を与える。

仕入債務回転期間=仕入債務(買掛金・未払金など)÷売上原価÷12(ヵ月)

3.在庫回転期間

決算書に計上された在庫の平均滞留期間を示す指標である。在庫は事業運営上必要なものではあるが、過剰に増加した場合には資金が滞留して資金繰りを圧迫する。この指標から、在庫が月商の何ヵ月分程度積み上がっているかを見ることで、資金繰りへの影響度と不良在庫の有無について分析できる。

在庫回転期間=棚卸資産÷売上高÷12(ヵ月)

4.現預金月商倍率

手元の現預金の月商に対する割合を示す指標である。企業活動ではいつでも突発的な事象が発生する可能性があり、そのような緊急事態への対応には現預金をある程度保有しておく必要がある。

この指標によって、売上が数ヵ月程度なくなっても事業継続できるかを検討することができるが、多すぎる手元現預金は資産効率を悪化させるため、多ければよいという指標ではない。1ヵ月程度が最低水準であり、2~3ヵ月がバランスの取れた水準といえるだろう。

現預金月商倍率=現預金÷売上高÷12(ヵ月)

決算書の分析を行った上で総合的な判断をする

以上、決算書の分析における着眼点と手法、代表的な財務指標について述べた。色々な分析手法があるが、決算書の分析によってわかる各種指標はあくまでも断片的な情報に基づくものであり、分析手法だけで全てが明らかになるわけではない。

しかしながら、漫然とした分析ではわからない重要な気づきが得られることもあるため、様々な分析を行った上で総合的な判断をすることが大切だ。

※記事中の法律・税制などに関する記載は2020年7月時点のものであり、 現在は法律等が改正されている場合が考えられますのでご注意ください。

文・村上克己(中小企業診断士)