これまで金融業といえば、銀行に代表されるように旧型のビジネスモデルを行う企業がメインであり、新規参入が難しい業界とされてきた。それが2010年代後半を主に、大きく変容を見せてきた。

変容の中心にあるのは「フィンテック(FinTech)」、金融(Finance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた新しいビジネスモデルだ。融資、決済、資金運用、そして通貨というこれまでの金融のあらゆる分野に進出しようとしているフィンテック。その最先端を紹介する。

目次

  1. ここ数年成長が加速しているフィンテック
  2. 世界の最先端金融ベンチャーは大きく分けて3種類
    1. 1.「資産運用」の金融ベンチャー
    2. 2.「決済」の金融ベンチャー
    3. 3.「融資」の金融ベンチャー
  3. 今後も発展が予想されるフィンテックに注目

ここ数年成長が加速しているフィンテック

金融ビジネスが新時代に突入!2020年の「金融ベンチャー」最先端を知る
(画像=Jacob Lund/stock.adobe.com)

今、多くのベンチャー企業やスタートアップが立ち上がっており、それらへの投資も増えている。その中でも最も勢いのある分野の一つといえば、金融ベンチャー・フィンテックを抜きに語ることはできないだろう。

世界的に見ても、ここ数年のフィンテックの伸びは目を見張るものがある。世界のフィンテックのスタートアップ資金調達額を見てみると、2010年には342件、金額は総額20億ドルにも満たない水準であったが、2018年になると3,251件、金額も550億ドルを超えるなど、金額ベースでは25倍以上に伸びている。2018年には、アリババ傘下のアント・フィナンシャルグループの、140億ドルにものぼる大型の資金調達があったとはいえ、それを除いても、金融ベンチャーに資金が集まっているのである。

エリアで見ると、米国に次ぎ中国が大きな存在感を出している。日本も投資件数は63件と世界的に見ると10位にとどまっているが、投資額は5億ドルを超え、2017年対比でも金額ベースで5倍に成長している。このことからも、有望な企業が多いといえるだろう。

フィンテックの中身を見てみると、やはり資産運用、決済、融資の順に投資額が大きくなっており、これまで銀行を中心に金融業界が担っていた機能がフィンテック企業にとって代わられようとしていることがうかがえる。

世界の最先端金融ベンチャーは大きく分けて3種類

では、世界の金融ベンチャーにはどのような企業があって、どのような取り組みをしているのだろうか。先ほど紹介した資産運用、決済、融資の順に、それぞれ事例を交えて紹介していこう。

1.「資産運用」の金融ベンチャー

まずは2018年に最も投資額が多かった、資産運用の金融ベンチャーをみていく。

・ロボアドバイザー

資産運用の分野で先行しているのは、ロボアドバイザーだろう。日本だとWealthNaviやTHEO、米国だとBetterment、Nutmegなどがサービスとしてよく知られている。

日本ではまだなじみがないかもしれないが、ロボアドバイザーの市場規模は世界的に拡大している。全世界ベースで見ても、ロボアドバイザーを活用する投資家の数は過去3年で5.5倍に増えているという。その中でも、全体の75%を占めるという米国では、2020年には市場価値が1兆ドルを超えると推測されるなど、資産運用の中で確実な地位を占めるようになってきているのだ。

基本的なビジネスモデルは日本も海外も同じで、ノーベル賞を受賞した理論に基づき、アルゴリズムを駆使して最適なリターンを求めることを目標としている。顧客にアンケートをとることで、その顧客に合わせた最適な商品を提案するという設計になっている。

顧客にしてみれば、これまで感覚で投資していた世界から、ある程度合理的に投資ができるというメリットや、証券の対面営業から解放されるというメリットがある。現在、手数料は日本のロボアドバイザーで約1%前後と決して安いわけではないが、今後規模が拡大するにつれて手数料の低減が起きること、さらにユーザー数が広がることが予想されている。

・支出管理アプリケーション

もう一つの大きな流れは、支出管理アプリケーションだろう。あらゆる金融機関の口座を一元管理することで収入・支出の流れを整理し、家計などの改善に繋げることができるサービスだ。日本では、マネーフォワードやマネーツリーなどが同分野を牽引している。いずれももともとは家計簿から始まったサービスだ。

一方海外では、口座情報をまとめるサービスから始まっているのが特徴だといえるだろう。アメリカのMintやシンガポールのHomePayなどが代表的なものとして挙げられる。日本と異なるのは、マネーフォワードなどが法人向けサービスを提供し収益の柱としているのに対し、海外ではUX(ユーザーエクスペリエンス)にこだわったり、ゲーム機能を付加価値としてつけたりと、あくまでもBtoCを追求するサービスが多いのが特徴だ。

基本的に、支出管理アプリケーションはSaaS型のビジネスモデルであり、サブスクリプション会員数が増えれば増えるほど、収益が拡大していく傾向にある。SaaSビジネスは粗利の高さやストック型のビジネスであることから、投資対象として注目されており、そうした背景も手伝って支出管理サービスは今後も伸びていくことが予想される。

2.「決済」の金融ベンチャー

次に、決済の金融ベンチャーについて紹介する。

・QR決済

この分野で最も競争が激しく、プレイヤーがしのぎを削っているのは、QRコードによる決済だろう。日本だけでも、楽天ペイやメルペイ、LINEペイなど、多くのプレイヤーが存在する。世界的に見れば、インドのPayPay(日本でも知名度が上がってきているが、PayPayはもともとインドのサービスである)や、中国のアリペイなどが大きなプレイヤーとして挙げられる。

QR決済については、興味深いデータがある。それは、実はアメリカではQR決済がそこまで普及していないということだ。米国の決済の約7割はキャッシュレス決済で、先進国の中でも高い水準にあるのだが、メインプレイヤーはクレジットカード、デビットカードであり、QR決済等はあまり普及していない。逆に中国は、モバイル決済の90%以上がQR決済で行われているという。

この違いは、クレジット決済の歴史によるところが大きいだろう。アメリカはご存じの通り、クレジットカード先進国だ。中国や新興国はクレジットカードがそこまで普及しているとはいえないが、スマートフォンの利用人口が多いこともあり、スマートフォンで気軽に利用できるQR決済が普及している。

QR決済は、今後もスマートフォン利用人口が多い新興国を中心に、さらなる発展を遂げていくことが予想される。さらに世界的に成長していくには、今後アメリカでの普及がなされるかどうかがカギとなるといえそうだ。

・仮想通貨

もう一つ、決済手段として高い注目を集めているのは、ビットコインをはじめとする仮想通貨だ。2008年にはじめてビットコインが登場して以来、多くの種類の仮想通貨が生まれている。現在は投機的な資産である側面が強いが、もともとは、決済の手段として生まれたものだ。ブロックチェーン技術を用いてすべての取引を記録することで不正が起きづらく、さらにきわめてコストが低く高速で決済取引が行えるというメリットがある。

しかしながら、仮想通貨が決済手段となるには、もう少し時間がかかるかもしれない。理由としては、まず政府が仮想通貨の発展に対して否定的であることが挙げられる。通貨の発行は中央銀行が持ついわば「特権」であり、その根底が覆されることを危惧しているのだ。

またもう一つの理由として、「仮想通貨の安全性」が人々に浸透していないことが挙げられる。過去に起こった取引所の破綻などの事件が心理的に「仮想通貨=危険」というイメージをもたらしているのだ。

仮想通貨は現実の通貨に比べ、より概念的でありわかりづらいのは事実だ。そういった意味で、これからさらに仮想通貨が発達するためには、国または機関の信用による後押しが必要となってくるだろう。

3.「融資」の金融ベンチャー

最後に、融資の金融ベンチャーについてみていこう。

・ソーシャルレンディング

融資に変わる金融ベンチャーの代表格は、ソーシャルレンディングだ。ソーシャルレンディングは、日本だとSBIソーシャルレンディングや、クラウドクレジットなどが有名だ。しかし、日本のソーシャルレンディングの市場規模は、2019年で2,000億円前後といわれており、まだそこまで大きいものではない。

一方でアメリカでは、2015年時点ですでに2兆5千億円、ヨーロッパでも7000億円、中国もすでに10兆円以上のマーケットがあるとされる。アメリカのLending Club(レンディングクラブ)や、中国のYirendai(宜人貸)などが大手のプレイヤーとして知られている。

現在日本では、BtoB、つまり法人向けの融資案件が多いのが特徴だが、海外ではBtoC、個人向けのソーシャルレンディングが多いのが特徴だ。今後日本でも貸出先の多様化が進んでくれば、さらに事業規模は大きくなってくる可能性もあるのではないだろうか。

・個人スコア

もう一つ、今後伸びしろがありそうなのが個人スコアだ。個人スコアとは、個人情報をベースに個人の持つ信用力をAIにより可視化したもので、これをベースに、金融機関で融資を受けることができるかどうかや、住宅ローンの金利が決まることもある。アメリカのFICOや、中国の芝麻信用などがよく知られており、日本では、J.Scoreなどが取り組みを始めている。

ITがさらに普及してより多くの個人情報が取れるようになると、こういった個人スコアの重要性もさらに上がってくることが予想される。実際、中国では、芝麻信用が多くの人に普及しており、それによりデポジットの金額が変わることもあるという。

倫理的な問題等はあるにせよ、今後AIの進化でさらなる発展が期待できそうな分野だといえるだろう。

今後も発展が予想されるフィンテックに注目

金融というものは、資本主義の潤滑油であり、金融なしに現代経済を語ることはできない。また金融サービスは、我々が想像している以上に、多岐にわたっており規模が大きいものだ。今後、この部分がテクノロジーにより、フィンテックに置き換わっていくことを考えると、フィンテック自体はさらに大きくなっていくだろう。近い将来、金融のキープレイヤーが銀行から金融ベンチャーに変わるかもしれない。今後の動向にも注目していきたい。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部