店舗拡大や新商品の生産といった事業拡大や起業には大きな夢があるものだが、現実的にみれば多額の資金も必要である。

そのための資金を初めから自力で用意できる人は少なく、多くの場合は銀行からの借入に頼ることになる。平成26年度(2014年)の経済産業省企業金融調査によれば、企業の資金調達のうち70%以上は借入金(長期借入・短期借入)である。

本記事では、設備資金の融資を受けるために必要なポイントを具体的に紹介していく。

匿名犬
MF
大学卒業後、外資系ソフトウェア企業などを経て、コンサルティング会社にコンサルタントとして勤務。これまでのキャリアの中で、製薬会社のマルチチャネルマーケティング支援、鉄道座席予約データのアナリティクス支援、鉄道会社のキャッシュレス戦略立案、キャッシュレスツール利用者心理のアンケート調査・分析等に従事。勤務の傍ら、大学院にて経営学を学ぶ。得意分野はビッグデータ活用、マーケティング業務プロセス改革。

目次

  1. 設備資金と運転資金、それぞれの使い道・融資条件
    1. 設備資金とは?
    2. 運転資金とは?
    3. 融資を受ける際の設備資金と運転資金の違い
  2. 設備資金の融資を受けるには?金融機関に求められる資料や説明
    1. 設備資金の融資申し込みに必要な資料
    2. ポイント1:なぜ設備資金が必要かを明確にする
    3. ポイント2:設備投資による効果、融資額の妥当性を示す
    4. ポイント3:不動産物件の場合は仮押さえしておいてから融資申し込み
  3. 設備資金の融資を受ける際の4つの注意点
    1. 1:使い道を変えてはいけない
    2. 2:設備投資をした後の領収書を残す
    3. 3:多すぎる融資額、短すぎる返済期間はNG
    4. 4:返済計画、事業計画をきちんと立てる
  4. 投資が必要である根拠は言葉・数字でしっかり表そう

設備資金と運転資金、それぞれの使い道・融資条件

設備資金の融資を受けるには?運転資金との違いや申し込み手続きの注意点、ポイントを解説
(画像= TMLsPhotoG/stock.adobe.com)

スムーズに融資を受けて思い描いたとおりに事業を進めていくには、設備資金の融資申し込みにおける手続きの特徴を把握して、しっかりと準備をすることが重要である。

設備資金、運転資金についてそれぞれ詳しくみていこう。

設備資金とは?

設備資金とは、設備、施設等の購入や契約といった設備投資のために、一時的に発生する資金のことである。一般的に設備投資は多額の資金を投入するため、企業活動に対して大きな影響を与える。そのため、投資の意思決定を慎重に行う必要があるのはもちろん、銀行も融資には慎重になる。

設備投資が必要となるのは、以下のようなケースだ。

  • 創業
  • 製造用機械の導入
  • 新しい工場の開設新しい店舗のオープン
  • 店舗や事務所の移転
  • 店舗の改装
  • 事務所で必要な機器の購入
  • 車両の購入
  • 備品の購入
  • システム導入、バージョンアップ

運転資金とは?

運転資金とは、設備資金以外の使い道で、会社が事業を続けていくために必要となる資金のことだ。

運転資金には、使い道別に主に以下のようなものがある。

 経常運転資金:人件費や材料費など、恒常的に発生する費用の支払いに充てる資金  季節運転資金:季節性イベントなどに伴って増加する費用の支払いに充てる資金  増加運転資金:売上の増加に連動して増える費用の支払いに充てる資金  その他資金:納税や株式の配当、賞与などの支払いに充てる資金

融資を受ける際の設備資金と運転資金の違い

設備資金と運転資金では、返済期間や提出資料、借りやすさ、審査方法といった点が異なる。

返済期間は一般的に運転資金の方が短めで、具体的には3~7年あたりとなる。

一方で、設備資金は投資効果がすぐに売上に反映されるとは限らないため、返済期間が長めに設定できる。具体的には、減価償却との兼ね合いにより10年~20年といった期間になる。

しかし、設備資金の融資では設備投資の必要性や効果について説明する必要があるため、一般的に多くの提出資料を求められ、審査も厳密になる。

設備資金の融資を受けるには?金融機関に求められる資料や説明

融資を受ける際には、金融機関に資料や書類などを提出する必要がある。どんな資料が必要になるか、そして提出資料の作成においてどんなことを押さえておくべきかをみていこう。

設備資金の融資申し込みに必要な資料

銀行に融資の相談をすると、以下のような書類の準備を求められることが一般的である。

①何にいくら使うために借りるのかを示す資料

まず投資予定の設備の見積書など、金額を確認できる書類が必要になる。相談する際は仮のものでも問題ないが、最終的な融資実行までには正式なものが求められる。

②今後の事業の見通しを示すための資料

事業計画書など、投資による影響を含めた今後の損益や資金繰りの計画を数字で確認できる書類で実現可能性の高い計画を示し、「これなら期間内に返済できそうだ」と銀行を納得させる必要がある。

現在の経営状況が悪化していて、その状況を改善するための投資であれば、経営改善計画の提出を求められるケースもあるだろう。

③その他の資料

すでに営業している企業であれば、会社説明資料など、事業内容を理解してもらうための資料があると良い。併せて、直近3期分程度の決算書(損益計算書、貸借対照表)などにより、企業の現在の経営状況を示すことも必要だ。

これから創業する場合は、創業計画書の提出が求められる。

ポイント1:なぜ設備資金が必要かを明確にする

設備資金の融資を受けたければ、金融機関に対して「なぜ設備資金が必要で、どんな効果があるのか」をしっかりと説明することが重要だ。

通常、設備投資には多額の現金が必要になることから、効果が低い投資をすれば、財務面の安全性が一気に崩れてしまう可能性があるためである。

金融機関は確実に返済を受けられる場合にしか融資をしたくないので、そのようなリスクがないかどうか、確実に把握したいのだ。

そして、融資の必要性や効果の説明に説得力を持たせるためには、資料による確かな裏付けが必要である。明確な説明と根拠となる資料が提示できれば、銀行と良い関係を構築することができ、今後の経営もスムーズになるだろう。

ポイント2:設備投資による効果、融資額の妥当性を示す

銀行への説明で最も重要なことは、「必要な投資なのかどうか」「設備投資によってどのような効果が得られるか」といった銀行の疑問に答えることである。特に設備投資により得られる効果は、数値でしっかりと示したい。

また、融資額が妥当な金額であることも示す必要がある。妥当な融資額には、絶対的な正解がない。世間的な相場感に、そのときの企業の経営状況や経営者の力量を加味して判断されることになる。

世間的な相場は、例えば坪単価、立地とのバランス、業界業種といったものが判断のよりどころとなる。

融資を申し込む経営者としては、希望する額がなぜ妥当だと思うのか、明確な根拠と共に説明できるようにしておくことが望ましい。

ポイント3:不動産物件の場合は仮押さえしておいてから融資申し込み

設備投資の対象が不動産物件である場合は、対象の不動産が確定していることが融資の前提となるが、意中の物件は他の人にも需要があるかもしれない。融資の決定を待っていると、他の人に先を越されて契約されてしまうリスクがある。

良い物件を見つけたときは、仮押さえしておいてから融資の相談をするという段取りにすれば安心だ。先に契約まで済ませてしまうと、万が一融資が下りなかったときに困ってしまうので、あくまでも仮押さえにとどめておこう。

物件を仮押さえする場合、手付金などが必要となる可能性があるので、ある程度の資金は自力であらかじめ準備しておくと良い。

設備資金の融資を受ける際の4つの注意点

晴れて融資を受けられるとなったときも、いくつか注意したいことがある。4つの注意点を詳しく解説していく。

1:使い道を変えてはいけない

「運転資金として融資を受けたお金を設備投資に使った」などということがあると、会社の信用力が大きく損なわれる。場合によっては、今後銀行からの融資を受けづらくなってしまう可能性がある。

信用力を維持するために、銀行に対しては必ず「正直であること」を貫こう。

2:設備投資をした後の領収書を残す

設備資金として借入をした場合は、資金の使途違反がないことを銀行に示すために、設備投資をした後の領収書は必ず残しておこう。万が一、銀行から疑いを持たれた際に役立つはずだ。

3:多すぎる融資額、短すぎる返済期間はNG

通常、設備投資は利益が出ることを見込んで行う。せっかく設備投資を行ったのに、無理な返済計画のために資金繰りが苦しくなって、倒産でもしてしまったら元も子もない。

融資額が多すぎたり、返済期間が短すぎたりすると、途中で資金繰りが苦しくなってしまう可能性が高い。余裕をもって着実に返済できるよう、無理のない返済額と返済期間を設定するように心掛けよう。

4:返済計画、事業計画をきちんと立てる

設備投資の際には、利益がいつ、どれくらい見込めるか、返済額に見合う利益が出せるのかを把握しておくことが重要だ。

そのためには、返済計画、事業計画をきちんと立てておこう。これは、銀行に説明するためでもあるが、そもそも設備投資の実行に関する意思決定の段階でやっておかなければならないことである。

投資の是非を決めるためには、設備投資によって見込まれる今後数年間のコストとリターンを洗い出さなければならない。それには、詳細な返済計画や事業計画の数字が必要となってくる。

投資によるコストとは、初期投資額、メンテナンスなどの維持費、税金などが該当する。リターンは、例えば製造業なら生産量の増大や品質向上による売上増加分、効率化による原価低減分などが該当する。

こうした投資によるリターンからコストを差し引いて求めたフリーキャッシュフローをもとに、時間的価値を考慮して計算して投資の経済性を評価することが一般的である。

コストに対してリターンの方が大きいという計算結果なら「投資する」、逆なら「投資しない」という意思決定となる。この意思決定プロセスがしっかりしていれば、銀行への説明も自ずと説得力を持つだろう。

投資が必要である根拠は言葉・数字でしっかり表そう

設備資金は運転資金と比較して必要となる金額が大きい分、経営へのインパクトが大きく、融資申し込みに伴う説明や資料準備に手間がかかる。しかし、返済期間を長めに設定することができる点は運転資金と比べて有利である。

設備資金の融資申し込みの際には、「なぜ設備資金が必要か」「設備投資によってどんな効果が得られるか」「何にいくら使うのか」「金額は妥当か」といった説明を尽くすことが求められる。併せて、その根拠となる資料を提示することによって、説明に説得力を持たせることが重要である。

まずは自身の中で上記の疑問に向き合い、真摯に答えを探ることだ。その中で、やはり投資は不適切だと判断すれば勇気をもってやめる決断も必要であるし、投資の適切さについてますます確信が深まるというなら、その根拠を言葉や数字で表現してみよう。

そうすることによって銀行への説明が説得力を増し、融資を受けられる可能性は高まるだろう。設備資金のスムーズな調達が、ビジネスのさらなる成功につながることを願っている。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE 編集部