ベンチャー企業の経営者などの場合なら従業員の給与計算を自分で行っているケースも多いだろう。給与や賞与の計算を行う際には、所得税を源泉徴収して税務署へ納付し年末調整を行って過不足を精算しなければならない。給与計算に間違いは許されないため、しっかりとした知識が必要となってくる。そこでこの記事では、所得税の給与計算方法について基本を徹底的に解説していく。

目次

  1. 所得税の給与計算とは?
  2. 所得税の計算方法
    1. 課税所得
    2. 所得税率と控除
    3. 税額控除
  3. 給与・賞与の源泉徴収税を計算する方法
    1. 月給の源泉徴収税額を計算する方法
  4. 賞与の源泉徴収税を計算する方法
  5. 所得税の給与計算は確実に行おう

所得税の給与計算とは?

所得税の給与計算方法は?控除など基本の計算を徹底的に解説!
(画像=Андрей Яланский/stock.adobe.com)

所得税とは、給与から非課税の手当や所得控除を差し引いた金額にその金額に応じた税率で課される税金だ。会社の従業員の場合には「源泉徴収」を会社が一括して給与から天引きする形で行うこととなっている。源泉徴収税は翌月の10日までに税務署に対して納付することが必要だ。ただし源泉徴収税は、納付すべき所得税のおよその金額となっている。

そのため毎年12月に「年末調整」を行い正しく計算した所得税の金額と源泉徴収された金額との差額を精算するのだ。なお会社が源泉徴収を行うのは従業員に限らない。以下についても源泉徴収を行うことが必要だ。

  • 弁護士や公認会計士、司法書士などへの報酬
  • フリーランスのライターへ支払った原稿料など

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所得税の計算方法

所得税は、課税所得に税率を乗じて税額控除を差し引いた以下の算式で計算される。

  • 所得税=課税所得×所得税率-税額控除

この課税所得、所得税率、および税額控除のそれぞれについて詳しく見ていこう。

課税所得

課税所得は、給与の支給総額(基本給、残業代、および各種手当)から各種所得控除を差し引いた以下の算式で計算される。

  • 課税所得=給与の支給総額-非課税の手当-所得控除

手当のうち非課税となるものは、以下のものだ。

  • 通勤手当のうち一定金額以下のもの
  • 転勤や出張などの旅費のうち通常必要と認められるもの
  • 宿直や日直手当のうち一定金額以下のもの

また所得控除には以下のようなものがある。

・給与所得控除
給与所得控除とは、事業所得者における必要経費に相当するものだ。通勤用の衣服や筆記用具などを自己負担する際に、それらが経費として認められる。給与所得者と事業所得者の公平性を保つために設けられている控除といえるだろう。ただし事業所得者が確定申告するように従業員のそれぞれが経費の一つ一つを計上していたのでは、会社の経理処理が煩雑になりかねない。

そのため給与の支給額に応じた一定額を差し引くこととされている。給与所得控除の額は、以下の通りだ。(2020年分以降)

所得税の給与計算方法は?控除など基本の計算を徹底的に解説!
出典:国税庁『No.1410 給与所得控除』

・基礎控除
基礎控除は、すべての納税者に認められた控除だ。2019年分までは一律で38万円とされていたが、2020年分からは「合計所得金額(給与収入から給与所得控除を差し引いたもの)」により以下のように変更されている。

所得税の給与計算方法は?控除など基本の計算を徹底的に解説!
出典:国税庁『No.1199 基礎控除』

・配偶者控除
配偶者控除は、配偶者の合計所得金額が48万円以下(2020年以降。給与のみの場合は収入が103万円以下)の場合に受けられる。配偶者控除の金額は以下の通りだ。

所得税の給与計算方法は?控除など基本の計算を徹底的に解説!
※老人控除対象配偶者とは年齢が70歳以上の配偶者のこと
出典:国税庁『No.1191 配偶者控除』

・配偶者特別控除
配偶者の合計所得金額が48万円を超えているため配偶者控除を受けられない場合でも配偶者の所得に応じて133万円まで配偶者特別控除を受けられる。配偶者特別控除の金額は以下の通りだ。(2020年以降)

所得税の給与計算方法は?控除など基本の計算を徹底的に解説!
出典:国税庁『No.1195 配偶者特別控除』

・扶養控除
以下の条件を満たす配偶者以外の親族を扶養している場合には、38万~63万円の扶養控除が認められる。

1.16歳以上であること
2.合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)

・社会保険料控除
従業員本人や配偶者、親族の社会保険料を支払った場合には、支払った金額が控除される。控除の対象となる社会保険は、健康保険や国民年金、厚生年金、国民健康保険、高齢者医療保険、介護保険、労働保険などである。

・雑損控除
災害や盗難、横領などによって資産に損害を受けた場合は、損失額に応じた金額の控除が認められる。

・医療費控除
医療費を支払った場合には、10万円を超える部分について最高で200万円まで控除が認められる。また医療費控除の特例として2017年から「セルフメディケーション税制」が創設された。例えばロキソニンテープなど特定一般用医薬品を購入するための費用を支払った場合には、合計額が1万2,000円を超える部分について8万8,000円を限度として控除が認められる。

・生命保険料控除
生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合には、最大で合計12万円まで控除が認められる。

・地震保険料控除
地震保険料を支払った場合には、最大で5万円までの控除が認められる。ただし火災保険などの損害保険については、一定の要件を満たす長期損害保険契約など以外のものは認められない。

・小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済の掛け金やiDeCo(イデコ)などの個人年金の掛け金などを支払った場合には、支払った額の全額を控除することが認められる。

・寄附金控除
国や地方公共団体(ふるさと納税を含む)、特定公益増進法人などに対して「特定寄附金」を支払った場合には、支払った金額に応じた控除が認められる。また政治活動に関する寄附金、認定NPO法人などに対する寄附金、および公益社団法人などに対する寄附金のうち一定のものについては、所得控除ではなく税額控除を選択することも可能だ。

・障害者控除
納税者本人や配偶者、扶養親族が一定の要件を満たす障害者である場合には、障害者控除が認められる。控除の金額は、障害の程度などにより27万~75万円。

・寡婦(寡夫)控除
以下の条件に当てはまる女性は「一般の寡婦」として27万円が控除される。

  • 夫と死別または離婚したあと婚姻をしておらず生計を一にする子供がいる
  • 合計所得金額が500万円以下である

一般の寡婦のうち子供が扶養親族に該当する場合には「特別の寡婦」として35万円の控除が認められる。また以下の条件に当てはまる男性は「寡夫」として27万円の控除が認められる。

  • 妻と死別または離婚したあと婚姻をしておらず生計を一にする子供がいる
  • 合計所得金額が500万円以下である

・勤労学生控除
合計所得金額が75万円以下(2020年以降)などの条件に当てはまる学生は、27万円の控除が認められる。

所得税率と控除

給与の支給総額から非課税の手当および各種控除を差し引いて課税所得を算出したら、いよいよ所得税を求めることとなる。所得税は、課税所得に税率を乗じたうえでそこからさらに所定の控除額を差し引くことにより算出可能だ。所得税を算出する際の税率と控除額は以下の通りである。

所得税の給与計算方法は?控除など基本の計算を徹底的に解説!
出典:国税庁『No.2260 所得税の税率』

税額控除

所得税の控除には、算出した税額から差し引く「税額控除」ができるものもある。税額控除は、前述した課税所得を求めるために給与収入から差し引く所得控除よりも節税効果が抜群だ。税額控除ができるのは以下のようなものである。


税額控除の種類
内 容
配当控除 国内企業から配当所得がある場合
外国税額控除 外国で生じた所得に、すでにその国の所得税が課税されている場合
政党等寄附金特別控除 政党または政治資金団体に対して寄附金を支払った場合
認定NPO法人等寄附金特別控除 認定NPO法人などに対して寄附金を支払った場合
公益社団法人等寄附金特別控除 公益社団法人や学校法人、社会福祉法人などに対して寄附金を支払った場合
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除 住宅の新築、取得、または増改築などをするために住宅ローンを組んだ場合
住宅耐震改修特別税額控除 バリアフリー改修工事などを行った場合
認定住宅新築等特別税額控除 認定長期優良住宅などを新築または取得した場合

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給与・賞与の源泉徴収税を計算する方法

従業員の給与から源泉徴収税を計算する方法を見てみよう。源泉徴収税の税額を計算するためには、国税庁のホームページにある「源泉徴収税額表」を使用する。2020年分の源泉徴収税額表は下のURLにある。
>>2020年分 源泉徴収税額表

源泉徴収税額表には、以下の3種類がある。

  • 月給についての源泉徴収税を求める「月額表」
  • 日給や週給についての源泉徴収税を求める「日額表」
  • 賞与の源泉徴収税を求める「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」

ここから月給と賞与について源泉徴収税額を計算する方法を見てみよう。

月給の源泉徴収税額を計算する方法

2020年分の源泉徴収税額表の「月額表」は以下の通りだ。

所得税の給与計算方法は?控除など基本の計算を徹底的に解説!
出典:国税庁

この表中、扶養控除等申請書を提出した従業員については「甲」の欄を、提出していない従業員については「乙」の欄を使用して源泉徴収税額を求める。社会保険料などを控除したあとの給与の額が「9万円」の場合、源泉徴収税額は以下の通りだ。

  • 扶養親族等が0人の甲欄適用者:230円
  • 扶養親族等が1人以上の甲欄適用者:0円
  • 乙欄適用者:3,200円

賞与の源泉徴収税を計算する方法

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」は以下の通りである。

所得税の給与計算方法は?控除など基本の計算を徹底的に解説!
出典:国税庁

この表は、月額表とは異なり賞与の額と扶養親族の人数から「賞与の金額に乗ずべき率」を求めることが必要だ。例えば扶養親族が「2人」で賞与が「25万円」の場合なら、扶養親族2人の欄の「133千円以上、269千円未満」に該当することとなるため「賞与の金額に乗ずべき率」は「2.042%」となる。したがって賞与に対する源泉徴収税額は、以下のように算出される。

  • 25万円(賞与の額)×2.042%(乗ずべき率)=5,105円

所得税の給与計算は確実に行おう

給与や賞与の源泉徴収税額は、税額表から簡易的に求め所得税の最終的な計算は年末調整の際に行う。所得税を算出するためには、まず給与の支払総額から非課税の手当と各種控除を差し引いたうえで課税所得を算出する。次に課税所得に税率を乗じて控除額を差し引きさらに税額控除があればそれを差し引く。

所得税の計算は、多少複雑にはなるものの難しいことはない。確実に計算し間違いのない給与を従業員に支払おう。

文・高野俊一(ダリコーポレーション ライター)