マーケティング戦略はビジネスを有利に進めるためには欠かすことができないものだ。マーケティング戦略は「環境分析や競合調査」と「ターゲットや具体的な施策の決定」の、大きく2つのステップで行われ、それぞれについて多くの分析手法が開発されてきている。この記事では、経営者が最低限知っておきたい、ビジネスに役立つマーケティング手法7選を紹介したい。

目次

  1. 環境分析や競合調査のための手法
    1. 外部環境を把握する「PEST分析」
    2. 業界の環境分析ができる「3C分析」
    3. 消費者のニーズを知るための「4C分析」
    4. 自社のチャンスと課題を整理する「SWOT分析」
  2. ターゲットや具体的な施策を決めるための手法
    1. ポジショニングを決める「STP分析」
    2. ターゲットへの具体的な施策を決める「4P分析」
    3. リソースを効果的に配分できる「バリューチェーン分析」
  3. マーケティング手法を活用してビジネスを有利に進めよう

環境分析や競合調査のための手法

マーケティング手法7選!経営者が知っておきたい、ビジネスに役立つ手法まとめ
(画像=sitthiphong/stock.adobe.com)

マーケティング戦略を策定するにあたっては、最初に環境分析や競合調査を行うのが一般的だ。それらの分析手法を見ていこう。

外部環境を把握する「PEST分析」

「PEST分析」は外部環境を把握するためのマーケティング手法だ。「PEST」の名称は、「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」および「Technology(技術)」の頭文字から取られており、PEST分析は外部環境をこの4つの要因から分析する。ビジネスは外部環境に大きく影響を受けるため、マーケティング戦略策定においてまず外部環境分析を行うことは非常に重要だ。

【PEST分析の各要因】

  • Politics(政治)…法律や条例、規制、税制、政治組織、圧力団体など
  • Economy(経済)…景気や経済成長率、物価、株式相場、為替相場の変動など
  • Society(社会)…人口バランス、ライフスタイル、流行、社会的インフラ・事件・イベントなど
  • Technology(技術)…技術の進歩や革新など

【PEST分析の事例:中国の通信機器大手「ファーウェイ」に対する政治的要因】

トランプ米政権は「中国政府のスパイ活動に使われる恐れがある」として、ファーウェイなど中国通信機器大手2社に対し、政府の補助金を使っての調達を禁止した。また、米国製の半導体チップを同社に輸出することを禁じる措置を発表した。EUも、米国が求める完全排除は求めていないものの、リスクのある企業を排除できる規制の整備を加盟国に促している。

業界の環境分析ができる「3C分析」

「3C分析」は業界内の環境分析を行うための手法だ。経営コンサルタント 大前研一氏が提唱したもので、「Customer(顧客・市場)」「Competitor(競合)」および「Company(自社)」の3つの「C」からその名称が付けられている。業界内における外部要因である顧客・市場と競合、および内部要因である自社を考え合わせることにより、自社の強みと弱みを分析することができる。

【3C分析の各要因】

  • Customer(顧客・市場)…市場の規模や成長性、顧客のニーズ・消費動向、購買動向など
  • Competitor(競合)…競合各社のシェアとその推移、特徴、業界ポジション、考えうる新規参入や代替品の脅威など
  • Company(自社)…自社の既存事業の戦略や売上・シェア・商品ラインナップ・強みと弱み、経営状態に関する強みと弱みなど

【3C分析の事例:私鉄沿線で開業している個人経営の喫茶店】

  • 顧客・市場 …コーヒー市場の規模は長期的には増加傾向で、国内の消費者はコーヒーを飲むことが習慣になりつつある
  • 競合 …ドトールやスターバックスなどの大手コーヒーチェーンのほか、ファミレスやコンビニなど
  • 自社 …大学生やビジネスマンなどが多い競合に対して主婦層をターゲットにした落ち着いた雰囲気にするなど

消費者のニーズを知るための「4C分析」

「4C分析」は消費者のニーズを知るための手法だ。「Customer Value(顧客価値)」「Cost(顧客コスト)」「Convinience(利便性)」および「Communication(コミュニケーション)」の4つの「C」からその名前が付けられている。

【4C分析の各要因】

  • Customer Value(顧客価値)…機能的価値や、感情・自己イメージの投影などの情緒的価値など
  • Cost(顧客コスト)…距離や時間・価格などの物理コスト、および不安感などの心理コスト
  • Convinience(利便性)…アクセスのしやすさ、買いやすさ
  • Communication(コミュニケーション)…各種イベントやSNSなどでのコミュニケーション

【4C分析の具体的事例:サッポロビール「ホワイトベルク」】

  • 顧客価値 …ベルギーのホワイトビールの味を手軽に楽しめるほか、「ゴールドベルク」とのセット販売により飲み比べの楽しさも味わえる
  • 顧客コスト …同じ価格帯で同種の商品はないためにクラフトビールが好きな人にはお得感がある
  • 利便性 …店頭での取り扱いが減りネット通販でしか購入できない顧客もいるため、買いやすいとはいえない
  • コミュニケーション …ビール業界でフェイスブックページを初めて立ち上げるなどSNSを積極的に活用し、22万件以上の「いいね!」も獲得

自社のチャンスと課題を整理する「SWOT分析」

「SWOT分析」は、自社のチャンスと課題を整理するために行う分析手法だ。「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」および「Threat(脅威)」の4つの頭文字から命名されており、前述したPEST分析と3C分析で環境分析を行ってから、このSWOT分析で解釈を行うのが一般的な使用法である。

【SWOT分析の各要因】

  • Strength(強み)…事業展開にプラスになる自社の特質
  • Weakness(弱み)…事業展開にマイナスになる自社の特質
  • Opportunity(機会)…市場拡大や競争優位につながる、自社にプラスとなる環境要因
  • Threat(脅威)…市場縮小や競争激化につながる、自社にマイナスになる環境要因

【SWOT分析の具体的事例:ソニー】

  • 強み …国内外で強力なブランド力があり、AV機器のほか映画や音楽・金融など多角的に事業展開を行っている
  • 弱み …水平分業システム導入によりモノづくりが弱体化しており、成長戦略が見えない
  • 機会 …景気回復の兆しが見えている、ファーウェイが失速している
  • 脅威 …液晶テレビ、パソコン、あるいはスマホで新規参入が続き競争が激化している

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ターゲットや具体的な施策を決めるための手法

以上で紹介してきた手法で環境分析や競合調査を行ったあと、自社のターゲットや具体的施策を決めていく。そのためのマーケティング手法を見ていこう。

ポジショニングを決める「STP分析」

「STP分析」は、市場を細分化したうえで自社が対象とするターゲットとポジショニングを決めるために行う、マーケティング戦略の基礎的手法だ。「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」および「Positioning(ポジショニング)」の頭文字から名付けられた。「あらゆる顧客を対象とした商品は、誰からも求められない」という考え方が前提となっている。

【STP分析の流れ】

  1. Segmentation(セグメンテーション)

国や地域・都市の規模・人口・気候・生活習慣などの「地理的要因」、年齢や性別・職業・所得・学歴・家族構成などの「人口統計学的要因」、価値観や趣味嗜好・ライフスタイルなどの「心理的変数」、および購買状況や購買パターン・使用頻度などの「行動変数」から市場を細分化する

  1. Targeting(ターゲティング)

細分化された市場の中から、成長性や収益性、競合、自社の経営資源などの観点からターゲットとする市場を選ぶ

  1. Positioning(ポジショニング)

ターゲットから魅力的に映り、競合と比べて優位に見えるよう、自社の立ち位置を明確にする

【STP分析の具体的事例:スターバックス】

  1. セグメンテーション

職業、都市の規模、社会的地位などによりセグメンテーションを行う

  1. ターゲティング

大都市に住み、経済的に余裕のあるオフィスワーカーを主なターゲットとして決定

  1. ポジショニング

「多少値は張るもののおいしいコーヒーを、おしゃれで高級感のある空間で提供する」という独自のポジションを打ち出す

ターゲットへの具体的な施策を決める「4P分析」

「4P」分析は「マーケティングミックス」とも呼ばれ、ターゲットへの具体的な施策を決めるために行う。「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(物流)」および「Promotion(プロモーション)」の4つの「P」を取って命名されている。

【4Pの各要因】

  • Product(製品)…製品自体と、製品名や色、パッケージデザイン、サポート体制など
  • Price(価格)…サービス・製品の価値やブランド力などから決定される価格
  • Place(物流)…量販店かコンビニか、直販のみか、問屋を入れるか、ネット通販かなど
  • Promotion(プロモーション)…コピーやキャンペーン、宣伝媒体、その費用など

【4Pの具体的事例:ヘルシオ緑茶】

  • 製品 …カテキンが効能で含まれながら苦味が少ない、また特定保健用食品の指定を受け「体脂肪が気になる方へ」のコピーを打ち出す
  • 価格 …350ミリリットル入りペットボトルで180円と高価格だが、有効性を打ち出すことで受け入れられると見込む
  • 物流 …コンビニ限定商品とし、店内の目立つ場所へスペースを取って陳列
  • プロモーション …テレビCMを積極的に行う

リソースを効果的に配分できる「バリューチェーン分析」

「バリューチェーン分析」とはリソースの効率的な配分を決めるための手法だ。「バリューチェーン」とは日本語でいえば「価値連鎖」のこと。事業を「主活動」と「支援活動」とに分類し、どの工程で付加価値(バリュー)を上げているのかを分析する。

【バリューチェーン分析の主活動と支援活動】

  • 主活動 … サービスや商品が顧客に届くまでの流れと直接関係する活動(購買の物流や製造、出荷の物流、販売、マーケティング、サービスなど)
  • 支援活動 …主活動を支援するための活動(調達活動や技術開発、人事、会計、財務など)

【バリューチェーン分析の具体例】

1.自社の主活動を分析する

  • 通信業の場合:インフラ構築 > 営業活動 > 契約 > サービス提供 >料金徴収 >カスタマーサポート
  • 小売業の場合:商品企画 > 仕入れ > 店舗運営 > 集客 > 販売 > アフターサービス
  • サービス業の場合:事業企画 > 営業活動 > サービス提供 > 料金徴収 > カスタマーサポート

2.主活動のそれぞれのコストを把握する

3.主活動のそれぞれの、どこに強み・弱みがあるかを分析する

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マーケティング手法を活用してビジネスを有利に進めよう

マーケティング戦略は、さまざまな目的のためにいくつかの手法があることを紹介した。それぞれを深く理解することにより、どのようにすれば自社が目標を達成し、事業を拡大していけるのかが明らかになっていくだろう。マーケティング手法を活用し、ビジネスを有利に進めよう。

文・高野俊一(ダリコーポレーションライター)