日々、会社経営していると財務会計という言葉を耳にする機会は多い。財務、会計、税務と似たような数字に関する言葉は多くあるが、財務会計とは具体的には何を意味しているのか。財務会計の必要性と効果、全般的な仕組みについて具体的に解説する。

目次

  1. 財務会計とは?
    1. 財務会計の定義
    2. 財務会計の必要性
  2. 財務会計の効果とは?
    1. 1.銀行などの債権者
    2. 2.ベンチャーキャピタルなどの出資者
    3. 3.取引先
  3. 財務会計の全般的な仕組みは?
    1. 会計基準の仕組み
    2. 国ごとに会計基準のルールは異なる
    3. 財務会計と税務の繋がり
  4. 財務会計に資格は必要?
  5. 財務会計の仕事内容は?
  6. 財務会計の重要性

財務会計とは?

財務会計とは?必要性と効果について解説
(画像=cacaroot/stock.adobe.com)

財務会計とはいったい何であるのか。まずは、その定義・必要性・効果について基本的な要素を押さえておこう。

財務会計の定義

財務会計とは、株主や債権者などの外部ステークホルダーに対して経営状況を明らかにするための会計のことを指す。似たような言葉として管理会計があるが、管理会計は外部ステークホルダーではなく、経営者が正しい経営判断の材料とするための会計である点で財務会計とは方向性が大きく異なる。

財務会計は、会社が財務諸表を作成することにより外部の利害関係者に情報を提供する。経理部門や財務部門が財務諸表を作成する部署であるが、彼らの仕事の目的は、財務諸表を作成することで、ステークホルダーに情報提供しているとも言い換えられるだろう。

財務会計の必要性

財務会計がなければ、外部ステークホルダーはお金を貸したり、出資したりすることは困難だ。現在の経営状態がない会社に投資することはただのギャンブルになってしまう。財務会計は、現代の株式会社が中心の経済活動における前提情報となっているのだ。

一方、外部株主がおらず、借入もしない一人会社であれば財務会計の必要性は税務を除けばほとんどない。情報提供すべきステークホルダーがいないためだ。ただし、現在一人会社であっても、将来増資を行いたい場合や借入する可能性がある場合は、財務諸表が必要になる。

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財務会計の効果とは?

財務会計により作成された財務諸表があることにより、外部ステークホルダーにどのような効果があるのだろうか。それぞれの立場から財務諸表の効果について説明する。

1.銀行などの債権者

大前提として銀行は、財務諸表がない会社には融資をすることはできない。会社にいくら財産があって、毎年いくら稼ぐ力があるのかが分からなければ、返済の可能性があるかどうか分からないからだ。

銀行は融資審査の際、会社から提供された財務諸表を見て、回収できない可能性や金利はいくらにするべきか、担保を付けるべきか、連帯保証人は付けるべきかなど、融資条件を判断している。財務会計から作られた数字によって、融資の基本的な条件が決まるのだ。

2.ベンチャーキャピタルなどの出資者

ベンチャーキャピタルから出資を受ける際に最も重要なのは、将来の事業計画だ。それに加えて、現状の数字である財務諸表も必要になる。現時点の経営状況の数字が分からなければ、事業計画を作成すること自体できない。

また、事業計画も財務会計のルールを前提としている。財務会計があることにより、ベンチャーキャピタルは会社の将来性を評価し、スタートアップ企業にバリエーションを付けることができる。

3.取引先

新規取引先に対してどのような支払条件とするかは、新規取引先の与信が重要になる。与信は取引先がどのような経営状態、財政状態であるかによって決まる。倒産ギリギリな会社であれば、与信を与えることはできず、着払いが基本となるだろう。財務会計が存在しない世の中であれば、与信が生まれずに全ての取引がいわゆるCash on Deliveryになってしまう。

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財務会計の全般的な仕組みは?

財務会計の基本を押さえたところで、財務会計の全般的な仕組みについて解説する。

会計基準の仕組み

財務会計は、会計基準という共通言語によって作り方がある程度統一されている。会社の一つ一つの取引を資産・負債・収益・費用・純資産の5つのグループに振り分けていくというのが基本的な考え方だ。例えば売上計上の仕訳は、現金1万円(資産)/売上1万円(収益)となるし、会社設立の仕訳は、現金1万円(資産)/資本金1万円(純資産)となる。

それぞれの取引を仕訳計上し、集計したものが財務諸表であり、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、およびその附属明細書に分類される。株式会社ではこれらの財務諸表を事業年度ごとに作成する必要がある(会社法435条第2項)。また、上場会社などであれば、適正に財務諸表が作成されているかどうか、外部の公認会計士から監査を受けなくてはならない。

仮に会計基準がなければ、会社はどのように財務諸表を作ればよいか分からないだけでなく、ステークホルダーも財務諸表の数字を理解し判断することもできないだろう。投資家は、会計基準がなく、各社バラバラのルールに基づいた数字を見たとしても、会社ごとの比較可能性が担保できず投資実行することはできない。

国ごとに会計基準のルールは異なる

会計基準は国ごとにルールが異なる。それぞれの国の事情は大きく異なっており、適切に企業実態を表すためにルール自体を工夫しているのだ。主な会計基準としては日本の会計基準のほかに、米国会計基準、IFRS(国際会計基準)が挙げられる。

米国会計基準は、トヨタ自動車、ソニー、キヤノンなど、IFRSはソフトバンクグループ、楽天、ファーストリテイリングなど有名大手企業が採用している。海外売上高比率が大きい国内の大手企業であれば、海外の投資家比率も高い。海外の投資家の全てが日本の会計基準に詳しいわけではなく、米国会計基準やIFRSの方がなじみ深いものになる。

自分が経営している会社の海外売上高比率が高く、上場を目指している場合は、日本の会計基準でなくIFRSといった会計基準をベースに財務会計を行うと効率的だ。もちろん、そのためのコストや時間はかかるが、一度日本の会計基準に慣れてしまうと異なる会計基準に移行する際に大きな手間となってしまう。

財務会計と税務の繋がり

財務会計と税務には繋がりがある。税務は財務会計の知識やルールを前提としており、財務会計から税務に適するように修正していくという考え方が基本となっている。財務諸表を作成した後に、税務申告書を作る流れとなるため、財務諸表なしでは税金を納めることもできない。

それでは財務会計と税務の大きな違いは何であろうか。大きな違いの一つとして、財務会計では損失は早く計上するが、税務は遅く計上することが挙げられる。例えば、株式の時価が50%以上下落すると財務会計上は、株式評価損という特別損失の計上が求められる。一方、税務ではキャッシュ上は損失が確定していないのだから、損金に算入することは認められない。

これは、税務において損失を早く計上してしまえば、日本国の税収が減少することに繋がり、なるべく多くの税金を納めてもらいたい税務署の立場としては認められないためだ。

上記のような財務会計と税務は、深く繋がっている部分は多いものの、根本の考え方は異なっている面もある。どのように処理すべきか迷った場合は、顧問税理士に相談することはもちろん、趣旨に照らしてどうするのが合理的であるかを考えてみるとおのずと答えが見つかることも多い。

財務会計に資格は必要?

財務会計に関係のある資格は多い。難易度もそれぞれ異なるが、経営者として必要最低限の財務会計の知識を身に付けたいということであれば、日商簿記3級程度の知識があれば十分だろう。顧問税理士ともっと高度な話題で会話ができるようになりたい、会社を大きくしていく上で経営管理を強化したいといった思いがある場合は、日商簿記2級やそのほかの資格にチャレンジすることをおすすめする。資格の種類は下記のとおりである。

  • 日商簿記
  • ビジネス会計検定
  • 国際会計検定(BATIC)
  • ファイナンシャルプランナー
  • 中小企業診断士
  • 税理士
  • 公認会計士、USCPA

財務会計の仕事内容は?

財務会計に関する仕事は、大きく経理系と財務系の2種類に分けることができる。経理系の仕事は日々の取引に関する仕訳を記帳し、財務諸表を作成する仕事である。財務系の仕事は、経理が集計したデータの分析やKPI数字のモニタリング、新規事業の財務影響、M&Aの検討など非定型の業務イメージだ。もちろん、会社によっては財務部門が経理の仕事を行うことも多く、両者をはっきりと区別することは難しい。

もし、自分の経営している会社で財務会計に詳しい従業員がいない場合、経理系と財務系のどちらを優先して採用すべきだろうか。経理や税務を顧問税理士や記帳代行業者に丸投げしている場合は、まずは経理人材を内製化するべきだ。

経理人材を内製化することで、自社の経営数字がすぐに分かる、顧問料や業務委託料を節約することができる、数字に強い人材を育てることで将来の幹部候補になる可能性がある、といったメリットがある。

経理人材を雇い、経理の内製化が完了した後に、幅広い業務をこなせる財務系の人材を獲得するとよいだろう。財務系の従業員に広報や総務など幅広いバックオフィス業務を担当させることで、CFOのキャリアを用意することもできる。社長の右腕的な人材が欲しい場合は、財務系の人材を考えることをおすすめする。

財務会計の重要性

財務会計は経済活動を回す前提となる情報の基礎でなくてはならない。財務会計を支えるものは、会計基準であり、会計基準があることで会社ごとの比較可能性を担保している。財務会計の知識を得ることで、他企業の分析や自社の経営情報を俯瞰的に分析することができるため、今後の経営改善にも役立てることができるだろう。

自分に財務会計の知識がない場合にも、財務会計の知識を持った従業員を雇うことが考えられる。財務会計の知識があるかどうかを確認するためには、財務会計関連の資格の有無を確認すればよい。もちろん、資格が全てではないが、会計や税務の仕事をしているほとんどの人が簿記検定くらいは受けているものだ。

財務会計の重要性を改めて意識してもらい、日々の経営に十分に活かすことができれば、数字を通して会社の現況や将来のビジョンについて理解を深めることができるだろう。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部