「減価償却とは何だろう?」という経営者もいるだろう。確かに減価償却は計算がやや複雑で、その必要性もわかりにくい。しかし減価償却は、経営状態を会計に適正に反映させることができる、節税効果があるなどのメリットがある。この記事では、減価償却のメリットや計算方法、簿記、税金などについて徹底的に解説していこう。

目次

  1. 減価償却とは簡単にいうと何?
  2. 減価償却を行うメリット
    1. 1. 経営状態を損益に適正に反映できる
    2. 2. 節税効果がある
    3. 3. 自己金融機能がある
  3. 減価償却で必要となる概念
    1. 1.取得価額
    2. 2.耐用年数
  4. 減価償却の計算方法は定額法と定率法
    1. 定額法の計算方法
    2. 定率法の計算方法
  5. 減価償却の簿記
  6. 減価償却の特例
  7. 減価償却はしっかりと計算しよう

減価償却とは簡単にいうと何?

減価償却とは?メリットや計算方法、簿記、税金について徹底解説!
(画像=Doubletree Studio/Shutterstock.com)

減価償却とは、使用できる期間が限られている固定資産(=減価償却資産)の購入費用を、購入年度に全額を計上するのではなく、使用可能期間にわたって分割して計上していくことである。分割して計上していくことで経費と売上を対応させ、経営状態を損益に適正に反映することができる。

減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」があり、減価償却資産の種別ごとにどちらを用いるかが決められている。減価償却資産の使用可能期間は、税法上は「法定耐用年数」として資産の品目ごとに細かく定められている。

減価償却を行う資産は、使用可能期間が限られている建物や車、パソコンなどである。土地や借地権、電話加入権、美術品、骨董品など、時間が経過しても劣化しない固定資産については、減価償却は行わない。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

減価償却を行うメリット

減価償却を行うメリットは、以下の3つだ。

  1. 経営状態を損益に適正に反映できる
  2. 節税効果がある
  3. 自己金融機能がある

1. 経営状態を損益に適正に反映できる

減価償却を行うと、経営状態を損益に適正に反映できる。

たとえば年間500個の商品を販売した場合、損益に計上されるのは、売上も売上原価も500個の商品についてのみである。在庫が余っていても、それは損益には計上されない。このように、経費と売上を対応させることが会計の大原則となっている。

この商品を生産するための設備を購入した場合を考えてみよう。生産設備を購入した年度に購入価格の全額を経費として計上すれば、その年度の利益は大きく圧迫され、赤字になることもあるかもしれない。赤字になれば、銀行からお金を借りられなくなることもあるだろう。

赤字になったとして、その赤字は経営状態を適正に反映していると言えるだろうか。生産設備は、その後何年にもわたって売上を上げるために使用されるものだ。生産設備を購入したために赤字になっても、それは経営状態が悪化したからではないことは明らかだ。

そこで減価償却を行って、生産設備の購入費用をその後の各年度に分割して計上していくことで、それぞれの年度の売上と対応させていくのだ。減価償却を行えば、設備を購入した年度だけが赤字になることはない。経費と売上が対応することで、経営状態を損益に適正に反映することができる。

2. 節税効果がある

減価償却には、節税効果もある。減価償却を行わないと、減価償却資産を購入した年度については利益が圧迫されるが、翌年以降は利益が増えてしまうため、税金を余分に支払わなければならなくなってしまう。減価償却を行って経費を分割して計上していくことで、税金を抑えることができるのだ。

3. 自己金融機能がある

減価償却には、自己金融機能がある。自己金融機能とは、内部に留保された自己資金によって資金調達をすることだ。減価償却費として計上される経費は、実際の支出を伴わない。減価償却費は企業内部にそのまま残り、課税されることもない。

ただし、この自己金融機能は会計上の考え方に過ぎない。同額の資金が必ずしも内部にあるわけではないので注意したい。

減価償却で必要となる概念

減価償却を計算するにあたって必要となる概念は、

  • 取得価額
  • 耐用年数

の2点である。

1.取得価額

取得価額とは、減価償却資産の購入するためにかかった費用のことだ。この取得価額には、購入費用そのもののほか、引取運賃や荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などを含めることができる。

2.耐用年数

耐用年数とは、減価償却資産を使用できる年数のことである。使用できる年数は、使用や保守・管理の状況などにより、同じものでも変わってくる。しかし、それらを個別に判定することはできないので、税制上は減価償却資産の品目ごとに「法定耐用年数」が細かく定められている。

減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一~第六

法定耐用年数の概略は、以下の表のようになる。

種類 耐用年数
建物 鉄筋コンクリートや木造、れんが造、金属造など 11~50年
建物附属設備 アーケードや電気設備、給排水、ガス設備など 3~15年
車両・運搬具 自動車、2輪車、自転車など 2~6年
工具 測定工具や検査工具、切削工具など 2~8年
器具・備品 事務机・椅子、キャビネット、応接セット、パソコン、電話、看板、金庫など 2~20年
機械・装置 農業用・各種製品製造用・卸売業用・小売業用設備など 3~17年
構築物 棚や塀など 5~17年
生物 牛や馬、リンゴやぶどうなど 3~36年

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

減価償却の計算方法は定額法と定率法

減価償却の計算方法には、「定額法」と「定率法」がある。どちらを用いるかは、所得税か法人税か、また減価償却資産の種類によって、以下の表のように定められている。


資産の種類
所得税 法人税
法定償却方法 選択 法定償却方法 選択
建物 定額法 定額法
建物附属設備
構築物
機械装置 定率法 定率法 定額法
車両運搬具
器具備品
ソフトウェア 定額法

所得税の申告においては、減価償却の計算方法は「原則として定額法」とされている。ただし、機械装置、車両運搬具、器具備品については、あらかじめ税務署に届け出ることで定率法を選ぶこともできる。

法人税の申告においては、機械装置、車両運搬具、器具備品については定率法、その他は定額法とされている。これも、定率法のものについては定額法を選択することもできる。

定額法と定率法の計算方法の概要は、それぞれ以下のとおりだ。

定額法の計算方法

定額法とは、毎年決まった金額の減価償却費を計上していく方法だ。減価償却費は、取得価額を法定耐用年数で割ったものとして計算される。

減価償却費(定額法)= 取得価額 / 法定耐用年数

「1/法定耐用年数」は、減価償却の1年ごとの割合である「償却率」を意味するため、定額法の減価償却費は、

減価償却費(定額法)= 取得価額 × 償却率(定額法)

と表すこともできる。

定額法のメリットは計算法がシンプルであり、また毎年同じ金額を減価償却していくためわかりやすいことだ。ただし、「定率法」のほうが減価償却費を早期に多く計上できるため、節税効果は高い。

定率法の計算方法

定額法が「同じ金額ずつ」減価償却費を毎年計上していくのに対し、定率法は「同じ割合ずつ」減価償却費を計上していく方法だ。計算方法は定額法より複雑だが、早期に多くの費用を計上することができるため、節税効果が高いことがメリットだ。

定率法での減価償却費は、期首における「未償却残高」に「定率法償却率」をかけたものだ。

減価償却費(定率法)= 未償却残高 × 定率法償却率

「未償却残高」とは、取得価額のうち減価償却をまだ行っていない残高のことである。初年度においては、未償却残高は取得価額と同じになる。

「定率法償却率」は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第十」において、法定耐用年数ごとに決められている。 ⇒ 参考「減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第十」

減価償却の簿記

減価償却の簿記を見てみよう。耐用年数10年の固定資産を100万円で購入し、毎年10万円ずつ減価償却していくとする。

まず、固定資産を購入した際に、購入した固定資産を資産として計上する。


借方
貸方
固定資産 1,000,000 現金 1,000,000

次に、毎期末に減価償却費を計上していく。減価償却費は経費として計上し、固定資産の価値がその分下がっていくことになるために、以下のように仕訳する。

借方 貸方
減価償却費 100,000 固定資産 100,000

上の仕訳を10年間にわたって続けていくことになるわけだが、10年目は、減価償却できる金額が変わる。減価償却は「1円」を残して行うこととされているからだ。したがって、仕訳は以下のようになる。

借方 貸方
減価償却費 99,999 固定資産 99,999

残った1円は「残存簿価」あるいは「備忘価額」と呼ばれ、固定資産が残っていることを帳簿に残すためのものである。残存簿価がなくなるのは、固定資産を売却あるいは廃棄した時だ。

減価償却の特例

減価償却は、以下のケースにおいては行わない、あるいは簡便な方法で行うことが認められている。

  1. 使用可能期間が1年未満、あるいは取得価額が10万円未満の資産については減価償却を行わず、購入した年度に一括して費用計上することが認められる。
  2. 取得価額が10万円以上20万円未満の資産については、複数の資産を一括し、その合計額を3分の1ずつ、3年にわたって減価償却することが認められる。
  3. 一定の条件を満たす青色申告者は、取得価額が10万円以上30万円未満の資産について、300万円までを限度としてすべてを一括し、購入した年度に費用計上することが認められる。

減価償却はしっかりと計算しよう

一見わかりにくい減価償却だが、実は経営の状態を会計に適正に反映でき、節税効果もあるなど、大きなメリットがあるものだ。会計ソフトを利用すれば、自分で計算することもさほど難しくない。

会計は、事業を行っていく上でなくてはならないものだ。しっかり減価償却を行って、適正な会計を実践しよう。

文・高野俊一(ダリコーポレーション ライター)