「助成金」や「補助金」は、事業を支える公的な資金支援だ。融資と違い返済義務のないものが多く、有利な資金調達としても利用されている。

助成金や補助金は似た制度だが、どんな違いがあるのだろうか。公的な支援とはいえ、制度の仕組みがよくわからないと利用をためらってしまうこともあるだろう。この記事では助成金と補助金の違いが

目次

  1. 助成金と補助金の違いは?
    1. 運営主体や資金の目的が違う
    2. 厚労省は労働の確保が重要な任務
    3. 助成金や補助金の活用=社会貢献
    4. 後払いだが返済不要
    5. 地方公共団体やその他団体独自の制度も
  2. 厚労省が実施する助成金
    1. 厚労省実施の助成金の例
    2. 雇用に関する助成金が多い
    3. 条件を満たす必要がある
    4. 「生産性要件」を満たすと割増給付の可能性
  3. 経産省実施の補助金
    1. 経産省実施の補助金の例
    2. 幅広い事業や設備投資が対象
    3. 審査がある場合、不採択となる可能性もある
  4. その他の団体が実施する助成金・補助金について
    1. その他の団体が実施する助成金、補助金の例
    2. 中小機構のホームページで検索できる
  5. 補助金や助成金はそれぞれ条件の確認が重要

助成金と補助金の違いは?

「助成金」と「補助金」はどう違う?仕組みと利用方法を確認
(画像=Freedomz/Adobe Stock)

ここでは、助成金と補助金がより積極的に活用されるよう、助成金と補助金の違いについて解説する。給付を受けるための条件についても紹介したい。

運営主体や資金の目的が違う


 
主な実施主体 資金の目的
助成金 厚生労働省 雇用に関する資金援助が多い
補助金 経済産業省 事業の発展、開発に対する資金援助が多い

基本的に、助成金は厚生労働省、補助金は経済産業省が実施主体だ。どちらも経済発展を支える目的で設立された省で、民間事業に対して資金を援助している。

助成金や補助金は各省が直接実施するのではなく、傘下の庁や局、また独立行政法人など外部団体が窓口になるケースが多い。

厚労省は労働の確保が重要な任務

助成金の多くは雇用に関する活動に対する資金援助で、補助金の多くは事業の発展や開発に対する資金援助だ。助成金と補助金の違いは、双方の省の設立目的に由来する。

厚生労働省と経済産業省はどちらも経済発展への貢献を任務としているが、厚生労働省は「労働の確保」も目的としており、「厚生労働省設置法」第三条にその旨が明記されている。

厚生労働省の助成金が主に雇用活動に対して給付されるのは、同省の役割が反映されているのだろう。

助成金や補助金の活用=社会貢献

助成金や補助金の財源は、税金だ。したがって給付には一定の審査基準が設けられており、公益性が判断される。助成金や補助金の給付を受けるということは、事業者に審査基準をクリアする公益性が認められたということだ。

国は、よりより社会の実現のために助成金や補助金を用意している。よって、積極的に活用すれば社会貢献にもつながり、自社ブランド価値の向上にもつながるだろう。

後払いだが返済不要

助成金や補助金は、どちらも返済義務がない。ただし、どちらの資金も原則後払いで支払われる。財源が税金であるため、公正かつ効率的な運用がなされるためだ。

基本的に返済義務のない資金だが、不正受給の場合は返還義務が生じる。助成金や補助金を目的以外のものに使ったり、虚偽の申請をしたりすることなどが不正受給に該当する。

虚偽の申請と認められてしまうと、刑事罰を受ける可能性もある。事業の実態に則した申請を心がけたい。

地方公共団体やその他団体独自の制度も

助成金や補助金の給付は、厚生労働省や経済産業省だけが行っているわけではない。地方自治体や各団体が実施しているものもある。

国に該当の制度がなくとも、地方自治体や各団体が実施する助成金や補助金に自社の事業に該当する制度があるかもしれない。それらの条件を確認し、事業資金の一助にしてほしい。

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厚労省が実施する助成金

次に厚労省が提供している助成金の一覧を見てみよう。

厚労省実施の助成金の例

人材確保等支援助成金
(雇用管理制度助成コース)
雇用管理制度(評価・処遇制度、研修制度等)の導入を通じて従業員の離職率の低下に取り組み、目標達成できた事業主に57万円か72万円を給付
中途採用等支援助成金
(中途採用拡大コース)
中途採用者の雇用管理制度を整備した上で、中途採用率の拡大、または45歳以上を初めて採用した事業主に、50~70万円を給付
特定求職者雇用開発助成金
(就職氷河期世代安定雇用実現コース)
いわゆる就職氷河期に正規雇用の機会を逃がし、正規雇用に就くことが困難な方を雇い入れた事業主に、1人あたり60万円を給付
雇用調整助成金 景気の変動や産業構造の変化などの理由で事業活動の縮小を余儀なくされた場合
新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金 2020年2月27日~3月31日の間に、新型コロナウイルス対応として休業した小学校等に通う子ども、また感染のおそれのある子どもの世話を行う労働者に有給を取らせた事業主に対し、支払った賃金相当額を給付

雇用に関する助成金が多い

厚生労働省が給付する助成金は、雇用を維持あるいは増加させると給付されるものが多い。厚生労働省の任務の1つに職業の確保があり、助成金にも厚生労働省の立場が反映されている。

事業の拡大が進むと、雇用戦略も重要になってくる。助成金の条件を調べながら戦略を立てるといいだろう。

条件を満たす必要がある

各助成金には、それぞれ条件がある。上の表で簡単にまとめているが、詳しい条件は厚生労働省ホームページで確認してほしい。

なお助成金の給付には、雇用に関する条件の他、企業規模の条件(資本金や雇用する従業員の数等)が付く場合もある。

「生産性要件」を満たすと割増給付の可能性

生産性要件 3年度前と比較し
[1]生産性が6%以上伸びている
[2]生産性が1以上6%未満伸びており一定の「事業性評価」を受けている
生産性 付加価値 ÷ 雇用保険被保険者数
付加価値 営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃貸料+租税公課
事業性評価

各県の労働局が、助成金を申請する企業と与信取引等のある金融機関に聞く、事業の見立て

厚生労働省は労働生産性を高めることを目的に、助成金を割増給付する「生産性要件」を定めている。助成金の給付を受けられる事業主が生産性要件を満たすと、給付される金額が増える。

たとえば「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)」では、生産性要件を満たさない場合は57万円、満たすと72万円が給付される。

すべての助成金に生産性要件が設けられているわけではないが、生産性の向上に取り組む価値はありそうだ。

経産省実施の補助金

では次に厚労省が提供している助成金の一覧を見てみよう。

経産省実施の補助金の例

IT導入補助金 バックオフィス業務の効率化などのためにITツールを導入した一定規模以下の事業者に対し給付。
給付の上限は450万円。
ものづくり補助金 新製品や革新的なサービス開発、また開発プロセス改善のために投資した一定規模以下の事業者に対し給付。
給付の上限は1,000万円。
先進性の高いコンテンツの開発/制作・配信を行う事業の支援 先進技術を用いたコンテンツを開発し、海外へのプロモーションや実施後にデジタル配信する事業に対し給付。
給付の上限は5,000万円。
社会課題解決型国際共同開発事業
(ビジネスサポーター支援事業)
アフリカ等の開発途上国で、BtoBビジネス展開を目指す日本の中小企業をサポートする事業者に給付。
給付の上限は2,000万円。
省エネルギー投資促進に向けた支援補助金
事業所や工場単位で省エネルギー設備の導入、また設備単位での省エネルギー設備の導入に対し補助金を給付。
給付の上限は30億円。

幅広い事業や設備投資が対象

経済産業省の設立目的は経済発展を幅広くサポートすることであり、それに沿ったさまざまな補助金が用意されている。

同省傘下の「中小企業庁」が実施する「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」は、中小企業の生産性向上のための設備投資を支援する。

同じく傘下の「資源エネルギー庁」が実施する「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」は、生産工場や事務所の省エネルギー設備の導入に対して給付される。

厚生労働省の助成金と比較すると、経済産業省の補助金は給付対象が多岐に渡る。給付金額が大きいものもあり、さまざまな事業に対応していると言えるだろう。

審査がある場合、不採択となる可能性もある

助成金同様、補助金にも給付に条件が設けられている。補助金によっては審査委員会が開かれ、専門家によって給付の是非が検討されるものもある。

審査が行われる補助金の場合、申請条件をクリアしていても給付されない可能性があるので注意したい。

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その他の団体が実施する助成金・補助金について

助成金や補助金は、厚生労働省・経済産業省以外のさまざまな団体も実施している。他の省庁や地方自治体、また独立行政法人や財団などが主な実施主体だ。

その他の団体が実施する助成金、補助金の例

サイバーセキュリティ対策促進助成金 実施主体:東京都中小企業振興公社
サイバーセキュリティ対策のための機器やクラウド導入する都内の企業に対し給付。給付の上限は1,500万円
事業継続緊急対策(テレワーク)助成金 実施主体:東京都
テレワーク環境を導入する都内の企業に対し給付。給付の上限は250万円。
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業 実施主体:東京都中小企業団体中央会
自社の技術・サービスの高度化・高付加価値化を目指す都内の企業に給付。給付の上限は2,000万円
ネクスト・目指せ!中小企業経営力強化事業 実施主体:東京都
国内外の展示会等へ出展しようと考える都内の企業に対し給付。給付の上限は150万円。
新製品・新技術開発助成事業
実施主体:東京都中小企業振興公社
実用化の見込みのある新製品・新技術の自社開発を行う都内企業に対し給付。給付の上限は1,500万円。

※2020年3月30日時点。給付の金額や条件等は変更される可能性がある。

中小機構のホームページで検索できる

独立行政法人「中小機構」は「J-Net21」というホームページで、経営者の課題解決に役立つ支援情報や事例を紹介している。その中で、中小企業向けの助成金や補助金を検索できるサービスを提供している。

すべての制度を検索できるわけではないが、実施主体が異なる制度をまとめて検索できる。融資や税制の優遇情報についても検索でき、ある程度網羅的に情報を収集できる。

独立行政法人中小機構 J-Net21 支援情報ヘッドラインについて詳しくはこちら

各制度の実施主体に直接問い合わせることでも情報は得られるが、そのためにはどんな支援があるのか事前に知っておく必要がある。同ホームページは、まさにどんな支援があるのかを知るための有効な検索ツールと言えるだろう。

補助金や助成金はそれぞれ条件の確認が重要

助成金は厚生労働省が、補助金は経済産業省が実施していると説明したが、実は厚生労働省が実施する補助金もあり、明確に区分することは難しい。この記事の内容は、あくまで概論として捉えてほしい。

助成金や補助金を利用する際は、制度の名称や実施主体に関わらず、給付条件などをよく確認した上で、上手く活用していただきたい。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)