寄附金は個人の寄附金控除、法人の損金算入によって、所得税や法人税などの節税手段となり得る。またふるさと納税制度のように、特例によって、通常よりたくさん節税できる寄附金もある。今回は、個人や法人が支出する寄付金について解説する。なお、本文中の寄付・寄附の意味合いは同じである。

中村 太郎
中村 太郎(なかむら・たろう)
中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

目次

  1. 寄付金の税金は節税対策になる(寄附金控除)
  2. 特定寄附金の種類と特徴
    1. 国または地方公共団体への寄附金
    2. 指定寄附金
    3. 特定公益増進法人への寄附金
    4. 一般の寄付金
  3. 法人における寄付金の控除額
    1. 損金不算入額の計算方法
    2. 節税になる支出の方法
    3. 企業版ふるさと納税について
    4. 控除を受けるための要件
    5. 企業版ふるさと納税の節税メリット
    6. 企業版ふるさと納税のその他のメリット
  4. 個人における寄付金の控除額
    1. 寄附金控除の対象になる寄附金
    2. 税額控除を選択できる寄附金
    3. 個人のふるさと納税で節税を
  5. 寄付金をうまく使って賢い節税を

寄付金の税金は節税対策になる(寄附金控除)

寄付金は節税対策になる?寄附金で賢く節税する方法を徹底解説!
(画像=Freedomz/Adobe Stock)

個人や法人から一定の寄付金を支払うと、寄附金控除や損金算入によって、所得税や法人税などの節税となる。ただし、寄付金の種類によってルールが変わるためそれぞれチェックしておきたい。

特定寄附金の種類と特徴

寄付金は、寄付を行う相手によって控除のルールや損金算入のルールが変わる。まずは、寄付金の種類や特徴を確認していこう。

国または地方公共団体への寄附金

国や地方公共団体に対して支払う寄附金のことである。災害時の日本赤十字社への義援金や被災地である地方公共団体の災害対策本部への義援金、のちほど解説する企業版ふるさと納税などがこれに該当する。

指定寄附金

一定の法人や団体などに対する寄附金のうち、次の要件を満たすものとして財務大臣が指定した寄附金である。

  • 広く一般に募集されること
  • 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。 (法人税法第37条第3項第2号、所得税法第78条第2項第2号)

特定公益増進法人への寄附金

次に示す「特定公益増進法人」に対して支払う寄附金のことである。

  • 独立行政法人
  • 一定の地方独立行政法人
  • 自動車安全運転センター、日本赤十字社(事業費)など
  • 公益社団法人及び公益財団法人
  • 一定の学校法人
  • 社会福祉法人
  • 更生保護法人 ただ日本赤十字社への寄附金のうち義援金は、指定寄附金にあたる場合がある。なお、認定NPO法人などもこの区分で寄附金控除や損金算入の対象となる。

一般の寄付金

国や地方公共団体への寄附金、指定寄附金、特定公益増進法人への寄附金などに該当しないその他の寄付金のこと。たとえば、政治団体、宗教法人(神社や寺など)、町内会への寄付などが該当する。

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法人における寄付金の控除額

法人が支払った寄付金は基本的に損金に算入できるが、寄付金の種類によっては全額を損金に算入することができない。

具体的には、次のとおりである。

寄附金の種類 損金算入額
国、地方公共団体への寄附金 全額可
指定寄附金
特定公益増進法人への寄附金 限度あり
一般の寄附金

なお、国外関連者への寄付金や、完全支配関係のある国内の法人の間で支払われた寄付金については、全額が損金不算入となる。

損金不算入額の計算方法

特定公益増進法人への寄附金や一般の寄付金を支払った場合は、まずそれぞれの損金算入限度額を求め、それをもとに、損金不算入額を計算する。

【特定公益増進法人の損金算入限度額】
特定公益増進法人への寄附金の損金算入限度額は、「特別損金算入限度額」と呼ばれる。

<計算式>
(資本基準額+所得基準額)×2分の1

  • 資本基準額・・・資本金の額×当期の月数/12月×3.75/1,000
  • 所得基準額・・・所得の金額×6.25/100

<計算例>
資本金5,000万円、所得の金額3億円の株式会社の場合 (5,000万円×3.75/1,000+3億円×6.25/100)×2分の1=946万8,750円

【一般の寄付金の損金算入限度額】
<計算式>
(資本基準額+所得基準額)×4分の1

  • 資本基準額・・・資本金の額×当期の月数/12月×2.5/1,000
  • 所得基準額・・・所得の金額×2.5/100

<計算例>
資本金5,000万円、所得の金額3億円の株式会社の場合
(5,000万円×2.5/1,000+3億円×2.5/100)×4分の1=190万6,250円

ここからが、寄付金の損金不算入額の計算となる。まず、支出した寄付金の総額から、国外関連者や完全支配関係がある法人に対する寄付金を控除し、その額から、国や地方公共団体への寄附金と指定寄附金を控除する。

その額から、

  • 特定公益増進法人に対する寄附金か特別損金算入限度額のいずれか小さい額
  • 一般の寄付金の損金算入限度額

を控除し、残金があればその金額が損金不算入額となる。

節税になる支出の方法

法人が支払う寄付金は計算方法が複雑なので、結局どうすれば損金不算入額を出すことなく寄付金で節税できるかわかりづらいことが難点だ。

全額を損金に算入できる相手にだけ寄付をするという方法もあるが、もし特定公益増進法人や一般の寄付金で、損金不算入額を出さずに寄付をしたい場合は、とりあえず「一般の寄付金の損金算入限度額」を目安に、寄付金の支出額を検討するとよいだろう。

企業版ふるさと納税について

企業版ふるさと納税とは、「地方創生応援税制」のことだ。地方創生のために法人が地方公共団体の事業に寄附を行った場合、その寄附額のうち一定割合が、法人事業税や法人住民税などから、特例的に控除される制度になる。

控除を受けるための要件

国が認定した事業への寄附であることや、本社(主たる事務所・事業所)が所在する地方公共団体への寄附でないこと、10万円以上の寄附であることなどの要件を満たす必要がある。

なお、寄附の代償として経済的利益を受けることはできず、個人のふるさと納税のような返礼品はない。

企業版ふるさと納税の節税メリット

企業版ふるさと納税の気になる節税効果であるが、令和2年度税制改正によって、令和2年度~6年度までの5年間、節税効果がかなり上がっている。

新しい制度では、企業版ふるさと納税の寄附金のうち、法人事業税からの控除が20%、法人住民税からの控除が40%になる。加えて、地方公共団体への寄附であるため、もともとその全額が損金に算入される。

仮に、法人税等の税率を約30%とすると、法人事業税や法人住民税からの控除と合わせて、トータルで約90%の節税効果が見込めることになる。図にすると次のようになる。

寄附額(100%)
法人税等の節税効果 法人事業税の控除 法人住民税+法人税の控除 手出し
約30% 20% 40% 約10%
節税額  

たとえば、200万円の寄附をすれば、180万円の減税効果を受けることができ、実質20万円の手出しで済むことになる。つまり、企業の負担額の約10倍の寄附ができるということだ。

ただし、法人事業税、法人住民税などの控除額には上限がある。具体的には次のとおりである。

  • 法人住民税:法人住民税法人税割額の20%
  • 法人税:法人税額の5%
  • 法人事業税:法人事業税額の20%

この上限があるため、無制限に10%の手出しが実現するわけではない。

法人の所得の割に高い寄附金を支払うと、手出しが増えてしまうことがあるため、注意が必要である。

企業版ふるさと納税のその他のメリット

企業版ふるさと納税のメリットは、少ない手出しで、地方創生活動に寄附を行うことができることである。社会貢献として企業のCSR活動の一つになるため、企業のイメージアップが期待できる。また、地方公共団体とのパートナーシップの構築にも役立つだろう。

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個人における寄付金の控除額

個人が支出する一定の寄付金は、「寄附金控除」に計上して所得控除を受けることができる。さらに要件を満たすものについては「税額控除」との選択も可能だ。図にすると次のようになる。

寄附金の種類 寄附金控除 税額控除との選択適用
国、地方公共団体への寄附金 ・公益社団法人等
・認定NPO法人
・政党や政治資金団体
に対する寄附金のうち、一定のも
指定寄附金
特定公益増進法人や
認定NPO法人への寄附金
政治活動に関する寄附金
上記以外のもの × ×

寄附金控除の対象になる寄附金

法人の場合は一般の寄付金という区分を設けていたが、個人の場合はそのうち「政治活動に関する寄附金」を除き、寄附金控除の対象にはならない。

たとえば、町内会や宗教法人への寄付は、基本的には寄附金控除にならないため注意が必要だ。(指定寄附金にあたる場合を除く)そのほかの寄付金については、次の計算式で個人の寄附金控除に計上することができる。 <計算式>
その年に支出した寄附金の額(※)-2,000円
(※)その年の総所得金額等の40%が上限

税額控除を選択できる寄附金

公益社団法人等への寄附金、認定NPO法人への寄附金、政党等への寄附金のうち一定のものは、税額控除を選択できる。寄附金控除が所得から差し引くものであることに対し、税額控除は計算した税額から直接差し引くものだ。

一般的には、税額控除を選択した方が節税になるケースが多いが、個人の所得によって変わるため、両方でシミュレーションすることが望ましい。なお、税額控除を受けるには、確定申告書への所定の記載や関係書類の添付などが必要となる。

個人のふるさと納税で節税を

寄附金による節税方法としてもっともよく知られているのが、個人のふるさと納税だろう。2,000円の負担で寄附ができ、ご当地のお礼の品がもらえる制度として親しまれている。

手出しが2,000円になる理由は、支払った寄附金に相当する額が、還付や減税という形で返ってくるからだ。まず、ふるさと納税は地方公共団体への寄附にあたるため、2,000円を除いた全額が所得税の寄附金控除にあたる。

残りは、住民税の控除の対象となり、基本分と特例分が控除される。図にすると次のようになる。

寄附額(100%)
所得税の寄附金控除 住民税の基本控除 住民税の特例控除 手出し
(5%~45%) -10% (残り) 2,000円



節税額


 
 

ただし住民税の特例控除は、住民税所得割の2割を上限とする。そのため、所得の割に高いふるさと納税を行うと、手出しが2,000円では済まなくなるので注意が必要だ。

なお、令和元年6月から、総務大臣の指定を受けた自治体への寄附でなければ住民税の特例控除は受けられない。

寄付金をうまく使って賢い節税を

個人のふるさと納税については、令和元年の指定制度の導入によって、返礼割合を3割以下にするなどの規制が行われた。しかしふるさと納税が節税になることは変わらないため、今後もうまく活用していきたいところだ。

ただし、ふるさと納税の返礼品は、たとえ品物であっても所得税の「一時所得」に該当する。返礼品が一時所得の特別控除額(最大50万円)を超過するケースは少ないと考えられるが、高所得で多額の寄付を検討している方や、他に一時所得に該当する収入がある方は注意が必要である。

判断に迷ったときは、税理士の税務相談を利用していただきたい。

文・中村太郎(税理士・税理士事務所所長)