事業者が備品を購入したときに、勘定科目を「消耗品費」「雑費」のどちらかにするかは、非常に迷いやすいポイントだ。正しい仕訳の方法がわからず、つい使い勝手の良い雑費を選んでいる方も多いのではないだろうか。

特に少額なものは軽視されがちだが、実は備品の費用は正しく計上しないと、思わぬ弊害が生じる恐れがある。仮に計上する勘定科目を間違えると、修正申告を行う必要があるうえに、場合によっては追徴課税が発生することもある。税務調査のリスクが高まるのはもちろん、将来的にかえって手間がかかってしまう可能性もあるので、仕訳については正しい知識を身につけておくことが重要だ。

そこで本記事では、消耗品費・雑費の概要や判断ポイントに加えて、経営者が押さえておきたい基礎知識を徹底的に解説していく。

目次

  1. 消耗品費とは?判断基準のポイント
  2. 雑費とは?判断基準のポイント
  3. 事業者がしっかりと押さえたい、減価償却のキホンと特例
    1. 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例とは?
  4. これでもう迷わない!消耗品費・雑費に該当する費用の一覧
    1. 扱いに悩まされがちな備品!セット商品の扱いは?
  5. 雑費は計上する金額にも注意!目安はどれくらい?
  6. いま見直すだけで無駄な時間を削減できる!さっそく管理体制の見直しを

消耗品費とは?判断基準のポイント

備品の勘定科目は「消耗品費」と「雑費」のどっち?判断基準のポイントと知っておきたい基礎知識
(画像=peshkova/stock.adobe.com)
ジャンル 消耗品費に該当する費用の一例(※いずれも10万円未満)
・事務用品 文房具、印鑑、封筒、伝票、用紙、インク、トナー、コピー代金など
・工具や機器 机、椅子、本棚、一般工具、ロッカー、電話、携帯電話、FAX、カメラ、掲示板など
・パソコン関連 キーボード、マウス、ケーブル、USBメモリなどの記憶装置、CDなどのディスク類、ソフトウェア、ライセンス料など
・日用品 タオル、石鹸、洗剤、食器類、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、蛍光灯、電池、観葉植物など
・その他 ガソリン、灯油、オイル交換代、収入印紙など

「消耗品費」とは、文房具などの消耗性のある物品を購入した場合に、その費用を計上する勘定科目のことだ。物品ごとの明確な定義などは設けられておらず、一般的には以下のいずれかの基準を満たしたものが消耗品費として会計処理されている。

【1】使用可能期間が1年未満のもの
【2】取得価額が10万円未満のもの

上記の基準を見れば、多くの備品が消耗品に当てはまることが分かるだろう。消耗品に該当する具体的なものとしては、帳簿や用紙、ガソリンなどが挙げられる。判断はそれほど難しくないが、上記【2】の基準にはひとつ注意しておきたいポイントがある。

それは、「税込経理方式・税抜経理方式」のどちらを採用しているのかによって、基準となる金額が若干変わってくる点だ。税込経理方式では税込で10万円未満、税抜経理方式では税抜で10万円未満が基準となるため、経営者は自社の経理方式を一度見直しておこう。

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雑費とは?判断基準のポイント

ジャンル 雑費に該当する費用の一例
・清掃に関するもの 清掃代、クリーニング費、粗大ゴミの処理費用など
・手数料に関するもの 振込手数料、登記手数料、安全協力費、証明書の発行費など
・資料類 書籍、新聞、雑誌など
・その他 テレビの受信料、引っ越し費用、警備費用など

上記の消耗品費と同じく、「雑費」にも明確な定義は定められていない。そのため、雑費として処理している費用は事業者ごとに異なるが、一般的には以下の条件を満たす場合に、雑費として処理されるケースが多い。

【1】発生した費用が、ほかの科目に該当しない場合
【2】一時的な費用である場合
【3】高額ではない場合(※金額については、後述で解説)
【4】発生の頻度が低い場合

雑費に該当する具体的な費用としては、資料費や書籍費、各種手数料などが挙げられるだろう。物品が定義されていない影響で、あらゆる備品の費用を計上できるので、雑費は「使い勝手が良い科目」として好んで使われるケースが見受けられる。

ただし、雑費に多くの費用を計上すると、後から帳簿を見直したときに詳細が分かりづらい。たしかに、雑費を選べばスムーズに会計処理はできるが、経営管理の面ではかえって膨大な手間がかかる。

そのため、可能であれば雑費としての会計処理は避けて、ほかの勘定科目に計上したり、新たな勘定科目を設けたりすることがベストだ。つまり、雑費は「最終手段となる勘定科目」として認識しておきたい。

事業者がしっかりと押さえたい、減価償却のキホンと特例

備品の会計処理の基礎知識として、もうひとつ理解しておきたいポイントがある。それは、「減価償却」の概要と仕組みだ。

減価償却とは、税法上の耐用年数に応じて、複数年かけて一定額を計上していく処理方法のこと。使用可能期間が1年以上であり、かつ取得価額が10万円を超える備品の費用については、固定資産に計上したうえで減価償却を適用しなければならない。

これは簡単な例になるが、仮に15万円の高額なカメラを購入したとしよう。カメラの耐用年数は税法上で5年と定められているため、毎年3万円ずつを費用として計上し、5年かけてすべての費用(3万円×5年間=15万円)を償却していく。つまり、使用可能期間が長く、かつ高額な備品に関しては、購入した年度の費用として全額を計上することは原則できない。

ただし、一定の要件を満たす事業者は、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」が適用されることにより、購入した年度内に全額費用処理をすることが認められている。この特例についても、以下でしっかりと理解を深めておこう。

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例とは?

この特例が適用された事業者は、取得価額が30万円未満の減価償却資産であれば、購入した年度内の費用として全額を計上できる。特例が適用される主な要件は以下の通りだ。

  • 青色申告をしていること
  • 常時使用する従業員の数が1,000人以下であること
  • 法人の場合は資本金または出資金の額が、1億円以下であること

個人事業主はもちろん、中小企業であればさまざまな法人が対象に含まれるが、大規模法人に一定数の株式を所有されている法人や、受託法人は適用を受けられない。また、確定申告書に明細書を添付するなど、税務申告の際に処理・手続きが必要になる点も、しっかりとチェックしておきたいポイントだ。

なお、この特例には期限が定められており、将来的には制度の概要が変わる可能性があるので、常に最新の情報を確認しておこう(※2020年4月現在では、令和2年3月31日までに取得した資産が対象)。

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これでもう迷わない!消耗品費・雑費に該当する費用の一覧

勘定科目を手っ取り早く判断したい方のために、以下では消耗品費・雑費に該当する費用を簡単にまとめた。前述で解説した通り、使用可能期間や取得価額によっては処理方法が変わることもあるので、あくまでも参考程度にチェックしていこう。

まずは、消耗品費に該当する費用をジャンル別に紹介していく。

○消耗品費に該当するもの(一例)


ジャンル 消耗品費に該当する費用の一例(※いずれも10万円未満)
・事務用品 文房具、印鑑、封筒、伝票、用紙、インク、トナー、コピー代金など
・工具や機器 机、椅子、本棚、一般工具、ロッカー、電話、携帯電話、FAX、カメラ、掲示板など
・パソコン関連 キーボード、マウス、ケーブル、USBメモリなどの記憶装置、CDなどのディスク類、ソフトウェア、ライセンス料など
・日用品 タオル、石鹸、洗剤、食器類、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、蛍光灯、電池、観葉植物など
・その他 ガソリン、灯油、オイル交換代、収入印紙など

次は、雑費として処理されることが多い費用をジャンル別に見ていこう。

○雑費に該当するもの(一例)

ジャンル 雑費に該当する費用の一例
・清掃に関するもの 清掃代、クリーニング費、粗大ゴミの処理費用など
・手数料に関するもの 振込手数料、登記手数料、安全協力費、証明書の発行費など
・資料類 書籍、新聞、雑誌など
・その他 テレビの受信料、引っ越し費用、警備費用など

上記の中でも発生頻度が高いもの、重要度が高いものに関しては、消耗品費など別の勘定科目に計上することが望ましい。したがって、備品代を会計処理する際には物品そのものだけではなく、できれば発生頻度や金額、事業における重要性なども意識しながら、適した勘定科目に振り分けることが重要だ。

扱いに悩まされがちな備品!セット商品の扱いは?

数ある備品の中でも、特に「セット商品」は会計処理に悩まされやすい。たとえば、以下の3点がセットになっている商品は、果たして消耗品費に計上できるだろうか。

  • パソコン本体(80,000円)
  • ディスプレイ(20,000円)
  • キーボード(5,000円) (※いずれも使用可能期間は1年以上)

結論から言えば、上記のセット商品は合計で10万円を超えるため、消耗品費としては計上できない。つまり、セット商品は単体の物品価格ではなく、「セット価格」で取得価額を判定する必要があるのだ。

上記の例のほかにも、椅子とテーブルの応接セット、カメラと専用アクセサリーの撮影セットなど、ビジネスに関係するセット商品は数多く存在するので注意しておきたい。ちなみに、取得価額が10万円を超えるセット商品は、消耗品費ではなく「資産」として計上することになる。

雑費は計上する金額にも注意!目安はどれくらい?

雑費は勘定科目の中で、唯一「使用用途が不明瞭」な科目だ。その影響で、雑費は使途不明金の温床になりやすいため、第三者からチェックされやすい勘定科目と言える。

したがって、雑費に多くの費用を計上していると、税務調査において指摘されるリスクが高まってしまう。また、雑費が多い決算書は見栄えが悪い(=信用性を損ないやすい)ので、金融機関からの融資にも悪影響を及ぼすだろう。

雑費の金額に細かいルールは設けられていないが、一般的には経費全体の5%~10%程度が望ましいとされている。勘定科目としての使い勝手は良いものの、雑費に計上できる金額はそれほど多くないため、使い方次第で「危険な勘定科目になる」点はしっかりと理解しておこう。

ちなみに、可能な限り雑費を減らし、かつ会計処理をスムーズに進める手段としては、あらかじめ社内でルールを統一しておく方法が効果的だ。たとえば、振込手数料や証明書の発行費はまとめて「支払手数料」、清掃に関するものは「衛生費」のように仕訳のルールを決めておけば、雑費を減らせるうえに迷うことなく会計処理を進められる。

このような工夫も取り入れながら、誰が見ても分かりやすい帳簿や決算書を作成していこう。

いま見直すだけで無駄な時間を削減できる!さっそく管理体制の見直しを

会計処理をスムーズに進めるには、まずは自社の管理体制から見直す必要がある。「税込経理方式・税抜経理方式」のどちらを採用しているのか、また備品の各費用をどのように処理しているのかは、今すぐにでも見直しておきたい。

管理体制の見直しには手間がかかるものの、いま見直しておけば将来的に生じる多くの手間(=無駄な時間)を削減できる。事業者にとって会計処理は常に発生する業務なので、この時間を毎回節約できる意味合いは非常に大きい。

本記事で解説した基礎知識を理解した経営者は、さっそく管理体制の見直しから始めてみよう。

文・片山雄平(フリーライター・編集者)