リモートワークの活用やICTツールの飛躍的な進歩は、ビジネスにおける物理的な距離を克服してきている。従来ビジネスは都心部主体で行われてきたが、地方でのビジネスのメリットを活かして成功する企業が存在する。

今回は、地方でのビジネスのメリットと成功事例を紹介する。

目次

  1. 地方がビジネスに向いている4つの理由
    1. 1.明確な企業理念やビジョンがたてられる
    2. 2.米国企業と比べれば地方も近い
    3. 3.インターネットが距離を克服する
    4. 4.政府が推進する地方創生
  2. 地方でのビジネスにおける4つのメリット
    1. 1.競合他社がいない
    2. 2.地方産業を活かせる
    3. 3.コストパフォーマンス
    4. 4.ライフワークバランス
  3. 地方でのビジネス成功事例4選
    1. 1.IT企業が進出する徳島県神山町
    2. 2.ローカルベンチャーを創造する岡山県西粟倉村
    3. 3.農家の高齢化による請負耕作ニーズをビジネスチャンスに活かす石川県白山市
    4. 4.グローバルニッチトップ企業の地方ビジネス島根県大田市
  4. 地方でのビジネスはメリットも多い

地方がビジネスに向いている4つの理由

地方でのビジネスは今がチャンス?メリットと成功事例を紹介
(画像=fizkes/Adobe Stock)

近年のインターネットや通信機器ツールの飛躍的な発展は、ビジネスを実行する上での物理的な距離を克服しつつある。動画を利用したミーティングは、移動にかかる時間とお金を節約できるメリットがある。 文章での連携も、メールから進化し、チャットワークのようにリアルタイムで会話のように、連続したコミュニケーションを可能としている。

ビジネスを遂行する上での、コミュニケーションツールはネット環境とスマホさえあれば利用できる。コストをかけて地方に拠点を作ってしまえば、地方を拠点としたビジネスを展開することが可能だろう。消費者のクレジットカードやスマホなどのツールの普及も地方と都会の距離を縮めている。さらに、道路や鉄道、空港、電力、通信などのインフラ整備が日本の地方で進んでいることも地方でのビジネスが可能な基盤となっている。

1.明確な企業理念やビジョンがたてられる

企業経営にとって、最も重要なベースになるのが「明確な企業理念とビジョン」である。 企業の目的や存在意義は、経営者の志でもあり、企業運営の基幹だ。地方でのビジネスの場合「企業の発展によって、地元の経済発展に貢献し雇用を創出する」といった、明確で分かりやすい企業理念やビジョンがたてやすい。

地方でのベンチャー企業の企業理念は、拠点を置く地方の発展と雇用の確保へと直接的に結びつく。企業の存在が社会貢献に結び付く点は、明確な企業理念とビジョンになる。地方でのビジネスは、地元企業という強いモチベーションを生みだすのである。

地元企業への社員の帰属意識やモチベーションは、プロ野球の球団が、地方に球場を持ち、地元からの圧倒的な指示を受ける事実や、地元民が地元に工場をもつ商品に強い愛着を持つ気持ちとよく似ている。単純に自身の生活に根付いている会社が好きという意識をつくりやすいのである。

都心部でベンチャー企業を起業しても、地方で得られる社員の帰属意識やモチベーションは生まれない。企業経営にとって最も重要な企業理念とビジョンを、社員に分かりやすくつくることが可能で、浸透しやすい点は、地方でのビジネスの最大の魅力だ。

2.米国企業と比べれば地方も近い

ビジネスにおいて都会と地方を考える時、どうしても、日本国内の基準で考えてしまいがちだ。しかしグローバルな視点で考えると、日本の地方は、たどり着くことが困難な未開の地ではない。

日本は交通機関が発達しているし、道路の舗装率も高い。広大な国土を持つ米国企業のビジネスエリアと比較すれば、日本の地方は物理的な距離が、比較にならないほど近いのである。

人と人が面談しなければならない必要性があるケースでも、週に1~2回であれば、地方から都心部への異動は可能なはずだ。

3.インターネットが距離を克服する

地方に事業の本拠地を置き、地方中心に事業を展開する場合は、自社に必要なインターネット通信環境を整えることで、ビジネス運用は可能だろう。

都心部に本拠点を持ち、地方にサテライトオフィスを展開してビジネスをスタートする場合は、テレワークの設備を整える必要がある。現在は新型コロナウイルス拡大の影響もあり、テレワークへの需要が日に日に高まっている。東京しごと財団が提供する「テレワーク助成金」などを活用して設備を充実させるのも一手だ。

4.政府が推進する地方創生

政府が推進する地方創生では、地方でのビジネスを支援している。地方でビジネスを展開する場合は、国や地方公共団体との連携も重要だ。政府はまち・ひと・しごと創生本部を設置し、毎年地方創生における戦略を策定しており、各自治体もその流れに合わせて地方での起業や雇用に対する助成金・補助金なども用意されている。

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地方でのビジネスにおける4つのメリット

地方でのビジネスと比較すると、都会でのビジネスは数的に有利な点が多い。資金調達先、営業先、人口、市場、商圏などがそれだ。

しかし、その数的な優位性が、企業を成功させるとは必ずしも言い切れない。都会は、競合他社の数も地方とは比べ物にならないほど多いためだ。

1.競合他社がいない

地方でのビジネスのメリットのひとつに、競合他社がいない点があげられる。都会で経営できる企業が、競合他社がいない地方で経営を始めた場合、トップシェアを獲得する可能性があるということだ。

2.地方産業を活かせる

地方産業を活かせる点も、地方でのビジネスの大きなメリットになる。地方特有の名産品は、地元では当たり前にあるものだが、全国市場では大きなアピールポイントになる。

さらに、地方産業に付随した商品を開発・生産すれば、その地方ゆえの大きな市場を独占することができるのだ。たとえば、農業や漁業には、必要な製品やサービスがある。

これは、地方ならではのニーズなのである。

3.コストパフォーマンス

地方でのビジネスは、インターネット環境の整備など、スタート時にコストが発生するが、事務所の賃貸料などのランニングコストは、安く済む可能性が高い。さらにビジネス用クレジットカードでランニングコストを支払い、そのポイントで経費を削減する活用方法もある。

4.ライフワークバランス

地方でのビジネスでは、社員の居住地から職場までの距離が、近いことが多いため通勤時間が短く、1日の時間を有効に活用できる。家族との時間や地域交流の時間が増え、ワークライフバランスがとれた働き方が実現できる。

加えて自然に恵まれた環境は、社員の健康維持にも効果的である。

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地方でのビジネス成功事例4選

地方でのビジネス成功事例には、コストパフォーマンスやライフワークバランスの高さを期待した「サテライトオフィス」、地方特有の資源を活用した「ローカルベンチャー」、「地方産業に付随したビジネス」、「グローバルニッチビジネス」などがあげられる。

1.IT企業が進出する徳島県神山町

神山町は、ITベンチャーが古民家を再利用してサテライトオフィスを構えたことから、マスコミにも多く取り上げられ、日本のみならず海外から視察に訪れるほど、注目のエリアとなっている。

神山町が興味深いのは、アートのプロジェクトからスタートしている点だ。神山町では1999年から「神山アーティスト・イン・レジデンス」というプロジェクトを開始した。

このプロジェクトは、国内外からアーティストを招き、神山町に2~3ヶ月滞在しながら、アート作品を制作してもらう企画だ。

「神山アーティスト・イン・レジデンス」のプロジェクトは、アーティストから、フリーランスやクリエイターに広がっていき、IT系のフリーランスが訪れるようになった。

そのことからIT企業のサテライトオフィスが、設置されることになったのである。

一連の地方でのビジネスが発展し続けている背景には、特定非営利活動法人グリーンバレーの将来的な展望を見越した仕掛けがあり、神山町のある徳島県が、光ファイバーによるブロードバンド環境を整備していた点があげられる。

神山町には、自由な働き方をするおしゃれな人達が、移住し、古民家を再利用したIT企業のサテライトオフィスをはじめ、アーティストのアートが描かれたカフェや宿泊施設などが増えている。

神山町の次のステップは、観光ビジネスである。「神山アーティスト・イン・レジデンス」に招かれたことをきっかけに、神山町に移住した、外国人が地ビールの製造を始めたり、地元の食材を使ったレストラン、神山杉を素材にして作った食器などを販売するショップなど、里山の風景のあるエリアを活かしたプロジェクトが進んでいる。

2.ローカルベンチャーを創造する岡山県西粟倉村

岡山県西粟倉村は、村の面積の95%を森林が占めた豊富な森林資源を活かしたローカルベンチャーを成功させたエリアだ。周囲の自治体の合併が進む中で、村として自立の道を選んだ。

岡山県西粟倉村のローカルベンチャーは、森林資源を活用した木工家具のベンチャーから始まり、ベンチャーを目指す人材の発掘と育成を行う村の組織の設立へと進んでいく。

村の組織設立には厚生労働省の補助事業を活用し、森林資源の再生と有効活用を掲げた「百年の森構想」という明確なメッセージを発信している。

「百年の森構想」では、従来の林業の構造改革に取り組み、木材の加工から販売までの事業を一括して行う地域商社の設立を行って、市場の拡大を図っている。

移住者の受け入れとローカルベンチャーの育成にも積極的で、複数のローカルベンチャーの立ち上げに成功している。

岡山県西粟倉村のローカルベンチャーは、、事業を実行するために必要な資金に地方創生ICOを活用した。地方創生ICOとは、地方自治体が発行したトークンに対し、投資家が対価として支払う仮想通貨を資金調達として活用する手法だ。トークンを通した資金調達によって、地方自治体は投資家とつながり、世界に向けて地方自治体の事業の魅力を発信することに繋がるのだ。

3.農家の高齢化による請負耕作ニーズをビジネスチャンスに活かす石川県白山市

石川県では、農家の高齢化によって、請負耕作ニーズが増加している。株式会社六星は、請負耕作ニーズをビジネスチャンスと捉え、石川県で最大の稲作経営を行うまでに事業を拡大した。

株式会社六星は、従前の農業法人の考え方から脱却し、顧客ニーズに合った企業経営を実行した。結果、菓子、餅、惣菜の製造、販売、レストラン経営まで事業を拡大している。

株式会社六星のビジネスの成功は、高齢化によって危ぶまれた白山市の農業を支えるとともに、生産、加工、販売などに事業を拡大することで、地方における安定した雇用を創出しており、地域社会に貢献している。

4.グローバルニッチトップ企業の地方ビジネス島根県大田市

島根県大田市にある、中村ブレイス株式会社は、世界的に認められる義肢装具を製造する 医療機器メーカーである。

中村ブレイス株式会社は、ユーザーのリクエストに応える精巧な手、耳、人工乳房などを製造することができ、日本全国から入社希望者が集まり、世界中から注文が集まるグローバルニッチトップ企業だ。

価値がある企業には人が集まり、地方に拠点があっても経営は成り立つのである。

地方でのビジネスはメリットも多い

今回は地方でビジネスを行うことのメリットや事例について見てきた。昨今、リモートワークの活用やICTツールの飛躍的な進歩でビジネスにおける物理的な距離は克服され、地方でのビジネスはかなりハードルが低くなっている。もちろん、情報やリソースの乏しさもあるかもしれないが、地方でのビジネスはその土地ならではの特性を生かした唯一無二のモデルが生まれるという魅力もある。

地方自治体の補助金や助成金も活用しつつ、差別化できる地方でのビジネスについても検討してみてはいかがだろうか。

文・小塚信夫(ビジネスライター)