法人には、いわゆる法人税のほかにも、様々な税金が課税されており、法人を運営する以上、必要な税金についての理解と確実な納税が必要である。以下に、法人が課税される税金について、主要なものから細かいものまで、その種別と課税方法について説明していく。
目次
法人にかかる主要な税金は?

まずは法人として必ず納めなければならない主要な税金について解説する。
法人3税とは
法人にはその事業活動に対して、さまざまな税金が課税される。その中でも、法人の利益=所得に対して課税されるものが一番主要な税金となる。それが法人3税とも呼ばれる、法人税・法人事業税・法人住民税である。以下にその説明を行う。
法人税
法人税とは、法人税の規則にのっとって計算した法人の課税所得に対して課税される税金である。法人に対して課税される基本的な税金で、他の税金の計算の基礎となる。法人税の計算は、課税所得に対して税率を掛けて算出する。
基本的には一定の税率であるが、課税所得額800万円以下の中小企業に対しては、低い税率が適用される。また、協同組合等、公益法人等に対しては、低減した税率が適用されている。
法人事業税
法人事業税とは、法人が行っている事業に対して課税され、都道府県に納める税金である。通常は法人の規模にかかわらず、所得に対して課税される(所得割)。そのほか、資本金・出資金の額が1億円を超える一般法人に対しては、その法人の当年度の付加価値額(付加価値割)もしくは資本金額(資本割)に対しても別途課税が行われる。
法人事業税は、法人税の計算における損金(経費)として計算することができるため、翌年に損金算入ができる点が特徴である。
法人住民税(県民税、市民税)
法人住民税とは、法人に対して課税される住民税であり、県税と市町村税に分かれている。法人の損益に関係なく資本金および従業員数に基づいて課税される均等割と、法人税の額に基づいて課税される法人税割によって成り立っている。
法人住民税は、自治体内に事業所の所在している法人に対し課税されるため、本店だけでなく、支店・営業所がある自治体でも課税される。その場合、法人税割の部分については法人税額を基準として課税総額を決定したのちに、各自治体における事業規模に基づいて、各自治体に分割して納付することになる。
法人住民税の計算方法
住民税、というと個人が納めるものという認識が一般的であるが、法人にも住民税が課されている。ここでは、法人住民税について県民税と市町村民税に分けて説明する。
いつ申告・納税するのか
法人住民税は、決算から2ヵ月以内に申告・納付しなければならない。ただし、株主総会の開催時期が決算日から2ヵ月以上先であるなどの理由がある場合は、法人税と同様に申告期限を延期できる仕組みがある。申告期限の延期の申請を行って承認された場合には、申告期限は承認された期間まで延長される。
納付期限そのものは変わらないため、申告期限の延長を行った上で申告期限に納付した場合には、遅延した期間の間の利子税が賦課されることになる。そのため、申告期限を延期している場合にも、予定している決算内容に基づいて見込み納付することが一般的である。
法人県民税の税率と計算方法
法人県民税は、前述の通り、均等割と法人税割に分かれており、その2つを合計した額が税額となる。均等割は資本金によって決定され、標準では以下のようになっている。
資本金~1,000万円以下 2万円
資本金1,000万円超1億円以下 5万円
資本金1億円超10億円以下 13万円
資本金10億円超50億円以下 54万円
資本金50億円超 80万円
法人税割は、法人税×税率で計算される。令和1年10月以降に事業開始する事業年度においては、標準税率は1%に設定されている。
法人県民税・市民税・事業税の計算上の共通事項として、以下の2点がある。
1.複数の自治体に事業所を有する法人について、均等割は各都道府県にそれぞれ納付し、法人税割・事業税については全体としての税額を計算した後に、分割基準(市県民税は従業員数、事業税は従業者数・事業所数が基本となるが業種によっては異なる)に基づいて、各都道府県に分割して納付することになる。
※分割基準
濱田会計事務所
東京主税局
2.その自治体の状況に応じて、標準税率とは別の超過税率・軽減税率を各自治体が独自に決定・使用することができる。
※全国の適用状況一覧
総務省自治税務局
※岡山県の例
岡山県における法人県民税・法人事業税の税率等
※東京都の例
東京主税局
法人市町村民税の税額と計算方法
法人市町村民税も、法人県民税と同様に、均等割と法人税割に分かれており、その2つを合計した額が税額となる。法人市民税の均等割は、資本金およびその自治体における従業員数の合計によって決定され、通常法人の場合の税額は以下の通りである。
資本金等の額が50億円超 50人超300万円 50人以下41万円
資本金等の額が10億円超 50人超175万円 50人以下41万円
資本金等の額が1億円超 50人超40万円 50人以下16万円
資本金等の額が1千万円超 50人超15万円 50人以下13万円
資本金等の額が1千万円以下 50人超12万円 50人以下5万円
法人税割の計算方法も、県民税と同様に、法人税額×税率で計算される。令和1年10月以降に開始する事業年度では、標準税率は6.0%に設定されている。分割方法については同様である。
法人が納めるその他の税金
法人には上記以外にも様々な税金の納税義務がある。以下に代表的なものについて説明する。
特別法人事業税
令和1年10月以降に開始する事業年度から地方法人特別税が廃止され、特別法人事業税が課税されることとなった。これは国税であるが、法人事業税とともに計算して申告する。法人事業税に税率37%を掛けて算出する。
消費税
消費税は、消費者による物やサービスの購入に対して課税される税金である。事業者である法人は、消費税の課税取引に対する売上(課税売上)の際に預かった消費税と、課税売上を上げるために使用した仕入・経費(課税仕入)の支出の際に支払った消費税の差額を納付することとなっている。
その計算方法により全体として見たときに、事業全体の付加価値部分に消費税が課税されるような仕組みに設計されている。その法人の売上構成(課税売上割合)によって課税基準が異なり、それに基づく複雑な計算が必要な税金である。課税売上が1,000万円以下または設立2期以内の資本金1,000万円以下の法人等の場合には、納税義務が免除される。
消費税としての確定申告・納付は決算期間に合わせて行う。それ以外に中間申告・納付は前年度の納税額によって異なり、中間申告不要、年1回、年3回、年11回の中間申告・納付が必要なケースに分かれる。消費税の中間申告は、原則、前年度の納税額を基準として定められた額を申告・納付するが、その時点で消費税の中間申告書を作成して申告・納付することも認められている。
固定資産税
固定資産税は、企業が所有する資産(土地・建物・事業用資産)に課税される税金である。1月1日現在で所有している資産に対して、通年で課税されることになる。納付に関しては、4回に分割して納付するが、一括納付も可能である。
不動産に関しては、自治体によって算出された評価額に対して、税率(1.4%)を掛けて算出する。自治体によっては、都市計画税(税率0.3%)が合わせて課税されることになる。事業用資産に対しては、取得価格から経年劣化を考慮した価格に対して、税率(1.4%)を掛けて算出する。
源泉所得税
源泉所得税とは、源泉徴収の対象となる所得を支払うもの(源泉徴収義務者)が、その支払う金額から、規定の税額を控除して支払い、差額を源泉徴収義務者がまとめて納付する税金である。企業として大きく関係する源泉所得税は、給与所得・退職所得に対する源泉徴収、報酬・料金(税理士等の専門家に対する報酬、原稿の作成等に対する報酬、賞金等)に対する源泉徴収がある。
給与・退職給与については、扶養家族数・支給額に対して源泉徴収税額が決められており(源泉徴収税額表)、それに基づいて源泉徴収を行う。報酬・料金については、その対象となる所得の種類とその税額が、多岐・詳細に規定されており、その内容に基づいて源泉徴収を行う必要がある。
源泉所得税は、給与、報酬などの支払い時に源泉徴収分を控除して支払いを行い、支払いを行った月の翌月10日までに、源泉徴収した税額をまとめて納付することが原則である。小規模事業者については、事前の届け出・承認により、半年毎の納付とすることができる特例もある。
事業所税
事業所税とは、人口30万人以上の市町村(含む東京都特別区内)が、そこに所在する事業所が一定規模以上の事業者に対して課税する税金である。そのため、全国でも特定の一部の自治体でのみ課税される税金である。
都市サービスとの受益関係に着目して課税するため、課税標準が事業所床面積(資産割)と従業者給与総額(従業者割)となり、それぞれに課税される。資産割は事業所床面積㎡あたり600円(免税点1,000㎡)、従業者割は給与総額の100分の0.25(免税点100人)であり、対象となる事業所の種類・用途や従業者の属性によって免税となる部分もある。
自動車税
法人・個人問わず、4月1日現在で所有している自動車に対して課税される県税である。令和1年10月より制度改正があり、令和1年10月以降に取得した自動車に対しては、減額された自動車税が課税される。排気量、環境性能に応じて税額が設定されているため、税額は左記2点によって異なる。
法人が納付しなければならない税金は多岐にわたる
上記に紹介してきた通り、法人には、いわゆる法人3税のほか、さまざまな税金が課税されている。税金の種類が多く、制度が複雑で失念しがちであるが、行政サービス維持のための財源でもあり、法人での資金調達時などには適正な納税が行われていることは必須のため、忘れずに申告・納付しておくことが必要である。
文・村上克己(中小企業診断士・元銀行員・ベンチャー企業財務担当)