企業が負担する法人税の推移は、税制改革による定期的な法人税率の見直しによって、変動を続けている。経営者にとって、法人税等の税制改革のフォローは不可欠である。ここでは、法人税の税率の推移や税制改正の詳細に加え、法人税以外の他の税目の推移についても紹介する。

目次

  1. 法人税の推移は減少傾向
  2. 法人税に関する税制改革
    1. 1.地方法人税
    2. 2.法人住民税
    3. 3.法人事業税
  3. 世界の法人税率との比較
  4. 法人税とその他税金との推移比較
    1. 所得税の推移
    2. 相続税の推移
  5. 所得税額控除と法人税
  6. 法人税は経営者にとって追い風?

法人税の推移は減少傾向

企業には追い風?日本の法人税の推移と世界との比較
(画像=polkadot/stock.adobe.com)

経営者は、事業を軌道に乗せる事のみに集中して、専門的な会計処理は税理士に一任することもできるが、基本的な税制については把握しておかなければならない。次の図表は、法人税率の推移を示したものである。

企業には追い風?日本の法人税の推移と世界との比較
(画像=財務省)

昭和から平成の時代にかけては、法人税率が40%を超える時期もあったが、度重なる税制改革によって法人税率は年々引き下げられ、現在は普通法人の法人税率は23.2%に設定されている。

資本金が1億円以下の法人の中で、課税所得が800万円以下の事業者に対しては、法人税率15%が適用される。中小企業の中でも規模の小さな法人に対しては、税率が優遇されているというわけだ。

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法人税に関する税制改革

税制改正は度々実施されているが、近年実施された法人が対象となる税制改革を中心に、主な変更点を税目別に紹介する。

1.地方法人税

地方法人税は、企業数や規模によって各地域で税収の偏在性を是正するために創設された税金であり、国が徴収した後に各地方に配分する地方交付税の財源としている。2019年9月31日までにスタートした課税事業年度においては、地方法人税率は4.4%であったが、同年10月1日以降はその税率が10.3%に引き上げられた。

例えば、資本金が1億円以下で課税所得が800万円以下の企業で、該当年における課税所得が500万円の場合、500万円に対して15%の法人税が課税され、税額は75万円となる。この75万円に10.3%を乗じた額である約7.3万円が、地方法人税額となる。

2.法人住民税

地方法人税の税率が4.4%から10.3%へ、5.9%引き上げられた分を調整するために、法人住民税の税率が見直された。この措置によって、2019年10月1日以降にスタートした事業年度の法人住民税のうち、都道府県に収める分の税率が3.2%から1%へ、市町村分が9.7%から6%へ、それぞれ引き下げられた。

それぞれ引き下げられた割合の合計が5.9%となり、地方法人税の税率上昇分が相殺されている。

3.法人事業税

法人事業税関連では、地域間の税源偏在を是正することを目的として、2008年に地方法人特別税が設置された。しかし、法人事業税は消費税を含む抜本的な改革が実施されるまでの暫定的な措置であったことから、2019年9月30日までにスタートした事業年度をもって廃止された。

法人事業税は、事業所が所在する都道府県に納付する税目であり、その税率は各都道府県で幾分の差がある。

東京都を例として改正された内容を挙げると、2016年10月1日から2019年9月30日までにスタートした事業年度の普通法人の標準税率は、年400万円を超えて800万円以下の所得に対しては5.1%だったが、2019年10月1日以降の事業年度からは5.3%に税率がアップしている。

法人税は、基本的に企業の利益に対して課税されるが、資本金が1億円を超える企業を対象とした外形標準課税の制度もある。

この対象となる外形標準課税法人については、2016年10月1日から2019年9月30日までにスタートした事業年度の標準税率は年400万円以上800万円以下の所得に対しては0.5%だったが、2019年10月1日以降の事業年度では0.7%に引き上げられている。

世界の法人税率との比較

ここまで日本の法人税率を見てきたが、比較対象がなければその水準が高いのか低いのかも分からないだろう。欧米諸国など36カ国で構成する経済協力開発機構(OECD)の中で比較してみよう。

日本の法人税率(23.2%)より高い税率を課しているのはフランス(32.02%)、オーストラリア、メキシコ、ポルトガル(いずれも30 %)などだ。一方、スイス(8.5%)、ハンガリー(9%)の法人税率は日本の半分以下で、ドイツ(15.83%)イギリス(19.0%)は20%を切る水準に設定されている。

2020年時点では、日本の法人税率はOECD加盟国36ケ国のうち14番目に高い水準となっている。

企業のグローバル化が進んでいる時代においては、各国とも法人税率を引き下げて企業誘致を図ろうとする。また、法人税を引き下げれば、企業が税負担の軽減に伴って、さらなる投資に積極的になることも期待できる。

法人税率の引き下げによって、目先の法人税収は減少する事になるが、減税によって海外から多くの企業を誘致したり、既存企業の活動が活発化したりすることで、課税対象となる企業全体の成長を促して、結果的に税収を増やすことも可能である。

2017年には、米国のトランプ大統領が、それまで35%に設定されていた法人税を一気に21%まで引き下げた事で有名である。

現在は日本国内でのみ事業所を運営している中小企業でも、将来的に海外進出や現地法人を立ち上げるような場合には、各国の法人税率も、拠点を選定する上で決め手の一つとなるだろう。

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法人税とその他税金との推移比較

法人税の引き下げは、日本だけにとどまらずグローバルなトレンドとして定着しつつある。税制には、法人が対象となる項目以外にも個人に対して課税される税目もあるが、こちらも法人税同様に時代とともに変化している。

所得税の推移

個人への課税としてよく知られる所得税は、過去35年の間に税率が段階的に見直されてきた。

企業には追い風?日本の法人税の推移と世界との比較
(画像=財務省のデータを元に筆者作成)

バブル景気前の1986年当時、所得税は10.5%から70%の15段階の税率が、所得に応じて設定されていた。また当時、個人住民税は14段階の税率が設けられており、その最高税率は18%となっていた。従って、高額所得者(課税所得が8,000万円以上)には、所得税と個人住民税を合わせて88%もの税率がかけられていた。

高額所得者の課税所得のほとんどが、税金として支払われていたのである。   バブル崩壊後の1994年、所得税制の見直しが実施され、最高税率が70%から50%へ大幅に引き下げられた。また、それまで税率は課税所得に応じて15段階に設定されていたが、5段階に簡素化された。同時に個人住民税の見直しも実施され、最高税率は15%まで引き下げられた。

これにより、高額所得者の所得税と個人住民税の最高負担税率は65%となった。さらに2006年には5段階の税率が4段階までに絞り込まれ、最高税率は37%にまで下げられた。

2006年までは所得税は引き下げ傾向となっていたが、2015年には4段階だった税率が7段階に拡充され、最高税率が45%(課税所得4,000万円以上)に引き上げられた。37%から45%へと8%の上昇となったが、一方で個人住民税の最高税率が13%から10%に引き下られたため、所得税と個人住民税を合わせた最高税率は50%から55%へと、5%の上昇にとどまった。

相続税の推移

税目の中で、個人にとって馴染みが深い相続税も、税率を含めて段階的に改正が実施されている。

企業には追い風?日本の法人税の推移と世界との比較
(画像=財務省のデータを元に筆者作成 )

相続税に抜本改正が実施される以前の1987年末までは、相続税の最高税率は75%に設定されていた。この最高税率が適用されたのは、各法定相続人の取得金額が5億円を超えた場合であった。

1997年までの改正では、最高税率は70%のまま据え置かれていたが、その税率の対象となる各法定相続人の取得金額が、1997年の改正では10億円以上、2003年には20億円以上に引き上げられた。相続税の課税価格がより大きいほど、高い税率が課せられるようになった。

また、相続税の抜本改正前には14段階に設定されていた相続税率は、1994年度の改正において9段階にまでスリム化した。

2003年の相続税制改正では、最高税率が50%にまで大幅に引き下げられたのに加え、それまで最高税率が適用される各法定相続人の取得金額が20億円以上だったものが、3億円以上に引き下げられた。

2003年まででも、各法定相続人の取得金額が3億円以上4億円以下の場合の税率は50%であったため、この水準の金額を相続をする者にとっての税負担は、制度改正によって大きな変化はなかった。

一方、最高税率が適用される各法定相続人の取得金額が大幅に引き下げられたため、高額な相続をするケースでは大幅な税負担の削減となった。2015年の改正では、相続税の最高税率は55%へと引き上げられたが、各法定相続人の取得金額も6億円以上へと、合わせて引き上げられている。

相続税も所得税同様に、かつては14段階に設定されていた税率が一時は6段階にまで絞り込まれ、2015年の改正では8段階に設定されている。

所得税額控除と法人税

所得税の税率の推移を確認した際に、法人として配当金や預金からの利子を受け取った場合に、所得税が源泉徴収されていた事を思い出した経営者もいるかもしれない。この場合、法人税と所得税が二重に課税されていることになるため、所得税控除の対象となる。

仮に銀行の利息で100万円を受け取った場合、所得金額に税率23.2%をかけた23.2万円が法人税額となる。しかし、所得税控除を利用すると、源泉徴収で差し引かれた所得税15万円が控除されるため、法人税額は23.2万円から15万円を差し引いた8.2万円となる。

法人税は経営者にとって追い風?

法人税の推移は、税制改革の一環で減少傾向をたどり、直近では微調整が行われて若干の引き上げとなっている。昭和から平成にかけて法人税の税負担が軽減される中、令和の時代にビジネスを展開する中小企業にとっても追い風となっている。

今後のさらなる事業発展ためにも、法人税を含む税制への理解を深めることは、企業経営の運命を左右する要素となる。税制度改革のフォローアップは欠かさないようにしていただきたい。

文・志方拓雄(フリーライター)