新たな事業を興したり、従業員を採用し雇用を維持したりするとき、中小企業の経営者には補助金や助成金を検討してほしい。なぜならこれらの支援制度の多くは中小企業向けのものが非常に多いからだ。最近で言えば、補助金には新型コロナウイルス感染症対策で在宅勤務制度を導入するためにテレワーク、リモートワークの導入に取り組む事業を優先的に支援するなどの内容もある。

ただ、仕組みや制度の違いを知らないと活用しにくいのも事実だ。補助金や助成金の概要や種類について確認していく。

鈴木まゆ子
鈴木 まゆ子(すずき・まゆこ)
税理士・税務ライター。税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。

目次

  1. 補助金・助成金とは?定義を解説
    1. 補助金とは?
    2. 助成金とは?
  2. 補助金と助成金の違い4つ
    1. 違い1.審査の有無 補助金→アリ、助成金→ナシ
    2. 違い2.管轄省庁が違う 補助金→経済産業省(が多い)、助成金→厚生労働省(が多い)
    3. 違い3.申請期間が違う 補助金→数週間〜1ヵ月、助成金→2ヵ月〜半年以上
    4. 違い4.使い道の証明の有無 補助金→証明が必要(提出)、助成金→証明が不要
  3. 知っておきたい中小事業者向けの補助金3つ
    1. 1.IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)
    2. 2.ものづくり補助金
    3. 3.持続化補助金
  4. 知っておきたい中小事業者向けの助成金2つ
    1. 1.雇用調整助成金
    2. 2.キャリア形成促進助成金
  5. 補助金・助成金の情報の集め先は?
    1. 補助金
    2. 助成金
  6. 補助金・助成金の相談先はどこ?
    1. 補助金の相談先……認定支援機関(経営革新等支援機関)
    2. 助成金の相談先……社会保険労務士(労務関係を専門とする)

補助金・助成金とは?定義を解説

中小企業・ベンチャー企業が活用したい補助金・助成金5選!どこに相談すれば良い?
(画像=GalakticDreamer/Adobe Stock)

そもそも、補助金と助成金とはどういうものなのだろうか。両制度は一見似ているが、具体的には次のような仕組みになっている。

補助金とは?

補助金とは、国や地方自治体が新規事業や創業促進といった政策目的実現のために民間の事業者に支給するお金を言う。税金が補助金の源泉であるため、補助金の公募や交付の時期も国の予算が決まった後になる。通常、4月から5月に公募が行われる。「ものづくり補助金」に代表されるように「補助金=製造業向け」というイメージが強いが、実際にはサービス業向けの補助金など幅広い種類の補助金がある。ただし、予算が限られているため、申請しても受給できる事業者は1割程度だと言われている。

助成金とは?

助成金は、企業の経営を支えるべく、国や地方自治体から支給されるお金だ。雇用促進や維持、労働環境の改善などの支援を目的として厚生労働省が交付する助成金の他、新製品や技術の開発を支援すべく東京都が交付する助成金などがある。助成金ごとに公募期間が設けられているが、年間を通してさまざまな助成金が存在するため、工夫すれば随時申請することが可能だ。ただし、厚生労働省が交付する助成金は、財源が雇用保険料であるため、申請したい企業は原則労働保険・社会保険に加入しなくてはならない。また、雇用管理に必要な帳簿書類を備えていること、適正な労務管理を行っていることなどが申請企業側に求められる。

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補助金と助成金の違い4つ

「融資と違って返済しなくていい」「国や地方自治体が目的とする公益性あるお金の使い方が求められる」「原則後払い」という点ではどちらも同じだ。しかし、次の4つの点で違いがある。

違い1.審査の有無 補助金→アリ、助成金→ナシ

補助金は交付前に事前審査がある。申請して要件を満たしているだけでは足りず、この審査に合格しないと補助金は受け取れない。一方、助成金に審査はない。管轄の官公庁や団体が提示する要件を満たした上で申請すれば、受給できる。

違い2.管轄省庁が違う 補助金→経済産業省(が多い)、助成金→厚生労働省(が多い)

補助金は経済産業省管轄のものが多い。交付目的も景気刺激や地域経済の活性化といった政策の実行促進が中心である。一方、助成金は厚生労働省管轄のものが多い。雇用の促進や維持・確保や労働環境の改善といった経営の課題解決のものが中心だ。

違い3.申請期間が違う 補助金→数週間〜1ヵ月、助成金→2ヵ月〜半年以上

補助金も助成金も申請はそれぞれに決められた期間内に行わなければならない点で共通する。ただ、補助金の方が公募期間は短い。たいていは数週間から1ヵ月程度で終わってしまう。一方、助成金も公募期間が設けられているが、2ヵ月間から半年以上など、補助金よりも長めに設定されている。さらに助成金の種類を問わないなら、年間を通して申請が可能だ。

違い4.使い道の証明の有無 補助金→証明が必要(提出)、助成金→証明が不要

どちらも「経費や資産購入にお金を使った後の申請・受給」になる点では同じだ。しかし、その使途についての証明の有無で異なる。補助金は申請時に領収書などの証憑書類を使途の報告書とともに管轄省庁に提出しなくてはならない。また、受給後も会計検査院による調査が入る可能性がある。しかし助成金にはこういった使途の証明は必要ない。また、調査が入る可能性も原則ない。

知っておきたい中小事業者向けの補助金3つ

中小企業向けの補助金として是非知っておきたいのが次の3つだ。

1.IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)

IT導入補助金は、生産性の向上を目的としてソフトウェアなどITツールを導入した中小企業に向けて交付される補助金だ。ただし、ITツールなら何でも良いわけではない。IT導入支援事業者が登録するツールに限られる。さらに、ITツール導入により生産性向上の伸び率が1年で3%以上といった数値目標を作成しなくてはならない。補助金額は類型によって上限が異なるものの30万円以上450万円以下だ。補助率はITツールそのもの以外にもクラウド利用費や専門家のコンサル料を含めて支出した金額の2分の1となっている。

なお、コロナショックによりリモートワークを導入した中小企業については、優先的に支援対象とされる模様だ。公募の最新情報は「IT導入補助金2020」の公式HPの新着情報をこまめに確認していただきたい。

IT導入補助金2020(令和元年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業

2.ものづくり補助金

ものづくり補助金の正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」で、中小企業向けの補助金制度だ。略語を聞くと製造業のみしか受け付けないように感じられるが、実際には新製品の開発だけでなく新規サービスの開発や生産プロセスの改善なども支援対象となる。そのため、飲食業でも申請可能だ。申請するためには、給与支給総額を年1.5%以上引き上げるなどの要件を満たさなくてはならない。補助上限金額は1000万円から1億年、補助を受ける割合は目的事業に対して支出した金額の半分から3分の2までとなっている。

なお昨今、コロナショックによる影響を鑑みた緩和策も取り入れられた。中国での製造ができなくなった等の事情により国内に生産拠点を移し、設備投資を行った事業者については、給与支給総額などの要件を充足する期限が1年間先になってもよいとされている。

3.持続化補助金

持続化補助金の正式名称は「小規模事業者持続的発展支援事業」と言う。小規模事業者が店舗の改装やホームページの作成・改良、チラシ・カタログなどの広告宣伝など、販路開拓のために支払った費用について補助金を交付する仕組みだ。ただし単に支出すればよいわけではなく、自ら作成した経営計画に則っていることが必要だ。50万円を上限額とし、支出した費用の3分の2まで補助される。

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知っておきたい中小事業者向けの助成金2つ

中小企業向けの助成金として知っておきたいのが次の2つだ。

1.雇用調整助成金

雇用調整助成金は、景気の変動や災害などやむを得ない事情により、事業規模を縮小せざるを得ない事業者が休業等をしてもなお従業員の雇用を維持した時に受給できる助成金だ。 2008年のリーマンショック時や2019年の台風19号の被害、そして2020年のコロナショックなどで経営に大きなダメージが生じる出来事がある都度、注目された。給付を受けるには、雇用保険に加入していること、直近3ヵ月の月平均売上高が前年同期に比べて10%下がっていること、休業や出向、教育訓練などで雇用調整を行いつつも雇用を維持していることなどが申請の条件となる。

ただ、今回のコロナショックによる影響を鑑み、減少割合が10%でなく5%でもよいこと、雇用保険に加入していない事業者でも申請可能であるなど、一部要件が緩和されている。

2.キャリア形成促進助成金

非正規労働者が企業内におけるキャリアアップを促進するための助成金だ。企業に勤務する非正規労働者の正社員化あるいは待遇改善を行った事業者に対して交付される。この助成金の交付を受けるには、単に雇用保険に加入し、キャリアアップ事業に取り組んでいるだけでは足りない。事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いていることやキャリアアップ計画書を事前に提出することが求められる。

中小企業が有期雇用労働者を正規雇用労働者等に転換または直接雇用する場合、以下のように助成される(正社員化コース)。

  • 有期→正規:1人あたり57万円(72万円)
  • 有期→無期:1人あたり28.5万円(36万円)
  • 無期→正規:1人あたり28.5万円(36万円)

※カッコ内は、生産性要件を満たした場合に支給される金額 参考:キャリアアップ助成金のご案内(厚生労働省

これ以外にも、人材の定着や確保を図る目的や従業員の育児休業や職場復帰を支援する目的の助成金がある。また、今回、コロナ対策に伴う一斉休校により、休職せざるを得なくなった従業員を雇用している事業主向けに支払賃金を全額支援する「小学校休業等対応助成金」も新たに設けられた。

補助金・助成金の情報の集め先は?

以上が補助金・助成金の内容だが、いざ活用したいと思ったとき、どのように情報を集めたらよいのだろうか。「補助金」「助成金」というキーワードで検索するのは大事なことだが、そこで得た情報が確かだとは言い切れない。そのため、次のようにしてその都度詳細を調べるとよいだろう。なお、地方自治体などが行っている補助金・助成金についてもそれぞれ細かく要件が定められている。提出書類や要件、公募期間など漏れなく確認するようにしたい。

補助金

補助金制度の多くは経済産業省、特に外局である中小企業庁が中心となっている。そのため、今どんな補助金制度があるのか、申請期間や条件を細かく確認するなら、以下の中小企業庁サイトを確認しよう。

助成金

助成金は厚生労働省が中心となっているものが多い。そのため、雇用を中心とした助成金を調べたいのなら、厚生労働省の以下のサイトを確認するとよいだろう。

補助金・助成金の相談先はどこ?

さらに、補助金・助成金の制度の存在を知っても、きちんと受給に至るよう申請をするのも一苦労だ。補助金・助成金の制度の説明文には専門用語が使われていたり、条件が細かかったりと一般人には難しく感じられる。また、仮に理解ができたとしても、日頃の経営管理に忙しい経営者には手続き作業は荷が重い。そんなときこそ、頼れる誰かに相談しよう。補助金や助成金の相談先は、それぞれの専門家となる。

補助金の相談先……認定支援機関(経営革新等支援機関)

認定支援機関とは中小企業の経営の相談先として一定レベル以上の知識を備えた者に対し、国からお墨付きを得た公的機関を言う。この認定を受けている相談先には、各地域の商工会議所や商工会、金融機関の他、税理士や司法書士、中小企業診断士といった士業がある。ただ、認定を受けているからといって誰でも同じなわけではなく、機関によって経験値が異なる。支援機関が支援した補助金申請の実績を確認するようにしたい。

助成金の相談先……社会保険労務士(労務関係を専門とする)

社労士の誰もが助成金実務に強いわけではないため、助成金分野に強みを持つ社労士を探そう。HP等で確認したり、過去の実績を直接確認したりするのも有効だろう。また、地方自治体による助成金の中には、雇用関係ではなく企業の経営革新のためのものもある。そういったものは先述の認定支援機関に相談したほうがよいだろう。

文・鈴木まゆ子(税理士・税務ライター)