国や地方自治体から支給される補助金は、企業経営に活用することができる。しかし、補助金は用途によって税負担が異なり、仕訳も一般的な処理とは異なる。ここでは、補助金の仕訳について具体例を交えながら説明し、補助金の仕訳において重要な圧縮記帳の活用についても紹介する。

目次

  1. 補助金とは?
    1. 補助金とは何なのか?
    2. 補助金と助成金の違いとは?
    3. 補助金にかかる税金
  2. 補助金の仕訳の注意点
    1. 補助金の会計処理の流れ
    2. 決算をまたぐ場合の会計処理
  3. 補助金の税負担を減らす方法
    1. 圧縮記帳の特徴と仕訳
    2. 圧縮記帳の活用例
  4. 補助金の仕訳は単純だが、税金の取り扱いには注意が必要

補助金とは?

補助金の仕訳のポイントは?会計処理の具体的な方法や注意点を解説
(画像=lovelyday12/Adobe Stock)

補助金とは、国などが事業者に対して原則返済不要の資金を支給する制度である。事業者は、受け取った補助金を使用して何らかの支出をすることになるが、この支出は即時に損金として取り扱われるか、もしくは固定資産の取得を通じて減価償却費として損金に計上されることになる。

補助金とは何なのか?

補助金は、そもそも国民から徴収された税金が原資となっている。その補助金によって、固定資産の取得や投資を促したり、自然災害などで被った損害を補填するなどといった用途に使用される。具体的な補助金は数多くの種類があるが、主に下記のようなものがある。

  • 創業時の補助金
  • ものづくり補助金
  • 省エネルギー投資促進に向けた支援補助金
  • IT導入補助金
  • 事業承継補助金

補助金の内容は、国や地方公共団体の施策によって、期間や金額はもちろん、申請条件も変動する。補助金が受給できる条件については、中小企業庁のホームページなどを参照して、情報を頭に入れておきたい。

補助金と助成金の違いとは?

補助金と助成金は、国や地方公共団体から受け取れるという点、返済不要の資金である点は共通している。両者の大きな違いは、支給に対する予算設定があるか否かである。

補助金はあらかじめ予算が決まっており、申し込みが多数あれば、申請しても必ず受給できるとは限らない。それに対して、助成金は予算が決まっておらず、条件を満たせばどの事業者でも支給される。

なお、助成金は厚生労働省が管轄するものが多く、具体的な例としては下記のようなものがある。

  • 人材確保等支援助成金
  • 時間外労働等改善助成金
  • 障害者福祉施設設置等助成金
  • 重度障害者等通勤対策助成金
  • 人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)
  • 建設事業主等に対する助成金

補助金にかかる税金

法人税法上は、補助金を受け取った場合、補助金の用途によって税負担の有無が異なる。

「法人税基本通達15-2-12」によると、補助金が固定資産の取得または改良に充てるためのものであれば、益金に計上されず法人税はかからない。補助金を受け取って固定資産を購入したとしても、税金がかかってしまえば税金分は手元現金が必要になってしまうため、補助金としての意味がなくなるからである。

また、補助金が収益事業にかかる収入または経費を補填するためのものである場合は、益金に計上され、法人税がかかる。

一方、法人税は利益(税務上は課税所得と呼ぶ)に対してかかる税金であるため、補助金を受け取っていようと、会社全体が赤字であれば法人税は発生しない。そのため、現状利益が出ておらず、補助金を受け取ってもなお赤字が続くような場合は、実質的に補助金に対しての法人税はかからないことになる。

複数の会社を経営している場合、どの会社から補助金の申請をするか迷うならば、赤字の会社から申請することで企業グループの税負担を抑えられる可能性もある。補助金の申請の前に、各グループ会社の財務を確認しておこう。

補助金を受け取る時点で会社が黒字である場合は、補助金の金額がそのまま利益の増加につながるため、「補助金×法人税率」の法人税の増加が見込まれる。なお、法人税は、決算が確定して確定申告をした時点での支払いとなる。

例えば、3月末決算の会社を経営しており、補助金を4月に受け取ったのであれば、実際の法人税の支払は翌年の4月以降となるため、補助金の受取りと法人税の支払いタイミングに大きなズレが生じることになる。

消費税に関しては、日本国内において、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け、役務の提供が課税の対象となる。そのため、一般的に対価として支払われるものでない補助金は、消費税の課税対象とならないため、不課税取引として処理される。

補助金と同様に、寄付金、祝金、見舞金も同様に消費税の対象とはならない。

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補助金の仕訳の注意点

ここからは、補助金に関する会計処理のポイントや注意点を解説する。

補助金の会計処理の流れ

補助金の申請を行う際には仕訳を切る必要はない。申請の段階では補助金をもらえるかどうかは確定しておらず、収益として認識するには早すぎるためである。実際に補助金の仕訳を切るタイミングは、補助金の受け取りが確定した時点となる。

より具体的には、国や地方公共団体などから、補助金の支給決定通知書を受け取った時であり、下記のように仕訳を行う。

借方 貸方
現金預金:xxx 雑収入:xxx

なお、補助金には消費税は課税されないため、消費税に関する仕訳は切る必要はない。

補助金は本業による収入ではないため、売上には該当しない。そこで、勘定科目としては「雑収入」を使用する。雑収入勘定は、財務諸表上において、「営業外収益」か「特別利益」にて表示されるが、補助金の性質や金額的重要性に応じてどちらかは異なってくる。

本業の利益を意味する「営業利益」には影響がない点には注意が必要である。また、助成金に関しても補助金と同様の仕訳となる。

決算をまたぐ場合の会計処理

補助金の支給決定通知書を受け取った月と、実際に補助金が入金された月が異なっており、決算をまたいでしまう場合の会計処理は下記のとおりである。

借方 貸方
未収入金:xxx 雑収入:xxx

この仕訳を切ることにより、支給決定通知書を受け取った決算期に、補助金を雑収入に計上する。

翌月に実際に補助金の入金があった場合には、下記の仕訳を切る。

借方 貸方
現預金:xxx 未収入金:xxx

借方と貸方の勘定科目は、どちらも貸借対照表に関する勘定科目であるため、損益は計上されない。また、年度決算だけでなく月次決算を行っている会社は、補助金の支給決定通知書の受領月と入金月が異なっているならば、必ず上記の仕訳を切る必要がある。

補助金の税負担を減らす方法

補助金を受け取ると、原則として会計上は収益に計上され、法人税法上も益金として計上されてしまう。そこで、補助金の税負担を減らす方法として、圧縮記帳が挙げられる。

圧縮記帳の特徴と仕訳

圧縮記帳とは、税務上の課税を繰り延べる会計処理のことであり、圧縮記帳を行った決算年度の税負担を軽くするという効果がある。圧縮記帳は、補助金を使って固定資産を取得した時などに適用することができる。

仮に圧縮記帳を行わなければ、受け取った補助金に法人税がかかってしまい、税負担を抑えながら固定資産を取得してもらいたいという補助金の意義が弱まってしまう。

国からの補助金により土地を取得したケースの仕訳は、下記の通りである。

借方 貸方
土地:100 現金預金:100
現預金:50 雑収入:50
土地圧縮損:50 土地:50

この仕訳を切ることにより、雑収入と土地圧縮損が相殺される結果となり、当年度に税負担が生じないこととなる。

次年度以降に、補助金で購入した土地が200で売れたケースを考えてみよう。

借方 貸方
現預金:200 土地:50
土地売却益:150

圧縮記帳の効果により、土地の簿価が100から50に減少することにより、土地売却益もその分150へ増加している。仮に圧縮記帳を行っていなければ、補助金を受け取った期に50の収益、翌期に土地売却益として100の収益が計上されるため、合計150の収益となる。

つまり、圧縮記帳をしなかった場合に比べて、補助金の50にかかる税金を翌期以降に繰り延べられるのである。

これまでは土地の取得を例にとって説明してきたが、土地だけでなく、施設や工場の機械設備などの有形固定資産についても圧縮記帳を使うことができる。

土地と異なり、施設や工場の機械設備は減価償却費の計上が求められる。そのため、当年度に税金負担が生じない代わりに、圧縮記帳による年々の減価償却費の減額を通じて、減価償却期間に渡って税負担が繰り延べられることとなる。

圧縮記帳の活用例

圧縮記帳には、法人税法上に基づくものと租税特別措置法に基づくものの二種類がある。

法人税法に基づく圧縮記帳は、主に下記のような例が挙げられる。

  • 国庫補助金で取得した固定資産【法人税法第42から44条】
  • 保険金などで取得した固定資産【法人税法第47から49条】
  • 工事負担金で取得したケース固定資産【法人税法第45条】

租税特別措置法に基づく圧縮記帳の主なものは、下記のとおりである。

  • 収用等に伴い代替資産を取得した場合【租税特別措置法第64条、64条の2】
  • 特定の資産の買換え等により取得した場合【租税特別措置法第65条の7】

なお、圧縮記帳は受け取った補助金の全額に適用できる訳ではなく、上記のそれぞれのケースに対応して限度額が定められている。

実際に補助金に対する圧縮記帳を行う場合は、法人税法や租税特別措置法に基づいて厳密に計算を行い、会計処理と税務申告を行うことに留意が必要である。

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補助金の仕訳は単純だが、税金の取り扱いには注意が必要

補助金や助成金の内容や受け取れる条件は、国の施策や経済状況によって常に変化している。例えば、新型コロナウィルスのような突発的で経済に与える影響が大きいトラブルが起こった場合も、補助金や助成金の内容は変わっている。

補助金の受給条件が変わったり新設されたとしても、仕訳自体に変化は生じず、内容も複雑なものではない。基本的に、損益計算書の勘定科目には「雑収入」を使用すればよい。税務上は補助金に消費税は課税されないが、黒字の会社であれば法人税が補助金の分だけ追加で課税されてしまうことには留意すべきである。

一方で、補助金を使って固定資産を取得した場合は、基本的に圧縮記帳ができるので、積極的に利用しよう。圧縮記帳をしても補助金分の法人税はゼロにはならないが、翌期以降に法人税の支払いを繰り延べることができる。

そのため、企業のキャッシュフロー改善の効果は高い。補助金を受け取る前にしっかり、会計処理や税務の取り扱いを確認しておこう。